傭兵、病床、日常
unknown 場所は伏す
アルハザード「は、ハロー…ダーリン…フフフ…メアリー・スー…生きてる、うっ、のね。」
技術士官「そうだね、私も彼が大好きだよ。
テスターのメリーシリーズは全員無事だそうだ。
発売日延期にともなう問い合わせが殺到している。
みんな愛に飢えているんだ。
早く形にしないといけない。」
アルハザード「ふ…ふふ…あなたの…コレク、うっ、コレクション。」
技術士官「そうだね。
テスターの三人は脳核だけ残す予定だ。
コピーしてもいい。
非常に面白いコレクションだからね。
リーダーシップ、内気、勝気、涙、絶望、姉妹愛、規律、それから奇跡というエラー、
確認出来る突然変異がたくさんある。
意思、自我を持った「オートマタ従軍慰安婦計画」、これは非常に愛に溢れていて芸術的だ。」
アルハザード「せ、せ、性犯罪が…へる…わね…」
技術士官「その通りだ。我々は治安を守るべきであり、富裕層へ最高のサービスを提供するべきだ。
あとは、そうだな…」
アルハザード「ぞ、ぞ、ゾンビ…ひひ、ほ、ほほほホムンクルス!うっ、エクス…エクス・マキナ、あは、は」
技術士官「課題が山積みだ。フフフ。
そして黒魔術。」
アルハザード「わ、わ、わ、私の、ふ、ふ、黒魔術…ダーリン…うっ、ふっ」
unknown 場所は伏す 治安維持組織 クリエイタープライベートラボ
メアリー「……生きてる、生きてる、うっ」
メリーアイン「あ、起きた?」
メアリー「シャリシャリうるせーな、なんだ?」
メリーアイン「りんごむいてるの。おいしいよ?」
メアリー「ステレオタイプかてめーは!
しかもなんだこの貴族みてーな寝巻きは。
ヒラヒラしてんぞ。
サニーみたいでやだー!」
メリーアイン「あらそ、いーわよ。しーらない!食べちゃお」
メアリー「食う」
メリーアイン「ワンモアセイ」
メアリー「蜜たっぷりでうまそうだから食わせろや、おいアイン!」
メリーアイン「名前覚えていてくれたの!?」
メアリー「当たり前だろ、戦友だぞ。」
メリーアイン「うれしー!きゃー!」
メアリー「なにこの、おいここはどこだ」
メリーアイン「あのね、兵士さん達はね、型番かメリーシリーズとしか呼んでくれないの。だからうれしーの!」
メアリー「聞いてねえな、うめえなこのりんご。」
カチューシャ「あら、お目覚め?死神さん。」
メアリー「もぐもぐ?」
カチューシャ「アホヅラよ」
メアリー「あんた誰だ?ここはどこだ?治療してくれてありがとうございますってか?」
カチューシャ「喧嘩腰なのね、別に利用しようとかじゃない。
私の娘達を助けてくれて、本当にありがとう。感謝してる。」
メアリー「仕事しただけ、アインは自分で助かっただけだ、こいつすげーからな。で、質問に答えてくれ」
メリーアイン「ま!メアリーお・じ・ちゃん!きゃー!」
カチューシャ「良かったね、アインちゃん。
私はクリエイターカチューシャ。
治安維持組織の情報管理者です。
場所は教えられない、ごめんなさいね。」
メアリー「そうか、俺のスーツを返してくれ。パワードスーツじゃなくて、ビジネススーツだ。もう帰る。」
カチューシャ「残念だけど、帰りのポータルは今メンテナンス中なの。
あと6時間はかかると思う。」
メアリー「マジかよ…じゃああのセキュリティドアはなんだよ。ポータルなんかいらねぇだろ。」
カチューシャ「ダメ!」
メリーアイン「あのドアの奥へいったら、多分死んじゃう…信じておじちゃん。」
メアリー「マジかよ、笑える。
あー、カチューシャだったか?」
カチューシャ「クリエイター・カチューシャ、カチューシャでいい。」
メアリー「カチューシャ、俺の車は?
葉巻は?なんでカチューシャの携帯からクライアント…技術士官がかけてきたんだ?」
カチューシャ(あの男…!)
