一話 逆さ虹の森のドングリ池
冬童話2019参加作品です。
よろしければお楽しみください。
ある森には立派な虹がかかっています。
その虹は、なぜか逆さまでした。逆さまの虹がかかった森は「逆さ虹の森」と呼ばれるようになりました。
逆さ虹の森では動物たちが平和に暮らしています。
ほら、今日も楽しそうな声が。
「クマさん、クマさん。一緒にドングリを拾いに行きませんか?」
「やあ、ヘビさん。ドングリ拾いということは、ドングリ池に?」
食いしん坊のヘビは、怖がりのクマをドングリ拾いに誘っています。
逆さ虹の森にはドングリ池と呼ばれる池があります。よく澄んだキレイな池で、ドングリを投げ込んでお願い事をすると叶うという噂があります。
お願い事をするために、ヘビはドングリを拾いに行こうと言っていました。
「ヘビさんは、またお願い事ですか?」
「お腹が空いちゃったんですよ。おいしい果物をたくさんもらおうと思いました。クマさんも一緒にお願い事をしましょう」
「じゃあ、ハチミツをもらいます。ハチの巣からハチミツを取るのは怖いんですよね。ハチがいっぱいブーンって……うぅ、考えただけで怖いです」
食いしん坊のヘビは、おいしい果物をたくさんほしいと言っています。
怖がりのクマは、ハチが怖いので、ドングリ池にお願い事をしてハチミツをもらいたがっています。
ヘビとクマはドングリを拾いに行くことにしました。
逆さ虹の森には色々な種類の木があります。ドングリが生るナラの木、クヌギの木やカシの木もあちこちに。
ヘビは口いっぱいにドングリをため込みます。果物をたくさんもらうために、ドングリもたくさん集めていました。
クマはドングリを一個だけ持っています。
「ヘビさんは集めすぎじゃないですか?」
「はふあん」
「はいはい、たくさんの果物がほしいんですね。食いしん坊なんですから」
ドングリを詰め込みすぎて、ヘビはちゃんと話せていませんでした。
よくあるので、クマはいつものことだと思います。
ヘビが満足できるだけのドングリを集めたところで、ドングリ池に向かいます。
先にヘビがドングリを投げ込み、お願い事をします。
「おいしい果物がたくさんほしいです。お願いします」
ヘビのお願い事は聞き届けられます。ヘビの周りには、リンゴやミカンやカキなど、たくさんの果物が現れました。
「わーい!」
ヘビは大喜びで果物を食べ始めます。
次にお願い事をするのはクマです。ドングリ池にドングリを投げ込んで言いました。
「ハチミツがほしいです。お願いします」
クマのお願い事は聞き届けられます。葉っぱのお皿に入れられた黄金色のハチミツが現れました。
クマは大喜びでハチミツを舐め始めます。
果物はおいしいですし、ハチミツもおいしいです。ヘビもクマも大満足でした。
ヘビはたくさんの果物を食べ終えました。
クマはハチミツをペロペロと舐めていますが、それを見ているとハチミツもほしくなります。本当に食いしん坊なのです。
「もう一個、ドングリを拾ってきますね」
クマに言ってから、ドングリを拾いに行きました。
すぐに一個のドングリを拾ってドングリ池に戻り、投げ込みます。
「クマさんと同じハチミツがほしいです。お願いします」
ヘビのお願い事は聞き届けられます。クマと同じで、葉っぱのお皿に入れられた黄金色のハチミツが現れました。
ハチミツを舐めるクマの隣で、ヘビもハチミツを舐めます。
ハチミツを舐めながら、お願い事が叶うドングリ池があってくれてありがとうと思いました。