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「月の女神と呼ばれる美人な姉ですが、見た目と中身のギャップが詐欺レベルです」の主人公の妹アマンダの話です。先にそちらを読んでいただいた方が、より楽しめます(時系列もこちらが後です)が、こちらだけ読んでも大丈夫です。


 ロセフィット伯爵家

長女 リリアナ 19才

 夫 ジュード・アトキンス 22才

    近衛騎士

長男 クリストファー(クリス) 17才 

    近衛騎士 ジェラルドと親友

次女 ソフィア 16才

 ジェラルド・アトキンス(17才)と両思いだけど……

三女 アマンダ(エイミー) 15才

 アマンダは、美しい顔に深い悲しみをたたえて我が家を出て行く男性のことが、強く印象に残っていた。


**********


 王都には庶民から貴族まで利用できる図書館がある。本を読むスペースは、高位貴族専用、低位貴族用、その他の誰でも利用できるスペースに別れていて、高位貴族ならどこでも使用できる。


 貴族は図書館の入館証を作る際に会費が必要で、それにより座り心地の良い椅子やソファーの置かれたスペースを、利用することが出来るようになっている。



 私は今年からソフィア姉様と同じ学校に通っている。今日は授業を受けて興味を持った、他国に関する本を読むために図書館に来た。


 本を見つけ、高位貴族専用の読書スペースに向かうと、以前見かけたことのある男性がいるのに気付いた。


 彼はソファーに腰掛けて熱心に本を読んでいた。パラリ、パラリと本をめくりながら髪をかきあげる仕草に、私の目は釘付けになった。

 私の視線に男性が顔を上げそうになったので、そ知らぬ振りをして少し離れた席に座る。息を整えてから本を開き、ページをめくってからそっと顔を上げた。先ほどの男性は再び熱心に本を読んでいた。


 男性はヘンリー・シルフィード、侯爵子息である。



 私が彼を初めて見かけたのは、彼が姉のリリアナに婚約を申し込みに来た日のことだった。


 彼が応接室から出て来たのを見かけたが、彼は人がいることに全く気付かないようで、悲痛な面持ちのまま私の前を通りすぎて行った。


 後で気になってどなたかと尋ねた時に、婚約の申し込みを断ったのだと聞かされた。

 姉は「月の女神」と呼ばれるほどの美人であるから、婚約の申し込みは珍しくないが、彼は本気で姉が好きだったのだろう。




 私は初めのうちはシルフィード卿のことが気になって、チラチラと見ていたが、しばらくするとやっと本に集中出来るようになった。


 喉が乾いたので、本に読書中を示す札を挟んで席においたまま、読書スペースのすぐ隣に併設された喫茶店へと移動すると、シルフィード卿もそこで紅茶を飲んでいた。席に付くとメイドが来て、注文を聞き紅茶を用意してくれた。


 紅茶を飲みながら、再びシルフィード卿を見ると、彼は窓の外をぼんやりとながめていた。

 彼は失恋から立ち直ったのだろうか? あの時からすでに半年以上経っている。



 姉は少し前にジュード様と結婚したばかりで、新婚ホヤホヤである。同居しているジュード様の弟のジェラルド様は、二人のアツアツぶりに逃げ出したいくらい辟易しているらしいし、私の兄のクリストファー(クリス)は職場でジュード様と会うと、姉がいかに可愛いか聞かされてウンザリしている。姉ののろけからやっと解放されたと思ったのに、とクリスはしょっちゅう嘆いている。



 シルフィード卿にも、二人のアツアツぶりは伝わっているだろう。舞踏会ではとにかく目立つ二人なのだ。

 「人目も構わずイチャイチャして暑苦しい」と、クリスが文句を言っていたほどである。二人にはイチャイチャしているという気がなく、お互いしか見えてないのでつける薬もない。



 私がボーッとしていると、「アマンダ」と声がした。気がつけば、友人のスザンナが満面の笑みで立っていた。


 彼女が私の向いに座ると、すぐにメイドが注文を取りに来た。メイドがいなくなるとスザンナは小声で言った。


「アマンダはあの人を狙っているの?」


「えっ?」


「だってずっと彼を見てたんじゃないの?」


「そ、そういうわけじゃなくて、ちょっと考えごとをしていただけで」


「本当に? 隠さなくても良いのよ。彼はとても素敵だもの。大人の男性って感じで憧れるわ。高嶺の花だけど」


「だから、そういうつもりで見てないから」


「ふーん。アマンダは同級生ではなく、ああいう大人の男性が好きなのかと思ったのに、違うのか。つまんなーい」


「スザンナこそどうなのよ」


「高嶺の花すぎて、現実味がないから観賞用ね。こんな小娘相手にされないでしょうし」


 彼は確か5、6歳上だから15歳の私などお子様だろう。

 私達が話しているうちにシルフィード卿は席を立って行った。


 私は、しばらくの間シルフィード卿の事が頭から離れなかった。彼の憂いを帯びた横顔や、髪をかきあげる仕草がふとした瞬間に浮かんではドキドキした。


 それからも時々図書館に通ったが、シルフィード卿に会うことはなかった。

 シルフィード卿がリリアナに婚約を申し込むシーンは「月の女神」の中で書かれている『リリアナの恋心 前編』で読むことが出来ます。


「私の結婚どうなっちゃうの?」という小説も書いています。よろしくお願いします。(完結済)

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