カチューシャ「シェビーバンでしょ?派手に壊してくれたみたいだから、板金屋に送っておいたわ。これ、タラクネ区のお店の電話番号と一応座標ね。」
メアリー「なんだ、この店の常連だわ。
あの車、廃番だからあそこじゃないとパーツ無いからな。よく知ってるな。」
カチューシャ「たまたまね、経費で落としてあるからあとで引き取りに行きなさい。
で、葉巻?キースのアロマローストね。
葉巻なんて言うから、画面の向こうの人達はぶっといやつ想像したんじゃない?
スーツに入ってるから…アインちゃん、とってきて。」
アイン「おじちゃん、ここ禁煙よ。」
メアリー「俺はストレスマッハな時はどこでだって吸うぞ。
注意してきた警備員のオートマタを鈍器で破壊した事もある。」
メリーアイン「さいてー。今日から禁煙!」
カチューシャ「アロマメルティなら私のあるけどいる?1ダースあったと思う。」
メアリー「悪いからいいよ、自分で買うからスーツごと持ってきて。」
カチューシャ「あなたの外科の通院歴を調べたの、治療のために。
ハルヒコ・サナダって名義だった。
それによると、輸血する際に、血液やブドウ糖よりも、ネクターや、オートマタ用の皮下循環剤の方が適応するってあった。
今回はネクターを使ったけど、あなたの体、どうなってるの?
解剖したいぐらい。」
メアリー「言えない。けど、カルテに従って治療したんならありがたい。
あんた、気に入ったよ。」
カチューシャ「光栄です。タバコの銘柄も同じだし。」
メアリー「あのさ、依頼が暗殺だったら三人とも殺してた。」
カチューシャ「……」
メアリー「傭兵は金次第だ。」
カチューシャ「全てくれてやる」
メアリー「命もか?」
カチューシャ「この子達のためなら、体を売ってでも、自殺してでも、臓器を売ってでもあなたを止める、それが親よ。」
メアリー「それでいい、俺を買え。
サービス価格でご提供しますってな。
あと、連れがいたんだが、知らないか?」
ディアオ「いるぞ」
メリーツヴァイ「2足す、4は…5!」
ディアオ「ぶっぶー、6だよ。でも、段々出来てきてるよ、大丈夫。」
メリーツヴァイ「あうぅ…ごめんなさい…」
メアリー「何やってんだお前ら」
ディアオ「勉強を教えている。
足し算、国語、絵本の読み上げ、基本5科目ではなく本当に基礎の基礎からやる必要があるようだ。
まあ、少尉であり首席卒のー」
メアリー「スーツ、ダメだわ。
臭えし、血まみれだし、肩も腹も破れてる…
買い直すか。」
ディアオ「無視されたので絵本を読みまーす!!!」
メリーアイン「きゃー!私も聞くー!」
メリーツヴァイ「足し算疲れちゃった、やったぁ」
カチューシャ「彼、本当に助かるの。
あの子達、基礎的な学習機能に抵抗がしかけてあるの。
そのリミッターを解除するとCPUが極端に疲弊してしまう…だから、無駄かもしれないけど、人力で教えるしかない。」
メアリー「そうか、アイン、32かける2は?」
メリーアイン「70ね!合ってるでしょ?」
メアリー「バカこの!」
メリーアイン「むー、バカおじちゃん!」
メアリー「そういや一人足んねーな?
どっか行ったのか?」
カチューシャ「ずっと隣にいます」
メアリー「え?うわ、なんだ子犬か?ガラケーか?ずっと震えてるぞ、なんだ?」
メリードライ「………ふっ……ぐっ……」
メリーツヴァイ「(小声)ドライちゃん、頑張って!」
メリードライ「ご…ごめ…ん…ごめんなざ…わああああん!」
メアリー「草。別に恨んでねーよ。」
ディアオ「ドライちゃん!よく頑張った!」
カチューシャ「ドライは、ツヴァイを守りたかった。
蛮族と間違えてあなたを刺してしまったそうなの。
みんな怖い思いをした…私は戦闘試験なんか反対だった。」
メアリー「お前最低だぞ。」
カチューシャ「え?」
メアリー「結局指示通りスラム街に送ったんだからな。
スラム街と教えずに。
こいつらは俺と仲良くしてくれた自衛軍の兵士を四人も殺したぞ。
タカハシ、ジェレミー、リンダ、リーキョン。
久しぶりに喫煙外交した陽気なやつらだった。」
カチューシャ「………そうね、最低だわ。
スラム街は治安が最悪よ、濁して教えるしか無かった。
今思えば無理にでも止めるべきだった。」
メアリー「その甘さが今回の悲劇に繋がったんだ。
半殺しにしておくべきだったな!」
ディアオ「メアリー!やめろよ!なんでお前はいつも素直になれないんだ!」
メアリー「ヌルいこと言ってんじゃねえよカス!このバカはな、女の子を戦場に送ったんだよ!殺しなんかするもんじゃねぇ!
