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墓守と腕時計

作者: 梶野カメムシ
掲載日:2023/02/07



 おや、これは大奥様。

 本日はご葬儀、お疲れさまでした。

 それでこんな夜更けに、何か?

 尋ねたいこと?

 まあ、お入りくださいやし。

 陰気なボロ小屋ですが、墓守の家なんでご勘弁を。


 亡くなられたのは、妹君でしたな。

 先に大旦那様が亡くなった後、屋敷に戻られたそうで。

 それが拳銃自殺。

 せっかく勘当が解けたのに、奇妙な話ですな。

 いや、お屋敷の方を疑っちゃいやせん。

 それより、ご用件をお伺いしやしょう。


 はあ。

 棺桶を運ぶあっしが、やけに妹君を気にしてたと。

 特にしげしげと顔を見てたのが、気になったと。


 いや、下衆な興味とかじゃありやせんよ。

 理由はちゃんとございやす。信じてもらえるか知りやせんが。

 それでもいい? わかりやした。

 そんじゃまず、この時計の話から。


 これは『死神の腕時計』と言いやして。

 見た目は普通ですが、まともな時間を指しやせん。

 この時計が示すのは、『死亡時刻』。

 名前を(ささや)いた誰かしらの寿命がいつ尽きるのか?

 その命日と時刻を、秒まで正確に指し示すんです。

 なんでそんな時計を持ってるかって? ま、そこはお気になさらず。


 世にも珍しいお宝ですが、墓守の仕事には使えやせん。

 せいぜい爺婆の寿命を調べて、早めに墓穴を掘るくらいで。

 人に話しても気味悪がられるだけで、自慢もできやしない。


 なんで、あっしはもっぱら趣味で、この時計を使ってやした。

 有名人の寿命とか、偉人の命日が正しいのかとか。

 大奥様の亡くなられた妹君も、事件を記事で見て、たまたま調べたんです。


 すると、『死亡時刻』はまだ先でした。 

 奇妙ですわな。じゃあ、この死体は誰なんだと。

 それがずっと気になって、ご遺体を見つめてたってわけです。


 ……おや、大奥様。

 あっしに拳銃を向けて、どうされやした?

 双子の姉妹?

 姉と入れ替わって屋敷を乗っ取る?

 ああ、なるほど。

 分厚いベールの下に、同じ顔があるとは気付けやせんでした。


 いやいや、死人に口なしですかい。

 どうかご勘弁を。あっしの墓穴は誰が掘ってくれるんで?

 後生だ。どうか──

 

 あんた、本当に極悪人だね。

 こんだけ頼んだのに、容赦なく撃つなんて。


 何だい。なんで死なないかって?

 人間じゃないからだよ。

 あっしは死神。『死神の腕時計』の持ち主だ。

 銃弾くらいで死ぬもんかね。

 

 まあ、そんなに怯えなさんな。

 仕返しなんて考えちゃいないさ。

 どのみち、三日後には迎えに行くんだ。

 おっと失礼。口が滑っちまった。

 

 それでは、大奥様(・・・)

 短い余生、健やかにお過ごしくださいやし。 

 


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