力みすぎて空振りした5月ネタ
4月末日、「祓い方」の撃ち衆と編み衆へ「例年どおりの祓いは中止になった」とミバリから対応策と併せて言葉で連絡が伝えられた。
普段のミバリは主に鳴り物を担当しフォーメーション変更などの指示を連全体へ伝える。
今年の役玉は過去に例を見ないほど巨大で削りきれないと判断されたが高度が低くなるにつれて落下地点が眉山と城山の間を流れる新町川の船場周辺だと予想され、川幅が狭く人口密集地であることから削りながら河口へ、可能なら海へ導こうと計画された。
移動方法は、大きさからゴリ押しは無理と判断しまた破片が大きくて地上に落ちるまでに浄化できなければ周囲に瘴気が蔓延して人が住めなくなる恐れがあった。そこで編み衆は同心円に広がり撃ち衆は上流と下流に分かれ上流からは上部を狙い下流からは下部を狙い回転力を与えて転がせていく手法が取られた。
5月連休ごろから動き出した。
撃ち衆は男に多く厄玉に”気弾”で直接攻撃の出来る能力者で編み衆は女性に多く網方とも呼ばれ撃ち衆が削った厄玉の破片を地上へ落とさないように”浄化の網”を編むのである。撃ち衆はただ闇雲に力任せではダメで削りカスにまで注意をして厄をばらまいてはいけない。
毎年の祓い方あるあるで上位に出てくる現象で若い撃ち衆は威力はあっても練度が低意図されていて先輩の指導で少しだけましになっていても的は大きく期待する効果は低かった。
強い叱責じゃないが度重なると気が腐りだし、同じ様な仲間とコンビニに屯する時間も長くなっていく。加えて編み衆と情報交換という名目で癒しを求めようとする狼たち。あー”夏休み”までまだまだなのに。
ミバリの中堅で指導力もあった男の目つきが徐々に変貌っていく案件であった。
5月下旬ともなると気疲れからか当初の勢いも下降してコンビニ休憩が長くなる班が多く見られるようになった。いろんな意味で無駄撃ちが多いのでしょうと観測筋の声があった。
厄玉は多少削られたもののまだ大きく周囲の薄皮を一枚だけ剥いだ程度で、移動した位置もひょうたん島周遊船の発着点を少し過ぎて富田橋あたりと川幅も狭く未だに高い練度が求められている。
「花ふんーは風に乗りぃー、目鼻ぁーをいじめるのぉー♪」
コンビニの駐車場で一息つき始めたミバリにも席を置く撃ち衆の若者の前をママチャリに乗った近所に住むらしきおっちゃんが音をことごとく外した鼻(水)歌を奏でながらレジ袋をハンドルに掛け去って行った。
地産品繋がりで「色付きピーマン」をネタにしようかと思ったのですが、舞台は5月ですからね温存して時期的には花粉ネタかな。
あと数日のうちに一二話で終わる予定です。