極限状態が続いたらいつか心が壊れるぞ!」
メリードライ「カチューシャをいじめるな!
私達はカチューシャのために任務についた!
だからなんだ、後悔なんかしてないぞ!」
メリーツヴァイ「みんな落ち着いてよ…おじちゃん怖いよ」
ディアオ「ごめんね、ツヴァイちゃん。本当はいい奴なんだけどさ…なんかスイッチ入っちゃう時があるみたいなんだ。」
カチューシャ「そうね、私が悪かった…ごめんなさい。あなたの言う通りだわ。」
メアリー「そういうところがずるいんだよ、ごめんなさいごめんなさいって、謝るような原因を今後は作るな。」
メリードライ「悪いことしたらごめんなさいだろ、カチューシャが教えてくれたぞ!」
メアリー「はぁ………」
カチューシャ「………さ、みんな、おやつの時間にしましょ。昨日のドーナツがあるわ。
」
メアリー「手作りか?」
カチューシャ「よくわかったね、私、安月給だし、この子達のための経費もほとんど出ないの。
だから、なるべく自腹でなんとかするしかないの。」
メアリー「受け取れ」
カチューシャ「100万円?よくないよ、こんな大金。」
ディアオ「サージェントPPの報酬だろ?良いのか?」
メアリー「なんで知ってんだ?
汚ねぇ金じゃねぇから安心して受け取れよ。
命が100万で買えるなら安いもんだろ。
というか手持ちがこれしかねぇ。」
ディアオ「遠慮せず受け取って欲しい、恩を返したいと思うんだ。
メアリー「なんでお前が許可出すんだよ。
ガキどもの前で札束なんか出すもんじゃねぇ。早く隠せや。」
カチューシャ「本当にありがとう。」
メアリー「PC貸してくれや。
良いこと思いついたわ。
俺の口座にアクセスする。」
カチューシャ「どうぞ。小さい方を使って。
そっちは私物だから。」
メアリー「やるわ。
アプリケーションとかアドオンとか入れるけどあとで消すから。
手ェつけんなよ?」
カチューシャ「わかりました、約束します。」
メリーツヴァイ「メアリーおじさん、何してるの?これ、なん億円あるの?」
メアリー「お嬢ちゃん、個人情報だから見ちゃダメよ。」
メリーツヴァイ「うん…ごめんねおじさん」
メアリー「さてと、そんなしょっぺえドーナツじゃなくて、派手にやろうぜ。
これから衛星通販を使う。
どこに届く?」
ディアオ「何をするのかわからんが、人の作ったドーナツをさりげなくdisるな。」
メアリー「まずスーツ、シャツ、それから線香とか一式、ケーキ…これは聞くか。
カチューシャ!配達はどこに転送されるんだ?」
カチューシャ「小さい方のポータルがあるでしょう?そこに来るから安心して。」
メアリー「おす。おいガキども!全員プリキュアでいいか?」
メリーアイン「プリキュア!?きゃー!」
メリーツヴァイ「うん!」
メリードライ「仮面ライダーがいい。」
メアリー「お、おう。あるからいいぞ。」
ディアオ「意味がわからんのだが?」
メアリー「キャラデコケーキを3ホールだよ。こいつら太らせてやる!へへへへ」
ディアオ「お前、子供好きだろ」
カチューシャ「あら?もう来た。メアリー、あなた何かしたの?」
メアリー「衛星の倉庫に知り合いがいて、データ圧縮してマッハで転送させてる。
そいつに無理させちゃうから滅多にやらないけどな。
ガキども!そこに横一列に並べ!」
メリーツヴァイ「何するの?おじさん」
メリーアイン「アインって呼びなさいよ!」
メリードライ「指図するな」
メアリー「ほーらケーキだぞ〜。このデカイやつ一人一個だぞ。」
メリーアイン「わぁあ、可愛い!」
メリーツヴァイ「全部食べらんないかも…」
メリードライ「仮面ライダー…仮面ライダー!」
メアリー「ただじゃやらねーよ。
条件がある。
お前ら、殺したやつらの供養しろ。」
メリーツヴァイ「どうやるかわかんない…」
メリーアイン「おじちゃん!アインって呼んでね!あ・い・ん!」
メリードライ「仮面ライダー…仮面ライダー…」
カチューシャ「みんな、とても大事な事よ。
メアリーおじさんの言う通りにやってみて。」
メアリー「アイン、ほら線香」
メリーアイン「アイン!きゃー!」
メアリー「跳ねるな。ツヴァイちゃん、線香」
ツヴァイ「メアリーおじさん、ごめんなさい、折れちゃった。」
メアリー「新しいのあげるよ。ドライ、線香。うわぁ…よだれダラダラだぞお前、一番楽しみだったのか。」
メリードライ「んふー!んふー!」
ディアオ「私にもくれ、お前もやるよな?
