表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

小説を編集してみよう 『自分のための基準』のススメ

 小説を書きつづけて、ようやく“一区切り”をむかえましたね。

 “一区切り”には、前後編の前編、短編の完結、長編の第一章の終わりなど、さまざまな形があります。


 形はどうあれ、物語ができあがったのなら、つぎは編集エリアへと入っていきます。

 編集とは、間違いの修正や文章の取捨選択、構成や配置変更、ものごとの関連づけの強化を行うことを指します。



「小説を書きあげたばかりだ。完成したのに変更なんてしたくない!」

「終わったと思ったのに、また何かしなきゃいけないの?」


 めんどうだな……と思う気持ちもわかります。

 わかりますが、編集は必要です。

 とくに間違いの修正は、完璧にできなくても、かならず行うべきです。


 書いているあいだは、一行を書くことに夢中になっています。

 そのため、物語上の大きなズレに気づかないものなのです。

 登場人物の名前が、途中で変わっていたり。名前の呼び方が混ざっていたり。

 ヘタすると、物語の大前提がくるってしまっていたりします。


 事例として、筆者がじっさいにした間違いを、恥をしのんで列挙しておきます。


 ・重要な登場人物の名前が、前半と後半で違うものになっていた。

 ・眼鏡がめずらしい文化圏のため、眼鏡を見たことも聞いたこともないはずの主人公が、物語の途中で「お眼鏡にかなう」という言葉を使用していた。

 ・ある道具を使わないと力が発揮できない設定だったのに、主人公が道具をはずした状態で戦闘に突入していた。



 「なんでこんな間違いを……」という間違いですが、“一区切り”まで書き終えて、何度か見直したときにやっと気づいたものばかりです。

 とぼけた性格の筆者でも、普段であればさすがに気づくような間違いなのですが。何十行、何百行、何千行と書いていくと、大きな間違いに気がつかなくなってしまいます。


 読み返しは、とてもだいじです。

 大丈夫と思っていても、自分が思っていた以上に間違えています。



 直すのは、なにも間違いだけではありません。

 物語の流れを見直して、イベントの順序を入れかえることもあります。

 メリハリをつけるために、百行ほどバッサリ切り落とす大手術をすることもあります。


 このエリアこそ、『第一の読者』の出番です。

 作者視点だと、どうしてもそのままにしておきたくなりますが、ここは『第一の読者』の意見に耳をかたむけてみましょう。

 「いま、自分は『第一の読者』だ」と意識を切りかえるだけで、別の角度から小説を眺めることができます。


 作者である自分では、なかなか親心を捨てきれません。そのせいで、すべてにおいて甘い採点をしてしまいがちです。

 ここは一度、読者である自分におまかせしましょう。


 『第一の読者』として小説を読むときは、書いているときとは違う画面を選ぶようにしてください。

 パソコンで書いているのなら、読者視点のときはスマートフォンで読む、あえてタテ書きやケータイのモードで読むなどがオススメです。

 いつもと違う画面を選ぶだけで、いままで見えていなかったものに気がつけるようになります。



「直しても直しても、完全に直ったと思えなくて不安……」


 完全、完璧という言葉が出てきたら要注意です。

 100点満点を求めはじめたら、完璧主義が再発しています。


 完璧主義は、創作における最大のハードルです。

 より良くをめざすのは、創作者として自然なこと。

 しかし「完璧じゃなければダメだ」と思い込みはじめると、とたんに身動きがとれなくなり。さらに症状が悪化すれば、創作自体をやめてしまう場合があります。


 小説を書きたいと望み、やっとのことで書きはじめられたというのに。完成間際になって筆を置いてしまうなんて、とてももったいないことです。


 完璧は幻です。

 完全は存在しません。


 間違いは、できるかぎり直す……と、しておきましょう。

 世の中には親切な人がいまして、なんのメリットもないのに、無償で間違いを教えてくれたりします。

 直せるだけ直したら「間違いを教えてくれる人がくるかもしれない。そのときは、ちゃんと感謝をつたえよう」と対応を決めておけば大丈夫です。


 仮にしっくりこない場所があったとしても。その箇所をふくめた状態で、小説全体が60点を越しているなと思えれば、“とりあえず”完成としてしまいましょう。

 時間が経てば、しっくりこない理由がわかることがあります。

 そのときに、また手を入れればいいのです。


 創作は、すぐに終わりません。

 気になれば、何度でも手を入れるものです。

 あなたが「完成」と言ったからといって、手を入れる機会が失われることなどありません。

 だいたいできたなら、GOサインを出してしまいましょう。



「100点をめざしてないのに、読めば読むほど混乱してきて、これが60点を越しているかもわからなくなった……」


 編集は『第一の読者』の視点で。

 ルールはひとつなのに、行動が止まってしまう。

 その原因は、『第一の読者』のなかに『自分のための基準』がないことにあります。


 どういう文体が好きか?

