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 学校では、相変わらず皆でワイワイ仲良くしている。グループの中でカップルも1組誕生した。


 夏休みには皆でランスの家に遊びに行った。外国の風景を描いた絵があると言っていたから、ずっと見てみたかったのだ。


 ランスは呼び方こそ馴れ馴れしいけれど、極端に距离を縮めて来ようとしないから気が楽で、色んなことを知っているから話していて楽しく、本当に良い友達となった。




 先日学校では女神シルヴィアの生誕祭が行われた。

 女子生徒は、薄い黄色、水色、白などの衣装を来て、輪になって踊る。それが終わると男子生徒は整列して棒を持ち、棒術の型や組手を合図にあわせて披露する。経験の差や個人差がかなりある為、男子は実力と本人の希望によりS、A、Bの3つのチームに分けられていた(Sチームは経験者のみで、デモンストレーションのような扱いである)。

 


 ランス達はAグループで素晴らしい演舞を見せてくれた。


「格好良くて惚れただろう」


「ジェラルド様には勝てないわ」


「ジェラルド様って誰だよ」


「兄さんの友達で、ソフィア姉様の舞踏会のパートナーよ。Sチームのセンターだったの」


「まさか好きじゃないよな」


「いい人だけど、そういう興味はないわよ」


「また新しいライバルかと思った。はあー、エイミーにいいとこ見せたかったのに、そんな人と比べられるとどうしようもないよ」


 ランスがしゅんとしている。


 Sチームのセンターを務めるほどのジェラルド様に敵う人はそういないだろう(彼は兄と同級生だ。同じ時期に学校に通っていないのに何で知っているかと言えば、2年前に我が家で棒術を披露してもらったからだ)。

 それでもランスの演舞は素晴らしかったし、とても格好良く見えた。


「あなたも凄かったわよ」


 ランスが可哀想になり声をかけると、ランスは満面の笑みになった。


「頑張った甲斐があった」


 彼の顔や髪の汗が、日の光にキラキラと輝いていた。イケメンは汗をかいても爽やかなのねと思いながら、預かっていたタオルを渡す。


「エイミーのタオル。はあー、幸せ」


 ランスはそう言うと、しばらくタオルに顔を埋めていた。

 

「あなたのタオルだけど」


「エイミーが、抱き締めたタオルじゃないか。あっ、使うんじゃなかった。洗わないといけないじゃないか。2つ用意しといて片方は保存用にすれば良かった」


「怖いわよ。勘弁してよ」


 ランスを白い目で見た。『爽やか』と思ったのは取り消しだ。


「しまった。ち、違うんだ。いや、違わないけど……あっ、ごめん」


 ランスは赤い顔で口元を押さえている。


「愛されてるわねえ」


 私達のやり取りが聞こえたのか、友人達はニヤニヤと楽しそうだった。




 私のデビュタントの日がやって来た。ドレスもこの日の為に何ヶ月も前から準備していたのだ。シルフィード卿に会えるだろうか? 一緒にダンスを踊ることが出来ないだろうか?

 クリス兄様が、俺がアマンダのエスコートをすると張り切っていたが、余程の理由がない限り、休みは取らせてもらえなかったらしい。王宮で行われる舞踏会なので、警備に沢山の人員が必要だからだ。


 

 夕方両親と一緒に馬車で、出かけた。王城に着くと沢山の人で溢れかえっていた。

 シルフィード卿はいらっしゃるかしら? ドキドキしながら辺りを見回す。

 両親が色んな人と挨拶をかわし、その度に私は紹介され挨拶をした。


「まあ、なんて綺麗なお嬢様かしら。サファイア色の瞳が印象的だわ」

「目がパッチリとしていて、人形のように完璧な美しさね」

「お姉様とはまた違ったタイプの美人ね。男性達が離してくれないでしょうね」


 両親に紹介される度、大袈裟な賛辞をもらった。



 しばらくすると合図があり、静かになると王族が入ってきた。姉の夫であるジュード様が王女と共に入場してきた。

 姉が「何であんなに格好良いのかしら?」と惚気ける気持ちがよく分かった。騎士服がよく似合って、思わず見惚れる格好良さだった。ジュード様は沢山の人達の注目を集めながらも王女の後ろで、眼光鋭く周りに注意を払っていた。



 王族への挨拶を終えると目の前にランスが立っていた。容姿に自信があるだけあって、手の込んだ刺繍を施された仕立ての良い夜会服を着こなしていて、いつもより格好良く見えた。


 ランスは私の両親に挨拶すると「踊っていただけますか?」と私に言った。私は、前から約束していたので素直に手を取る。二人で歩いていると、友人達もそれぞれペアでいるのが見えた。

 一曲目はデビュタント達だけが踊るので、見学者が多くて少し緊張する。



「エイミー、本当に綺麗だ。いつも綺麗だけど、今日は一段と綺麗だ」


 ランスは向かい合うと言った。


「あなたも結構似合ってるわよ」


 ランスはとても嬉しそうに微笑んだ。

 曲が始まる。今まで気がつかなかったけれど、ランスが、意外とたくましくて、ダンスが上手くて驚いた。お陰でステップを間違えることなく安心して踊る事ができた。


「ダンスが上手ね」


「そうか?」


「ええ、何か踊り慣れてるわね」


 ランスに話しかけていると「私と踊っていただけませんか」と沢山の人達に囲まれ、手を出されてギョッとした。


「あの、先約がありますので」


「「「そんなこと言わずに是非」」」


 彼らはちっとも私の話は聞いてくれない。


「彼女は先約があるので、失礼します」


 ランスはそう言い、私を庇いながら沢山の人の中から連れ出してくれた。


「本当はずっと俺と踊って欲しいけど、それは無理だしな。俺の他にもハミル達に声かけられてたよな。誰と踊るんだ?」


「ハミル様とカイン様と約束してたんだけど」


 私は、仲良しグループの中の二人の名前を言うと、ちょうどハミル様がこちらに向かってきた。彼と踊った後カイン様とも踊った。踊り終わるとまた、沢山の人に囲まれた。困ってカイン様を見る。


「アマンダさんはどうしたい? 誰か約束してる人がいるなら、そこまでエスコートするし、ここから逃げたければ付き合うし」


 カインは親切に言ってくれたので、両親の元へ連れて行ってもらう。時々ダンスの申込みを断りながらどうにか両親を見つける事が出来た。

 カインにお礼を言うと、彼はまた踊りに向った。


「アマンダは良い友達がいて良かったな。リリアナはダンスの誘いを断るのに疲れ果てて、ヘトヘトになっていたんだ。まあそれがなぜか御縁のきっかけにもなった訳だが」


「そうね。カイン様が居なければヘトヘトになるまで踊る羽目になってたかもしれないわ」


 両親と話しながら飲み物を飲んでいても、ダンスの誘いの声がかかったが、全部断った。一度踊るとその場所から抜け出せそうになくて、怖くなったからだ。

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