四話 頼れるアライグマと小さなリス
ドングリ池にドングリを投げ込んでお願い事をすると、叶えてもらえます。
当たり前だと思っていましたが、ドングリ池の秘密が気になりました。
逆さ虹の森の動物たちは謎を解き明かそうとしています。
さてさて、どこから調べればいいのでしょうか。
「ドングリ池にもぐってみる」
アライグマは、相変わらずぶっきらぼうに言いました。
泳ぎが得意なアライグマなら、ドングリ池にもぐれます。
「アライグマさんは勇気がありますね。もしも溺れたらと思うと、怖くてもぐれません」
怖がりのクマは、アライグマの勇気に感心していました。
「翼がぬれると大変なので、ここはアライグマさんに任せます」
コマドリもアライグマを頼っています。
ヘビもリスもキツネも、泳ぐのは得意ではありません。
みんなはアライグマにもぐってもらうことにしました。
暴れん坊ですが、いざとなると頼りになります。いつもこうなら、アライグマともっと仲良くできるのですが。
「ふん、任せておけ」
アライグマは、どうやら照れているようです。照れながらもドングリ池にもぐりました。
ドングリ池は澄んでいるので、もぐっているアライグマの様子もよく見えます。
みんなで見守ります。何かヒントが見つかるでしょうか。
しばらくすると、ドングリ池にもぐっていたアライグマが戻ってきました。
アライグマの体は水にぬれています。そのままでは凍えてしまうので、ブルブルと体をふるわせて水を飛ばしています。
いたずら好きのリスは、なぜかアライグマの背中に乗りました。
アライグマが体をふるわせれば、小さなリスは水しぶきと一緒にぴょーんと飛ばされてしまいます。
「おもしろい!」
よほど気に入ったのでしょうか。リスはもう一度アライグマの背中に乗ります。
そして、やっぱりぴょーんと。
「もう、リスさんは何をやっているんですか」
「だっておもしろいもん!」
ヘビが言っても、リスはやめません。
何度もアライグマの背中に乗り、何度も飛ばされます。
「あはははは!」
リスは楽しそうに笑っていました。
アライグマは暴れん坊なので、リスに遊ばれるのを嫌がって暴力をふるうかと思いました。
でも、何もしません。それどころか、水が飛ばなくなっているのに、リスのために体をブンブンふるわせます。
水を飛ばそうとしていた時よりも強くて、リスは楽しそうに飛んで行きます。
「コマドリさんみたいに空を飛んだよ! とってもおもしろかった! ありがと、アライグマさん!」
「ふん」
たっぷりと遊んだリスがお礼を言いました。
アライグマは、お礼を言われて嬉しそうです。
暴れん坊のアライグマといたずら好きのリスは、意外といいコンビなのかもしれません。
うらやましくなったのはヘビです。
リスは、コマドリさんみたいに空を飛んだと言いました。
気持ちよさそうです。同じように空を飛んでみたいと思いました。
「クマさん、クマさん」
「ヘビさんも飛んでみたいんですか?」
「えへへ、飛んでみたいです」
小さなリスは、アライグマの背中に乗れますし、飛べます。
ヘビもアライグマの背中に乗れますが、リスのように飛ぶのは無理です。
だから、アライグマよりも大きなクマに頼みました。
「いいですよ。背中に乗ってください」
「やった!」
ヘビは、クマの足を伝ってニュルニュルとのぼりました。
背中に乗ったところで、クマが体をふるわせます。
先ほどのリスのように、ヘビもぴょーんと飛びました。
「おもしろいでしょ!」
「おもしろいです!」
リスに注意していたヘビですが、これは楽しいと思いました。夢中になっていたリスの気持ちがわかります。
「キツネさんもやりますか? 背中に乗ってください」
クマはキツネにも声をかけました。
怖がりでも、クマの体は一番大きいです。キツネも背中に乗せられます。
「今度お願いします。今は、ドングリ池の秘密を解き明かさないと」
「忘れてた!」
「リスさんは忘れないでくださいよ」
「ヘビさんだって、クマさんの背中に乗って飛んでたじゃない」
「はい、ごめんなさい」
遊ぶのは楽しいですが、一旦おしまいです。
ドングリ池にもぐったアライグマから、何か見つかったか話を聞きます。
「何もなかった。でも、何もないのはおかしい。投げ込んだドングリも落ちてなかった」
確かにおかしな話です。
ドングリ池に投げ込んだドングリが落ちていないのはなぜでしょうか。
ドングリ池の秘密は、ますます深まりました。