二話 コマドリのコンサート
ヘビとクマは、お願い事が叶うと言われるドングリ池で、お願い事をしました。
おいしい果物やハチミツをもらえて大満足です。
ハチミツを舐めていれば、歌上手のコマドリがやってきました。
クチバシにはドングリをくわえています。コマドリもお願い事をするようです。
「やあ、コマドリさんもお願い事ですか?」
「そうです……あーっ!」
ヘビに話しかけられて、コマドリはつい返事をしてしまいました。クチバシにくわえていたドングリが落ちて、コロコロと転がります。
「待って待って!」
コマドリはドングリを追いかけます。
あとちょっとで追いつきそうでしたが、横からドングリを拾ってしまった動物がいました。
いたずら好きのリスです。
いたずら好きなので、ドングリをコマドリに返しません。ポイッとドングリ池に投げ込んでしまいました。
「何をするんですか、リスさん!」
コマドリが怒りますが、リスは構わずにお願い事をします。
「フカフカであったかいベッドがほしいです。お願いします」
リスのお願い事は聞き届けられます。小さなベッドが現れました。
木をくりぬいて作ってあります。柔らかそうな草が敷き詰められていてフカフカです。毛布は空に浮かぶ雲でした。
雲の毛布とは不思議ですが、ドングリ池にお願い事をすれば叶うみたいです。
いたずらをして楽しんだリスは、もらったベッドに入ってスヤスヤと眠ってしまいました。
「ごめんなさい、コマドリさん。声をかけちゃったせいで」
「ヘビさんは悪くありません。ドングリがなくなっちゃったので、もう一回拾ってきますね」
コマドリはパタパタと飛び立ち、ドングリを探しに行きました。
ヘビは、コマドリのドングリを取ってしまったリスに注意します。
「ダメですよ、リスさん。ドングリがほしければ自分で拾わなきゃ」
「いたずらをして取ったドングリだからいいんだもん」
ベッドで目を閉じたまま、リスが答えました。
「クマさんからも言ってあげてください」
「お、怒られたら怖い……」
怖がりのクマは、リスに注意するのを怖がっていました。
クマは注意しませんし、ヘビの注意も聞きません。いたずら好きのリスにも困ったものです。
そこへやってくるのは、暴れん坊のアライグマでした。
暴れん坊なので、怖がりのクマは大の苦手です。
ヘビもあまり好きではありません。
リスは、かかわらないようにベッドで眠っています。
アライグマもヘビたちには興味がなさそうです。ドングリ池にドングリを投げ込みました。
「暴れられる相手がほしい。お願い」
ぶっきらぼうなアライグマのお願い事は聞き届けられます。人形が現れました。
変な人形で、アライグマが殴っても倒れません。倒れたと思ったのに、すぐに起き上がってしまいます。
アライグマは興奮して、人形を殴ったり体当たりしたりと暴れます。
「うるさいなあ。眠れやしないよ」
リスが起きて、ヘビやクマも一緒にアライグマを見ています。
ドタバタ暴れるアライグマは迷惑ですが、人形が相手なのでいいでしょうか。自分たちに暴力をふるわれたら困ります。
アライグマの次は、コマドリが戻ってきました。お人好しのキツネも一緒です。
コマドリはドングリをくわえていません。見つからなかったのでしょうか。
「キツネさん、ドングリを持ってくれてありがとうございます」
「どういたしまして」
お人好しのキツネがドングリを持ってくれたみたいです。
コマドリは、先ほどドングリを落としてしまったので、今度は失敗しないようキツネに頼んだのでした。
キツネに持ってもらっていたドングリを受け取り、コマドリはドングリ池に投げ込みました。
「楽しく歌うために、演奏がほしいです。お願いします」
コマドリのお願い事は聞き届けられます。
サーッと強い風が吹いたかと思えば、木々の枝葉がこすれて音楽を奏でます。
葉っぱにたまった水のしずくが落ちて、高い音から低い音まで鳴っています。
それは、森の演奏会でした。
にぎやかな演奏に合わせてコマドリは歌い出します。とても美しい歌声です。
みんな静かに聞いています。暴れていたアライグマまで静かになっています。
逆さ虹の森の動物たちは、コマドリのコンサートを楽しむのでした。