 心地良いと感じる話のテンポは?

 読みやすいと思える、文章の長さは?


 普段のあなたは、ほとんどなにも意識せずに読書をしているかと思います。

 こういうことが意識にのぼることは、めったにありません。

 しかし、あなたのなかにも『自分のための基準』は存在しています。

 無意識のうちに選別されているため、あなた自身が存在を認知していないだけです。


 こういうときは『自分のための基準』を取り出し、目に見える形にするのが一番です。

 しかし『自分のための基準』というものは、意識するのも言語化するのもむずかしく、やるとなればかなりの時間を要するはずです。

 完成間近で時間を浪費していては、やっとできはじめた書く習慣が途切れてしまいかねません。



 そこで手っ取り早く『自分のための基準』を視覚化する、ひとつの提案したいと思います。

 『自分のための基準』を、時間をかけることなく簡単に視覚化するコツ。

 それは、あなたの本棚に眠っています。


「本棚なんてないよ。全部Webで読んでるから」


 そういう人は、お気に入りリストやブックマークを覗いてみてください。

 本棚やお気に入りリストは、無意識のうちに『自分のための基準』によって選別された小説達が並んでいるはずです。

 その小説のなかから、この3つの要素を持つ小説を選び出してください。


 ・スラスラと読めてしまう、読むのが楽な小説。

 ・描写が丁寧で、イメージするのが楽な小説。

 ・登場人物が個性的で、読んでいて「この人、誰だっけ?」となることが、ほとんどない小説。


 まずはこの3つがあれば、迷子になる可能性がグンと低くなります。

 カンがいい人は、すでにおわかりですね。

 この3つの要素は、小説を書くときにぶつかりやすい「なやみ」を元にしています。


 ・読み直しても突っかかってしまって、なんだか読みづらい。

 ・説明は十分なはずなのに、どうしてか物足りなく、味気なく感じる。

 ・登場人物が、同じような描写になる。語尾を変えたり工夫してみても、性格が同じに思えてしまう。


 いま選びだした小説は、この3つの「なやみ」への答えとなる小説なのです。

 小説の数は、3つでなくてもOKです。

 また、ひとつの作品が「なやみ」のすべてを網羅することもあるでしょう。

 シーンによって「なやみ」自体に変化が出るなら、さらに数が増えるかもしれません。


 ただ数が多くなり過ぎると、こんどは管理が大変になります。

 『自分のための基準』は、どんなに多くても7作品以内におさめてください。


 また、小説を参考にするときは、かならずタイマーを設定しましょう。

 好きな小説を開いてしまうと、そのまま読みふけってしまう可能性が高いのです。



 完璧はない。

 完全もない。

 そもそも人の感覚は、ときが経てば変わります。

 いま、あなたが感じる「好き」という感覚をだいじにして、編集をしてみてください。


 小説には、緩急のほかに明暗もあります。

 シーンに合わせて、明るい、暗いなどの明度も調節していきましょう。


 『自分のための基準』にもとづいて編集をし。

 『第一の読者』が「60点を越したよ」と答えてくれたら、執筆に区切りをつけます。



 ――おめでとうございます!

 これであなたの小説が完成しました。

 思う存分よろこんで、やりきった気分を味わいましょう。


 書き上げた小説は、せっかくなので「小説家になろう」へ投稿してみてください。

 また、なにかの賞に出してみるのもいいでしょう。

 作品を発表するのは、また格別の達成感が得られます。


 勇気を出して、あらたな一歩を踏み出してみるのも楽しいものです。


【まとめ】


・書きあげた小説の間違いを修正するときは、執筆画面とは違うもので読み直す。


・完璧主義をおさえるため、60点を越していたら “とりあえず” 完成としてしまう。


・『自分のための基準』を視覚化し、『第一の読者』視点で編集していく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