まずは私達がやるからみんなは見ていて。」
メリーシリーズ「はーい!」
ディアオ「まず、火をつける。
ついた。相棒、シガレットキスするか?」
メアリー「お前キモ、殴るぞ。」
ディアオ「たまには冗談言ってもいいだろ。
そしてこの灰受けに刺す。
そして手を合わせる。
目を閉じる。
これが供養。」
メアリー「………」
ディアオ「どうした?」
メアリー「タカハシ…タバコ、うまかったぞ…ジェレミー…地獄でまたゲームしようぜ……リンダ…綺麗だったよ……リーキョン…たまには…いや…もう…お前は休め…」
ディアオ(泣いてる。)
メリーツヴァイ「メアリーおじさん、ごめんね…」
メアリー「あいつらは仕事をして、死んだ。
殺したのはお前らだ。
さっさとお前らもやれ。」
ディアオ「火、つけるよ。相棒、お前は休め。」
メリーアイン「あ、折っちゃった。なにこれすぐ折れるじゃん!」
ディアオ「(小声)おい、聞こえたら殴られるぞ!」
カチューシャ「みんな、済んだね。
せっかく貰ったケーキ、食べましょう?」
メアリー「カチューシャ…空調機も買ってある。ここで吸っていいか?」
カチューシャ「ええ、火、つけるよ。」
ディアオ「メアリー」
メアリー「どうした」
ディアオ「一本くれるか?ひどくダーティーな気分だ。」
メアリー「お前、吸うのか。ほらよ。」
ディアオ「………葉巻だったか?うまいな。」
メアリー「キース、アロマローストだ。覚えておけ。」
メリードライ「カチューシャ!見てくれ!変身するやつが入ってた!」
メリーツヴァイ「おいしいなー、おいしいなー」
メリーアイン「このプリキュア食べられるの!?やだー!可愛くて食べられないー」
カチューシャ「みんな、良かったわね。
メアリー、私もご一緒していい?」
メアリー「どうぞ。」
ディアオ「ははは」
メアリー「なんだよ、なに笑ってんだ」
ディアオ「ちっちゃい空調機の前でみんなして葉巻吸ってるの笑える。」
カチューシャ「あら、何か来た。」
メアリー「今度は普通の衛星通販だ。あらかじめ注文しといた。今日はヤケだ。」
カチューシャ「アイン、ツヴァイ、ドライ、ちょっと来て。メアリー、開けるよ?」
メアリー「どうぞ。」
メリーアイン「ぬいぐるみ!きゃー!かわいー!」
メリーツヴァイ「絵本!塗り絵!お洋服!お菓子!わぁー、楽しいなー!」
メリードライ「変身ベルト!メアリー!良いのか!?」
メアリー「ディアオ、お前は知ってるはずだ。あいつらが発達するかなんか知らねー。
遊びを楽しめるのは子供のうちだ。
勉強より遊びを楽しめ…よっしゃ!行くぞ相棒!」
ディアオ「おい待て相棒!怪我人がはしゃぐな!」
カチューシャ「座標、タラクネ区のカーショップ専門店へのポータルが復旧するまであと5時間。
傭兵、軍人、子供達がわいわいしているのを私は見守るわ。
今日はオフなの。」
end