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八話 逆さ虹のお願い事

 逆さ虹の森の動物たちは、力を合わせて空高くにある逆さ虹を目指しました。

 リスだけがたどり着きます。一人ぼっちの龍が住んでいる逆さ虹へと。


「おっきいなあ」


 リスは初めて見る逆さ虹に感激していました。

 リスが小さいのもありますが、とても大きな逆さ虹です。

 逆さ虹には水がたまっています。よく澄んだキレイな水は、まるで巨大なドングリ池にも見えました。

 リスは逆さ虹のはしっこに立っていますが、足をすべらせて水に落っこちたら大変です。


 そして、逆さ虹に負けないほど大きな動物がいます。

 ヘビのように細長くてにょろにょろした、でもヘビよりずっと大きな動物です。

 一人ぼっちの(りゅう)でした。


「いらっしゃい。よくここまで飛んでこれたね」


 龍はリスを歓迎していました。

 一人ぼっちで住んでいたところにきてくれた、大切なお客さんです。


「みんなで力を合わせて飛んだんだよ! あのねあのね、大きいけど怖がりのクマさんがいて、でもみんなを背中に乗せたの! アライグマさんがぴょーんってジャンプして、ヘビさんが体を伸ばして、コマドリさんが空を飛んで!」

「最後がリスさん?」

「そうだよ! ぴょーんぴょーんぴょーんって、とっても楽しかった! 逆さ虹の森の仲間は、みんな楽しく暮らしてるの! いたずらのやりがいがあるんだ!」


 いたずらはいけないことですが、他はいいことを言っています。

 リスは、逆さ虹の森の楽しさを龍に伝えています。体が小さいので、力いっぱい声を出して伝えます。


「だからね、リュウさんも逆さ虹の森においでよ! 一緒に暮らそう! きっと楽しいよ!」

「行きたいよ。でも」


 リスの話を聞く龍は、楽しい逆さ虹の森に行きたいと思いました。

 しかし、龍がいなくなれば、逆さ虹にたまった水をドングリ池に落とせなくなってしまいます。

 ドングリ池にドングリを投げ込んでも、お願い事を叶えてもらえなくなります。

 動物たちが困ってしまうのです。


「大丈夫だよ! ドングリ池のお願い事がなくなったって、みんなで力を合わせればいいんだもん! ねえ、行こうよ!」

「う、うん……」


 龍が逆さ虹の森に行くとしても、もう一つ問題があります。

 逆さ虹から、どうやって森まで行けばいいのかわかりません。

 そういえば、リスも帰る方法を考えているのでしょうか。


「頭のいいキツネさんがいるの! キツネさんはね、逆さ虹にお願い事をすればいいって言ってたよ!」

「逆さ虹に? ドングリ池じゃなくて?」

「逆さ虹だよ! 逆さ虹にたまった水は、お願い事を叶えてくれるんでしょ? こんなにいっぱい水があるんだもん! お願い事も叶うよ!」


 リスと龍は、一緒にお願い事をします。

 逆さ虹にお願い事をします。


 どうか、逆さ虹の森に連れて行ってください。


 お願い事をすれば、逆さ虹にたまった水がキラキラ光りました。

 透明な水が虹のような色になります。

 コマドリが飲んでいたジュースに少し似ていて、でも違います。ジュースより、もっともっとキラキラしていました。


 リスと龍のお願い事は聞き届けられます。

 ドングリ池ではありませんが。ドングリも投げ込んでいませんが。

 逆さ虹が叶えてくれるお願い事です。


 大きな龍の体が、ふわーっと浮き上がりました。

 小さなリスの体も、ふわーっと浮き上がっています。

 龍とリスは、コマドリのように空を飛んでいました。

 逆さ虹と、青い空と、白い雲。そして、大きな龍と、小さなリスです。

 いいえ、他の動物たちも空を飛んでいます。


 食いしん坊のヘビがいます。わたがしのような白い雲を食べようとしています。食いしん坊ですね。

 怖がりのクマがいます。空を飛ぶのが怖いのでしょう。目をぎゅーっと閉じています。せっかくの空の景色を見ていません。

 歌上手のコマドリがいます。普段は飛べない高さまで飛んで、歌を歌いながら羽ばたいています。

 暴れん坊のアライグマがいます。ぶっきらぼうなアライグマも、今だけはとても楽しそうにしています。

 お人好しのキツネがいます。怖がっているクマに、せっかくなので空を見てみましょうと話しかけています。


 みんなそろって空を飛んでいました。

 初めて会う龍ともすぐに仲良くなります。一緒に空を飛びます。

 逆さ虹は、お願い事を叶えてくれただけではありませんでした。

 こんなにも素敵な体験をさせてくれたのです。


 逆さ虹に願った、最初で最後のお願い事は。

 逆さ虹の森の動物たちを、とても幸せにしてくれました。

次回、最終話です。

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