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 来年の3月には卒業で、今は進路を決める時期である。

 騎士、王宮で働く文官、研究職、領地経営を学んだり等、進む先は様々である。

 女子生徒は、ほとんどが卒業してから4年以内には結婚するため、就職する生徒は少ないし、私も就職しない。


 ランスは当初の予定通り文官になるようだ。学校の成績が特別に良い場合は学校からの推薦で無試験で文官に採用され、配属の希望も聞いて貰いやすいらしい。ランスはテストでは入学当初からいつも3位以内に入っていて、最近ではいつも1位である。彼は早々に推薦をしてもらえることに決まったらしい。

 ちなみにアマンダは、興味の有る無しがそのまま点数に表れている。

 ランスに「苦手な科目を教えてやろうか」と言われたが、「興味がないからいいわ」と断って「エイミーらしいな」と笑われた。



 ランスは最近何だか忙しそうである。先生とよく話しているようだし、疲れているのか、休憩時間に寝ていることもある。


「いつも眠そうね。夜更かし?」


「いいや。色々とやることがあるんだ」


「何?」


「内緒」



 忙しさの理由がまもなく判明した。ランスは早々と卒業試験を受け、優秀な成績で卒業資格を得た。

 卒業して何をするかと言えば、これから隣国イシュタリヤに3か月留学するのだ。

 先生からクラス全員に話があり、そこで初めて知って驚いた。



 学校の帰り、話があるからとランスに呼び止められた。一緒にいた友人達はニヤニヤしながら、帰って行った。

 ランスと一緒に中庭のベンチに座った。


「留学するのね」


「外交の仕事に就く為に、今出来る事があったらやりたいと父に相談したら、留学の段取りをつけてくれたんだ」


「羨ましくてたまらないわ」


「帰ってきたら話を沢山聞かせてあげるよ」


「お土産も楽しみにしてるわ」


「もちろん沢山買ってくるよ」


 ランスはそう言うと、こちらに向き直った。


「今は俺の事を好きでなくてもいいから、俺のいない間に、俺以外の誰かのものにはならないで、エイミー」


 ランスの真剣な顔に、いつものようにふざけることが出来なかった。


「当分は誰かと付き合ったりする気はないわ」


「そうか。時々は俺の事を考えてくれよ。俺は毎日考えてるけど」


「そうね、たまには思い出すと思うわ」


「酷いなあ。俺がこんなにエイミーの事を思ってるというのに」


「いっぱい色んな事を見てきてね。今から話を聞くのが待ちきれないわ」


「そこは俺が帰ってくるのが待ちきれないと言おうよ」


「思わせぶりなことは言わないわよ。あなたを傷つけたくないもの」


「ああもう。優しいんだか、残酷なんだか」


「あちらには美女がたくさんいるかもよ」


「美人は好きだけど、美人だから好きになる訳じゃないんだけどなあ。俺がいなくなってから泣くなよ」


「心配はいらないわ」


「そうだろうなあ。エイミーがいない日々を考えると俺は寂しくてたまらないのに」


「あなた舞台俳優になったら良いんじゃない? なかなかいけると思うわ」


「芝居してるんじゃないんだけど」


「分かってるけど、言うことが舞台で言うセリフみたい」


「俳優並みに格好良いのは認めるよ」


「始まったわ」


「芝居ならラブシーンを演じたいよ」


「募集すれば、相手役ならいくらでもいると思うわよ」


「エイミーが相手じゃないと嫌だよ。ああ、もう! 浮気しようかな」



 次の日、女友達に囲まれて「告白されたの?」と聞かれたのは言うまでもない。


 それからまもなく、ランスは隣国に向けて旅立った。



「ランスがいないとつまんないな」


「あいつはムードメーカーだったからな。デビュタントの後からは忙しいからか眠そうだったり、疲れた顔してたよなあ。今頃イシュタリヤに向かう馬車の中で寝てるかな」


 私達は、時々ランスがどうしてるだろうかと噂したりしながら、残り少ない学校生活を楽しんだ。



 一度だけ留学先から公爵家経由で、手紙が届いた。


『エイミーに会えなくて寂しい。毎日枕を濡らしています。

 部屋に戻り用事を済ますとあっという間に寝てしまい、なかなか手紙が書けなかった。休日もあちこち視察に行ったり、友人達と過ごしたりして飛ぶように日が過ぎている。

 先日はアンカルの港に行ってきた。美しい景色を見るたびに、エイミーがいたらどんなに喜ぶだろうか、エイミーと一緒に見ることが出来たならどんなに幸せだろうかと思う。君に早く会いたい』


 枕を濡らす間もなく寝てるじゃないのと、ツッコミながら読んだ。

 アマンダも学校の様子などを返事に書いた。


 

 卒業式が終わってしばらくすると、ブランデール公爵家からお茶会の招待状が届いた。ランスが間もなく帰国するのである。

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