『2つのハードル』をあぶりだす つづけるための努力のススメ
書きはじめて、柱を立てて、中間を埋めて……。
そのまま順調にやっていけば、あなたの最初の作品が完成するはずです。
そのはずなのですが、言うは易しするは難しで、どこかの時点で止まってしまう場合があります。
『自分のため』の小説の書き方を読んでいる人のなかには、いくつもの書き途中の小説を抱えている人もいるのではないでしょうか。
あんなに「小説を書きたい」と思っていたのに、どうして書けなくなってしまうのでしょう?
飽きてしまったからでしょうか。
昔から、つづかない性分だからでしょうか。
あなただけ、ほかの人よりもやる気がないのでしょうか。
きっと、どれも正解ではありません。
あなたは単純に、習慣化に失敗してしまっているだけです。
習慣化に関する書籍は、多数出版されていますので、気になる人は読んでおくといいでしょう。
筆者もいくつかの書籍を読み、試行錯誤した結果、執筆を習慣化させることができました。
ここからは、筆者が考える習慣化のコツを紹介していきます。
「この小説を、絶対に書きあげるぞ」
「毎日コツコツやっていけばいいんだ。それなら、毎日○ページずつ書いていこう!」
前にもお伝えしましたが、小説を書くのは時間と労力が必要になります。
時間がかかるからこそ、毎日コツコツという選択は利にかなっています。
毎日の目標をつくるというのも、すばらしいことです。
しかしながら、何ページ、何文字という数値目標は意味をなしません。
意味をなさないだけならいいのですが、人によっては障害となり、小説を書く手をひるませてしまいます。
基本的に数値目標というものは、すこし背伸びをするためのものです。
いままでの成果を見て、そこから成長しようとするときにつかうのです。
スポーツでも会社でも、この基本は同じですよね。
数値目標自体は、じつはそんなに悪くありません。
しかし、成長の幅を高望みしすぎたり、数値自体になんの根拠もない場合、そこにあるだけのお飾りの数値になってしまいます。
もし、あなたが執筆のための数値目標をかかげ、到達できずに失敗した過去があるのなら。
数値目標が、成長の幅を高望みしすぎた『レベルに合っていない高すぎるハードル』か、数値自体になんの根拠もない『無意味なハードル』となっていたのでしょう。
初心者と数値目標は、そもそもの相性が悪いと考えてください。
なぜなら、かかげた数値自体に根拠がないからです。
すこし背伸びをするのが数値目標の基本。しかし、初心者ではどの程度が“すこし背伸び”にあたるのか、肝心な感覚がわからないのです。
初心者であるあなたには、数値目標のかわりに、ぜひ立ててほしい“目標”があります。
それが習慣化における最初のコツ。その名も行動目標です。
行動目標とは、その名のとおり「行動の目標を立てる」ことを指します。
たとえば「これからの10分間、パソコンをつかって小説の続きを書く」とか、「○時から○時まで『キーワードプロット』をつくる」などです。
前にもお伝えしたとおり、初心者というものは、圧倒的に行動が不足しているから初心者なのです。
不足している行動を補うには、するべき最重要行動を選び、行動回数を増やしていく以外にありません。
それではさっそく行動目標を立ててください。
執筆をするにあたって、あなたはどういう行動をしているべきですか?
また、どれくらいの時間、集中して作業をしたいでしょうか?
筆者の場合、このような行動目標を立てています。
「朝の6時から7時まで、ノートパソコンを開いて原稿の続きを書く」
「子供のお昼寝が成功したら、起きるまでのあいだ、ノートパソコンを開いて原稿のつづきを書く」
執筆作業を行いたい時間や行動は、より具体的にしたほうが効果があります。
また、○分間、△時間というToDo的な管理よりも、○時~△時というスケジュールにした方が、行動につながりやすいのでオススメです。
今日のどこかでやるというより、何時と指定したほうが、あと回しにせずに済みますからね。
行動目標は、毎日変わってもかまいません。
時間設定して、スケジュールとして組み込むこと。
行動できなかったときのため、数日以内に予備時間を用意すること。
そして、かならず行動を目標にするようにしてください。
ちなみに「考える」や「構想する」などは、行動とは呼びません。
行動とは「ほかの人からも見える、あなたの動作」を指します。
頭のなかだけで完結しているものは、行動に含まれませんので注意してください。
「考える」や「構想する」としてしまった場合は、「書く」や「入力する」というような行動目標に変更してください。
行動目標を立てたら、できるだけ早く。可能なら、いますぐに行動を起こしましょう。
設定初日は、とても簡単に目標を達成できます。
問題は、つぎの日からです。
行動目標を立ててから日数が経てば経つほど、行動から遠ざかってしまう人がいます。
ダイエットや勉強などを見ても、継続できる人はまれ。
どちらかというと、つづかない人のほうが多数派ではないでしょうか。
「やっぱり、自分はダメなヤツなんだ」
「小説を書くなんて、無謀な挑戦だったんだ……」
――と、落ち込むまえに、また習慣化のコツをチェックしてみましょう。
つぎは「行動を起こせない、起こしづらい環境をやりやすいように変えてしまう」です。
あたらしい習慣というものは、つづかないのが当たり前だったりします。
その当たり前をくつがえして、あたらしい習慣をつづけていくためには、いったいどうするべきか?
習慣化に失敗する要因を探りながら、いっしょに見ていくことにしましょう。
習慣化に失敗する定番の要因を、3つほど用意しました。
・あと回しにして、結局やらずに終わる
・余計な行動が多すぎて、だいじな行動までたどり着けない。
・行動目標自体を忘れてしまって、気がついたら習慣が途切れている。
最初の要因は、さきほど出てきましたね。
ToDo的な管理をしていると、生活のために必要なもの、着手しやすいもの、時間がかからないものが優先されてしまいます。
生活のために必要がなく、着手しづらく、時間がかかる執筆は、どうしてもあと回しにされてしまいがちです。
この要因への対処法は、スケジュールとして組み込むことでした。
スケジュールとして組み込めた以上、その時間帯は本来、予定のないヒマな時間であったはずです。
設定した時間内だけは、順位が低くなりがちな執筆を、なによりも優先するようにしてください。
ふたつ目の要因は「余計な行動が多すぎて、だいじな行動までたどり着けない」です。
執筆を習慣化するために、一番だいじな行動はどのような行動でしょう?
パソコン、スマートフォン、原稿用紙など、道具の違いはあれど「机に向かって小説のつづきを書く」というのが、執筆における最重要行動となります。
そんな最重要行動にたどり着くまでに、いったいどのような行動が必要になるでしょうか?
あなたにとって必要な行動を、ことこまかに書き出してみてください。
・自分の部屋のドアを開ける。
・部屋のスイッチを入れる。
・エアコンをつける。
・パソコンの電源をつける。
・ソフトを開く。
・ファイルを開く……
部屋のドアを開けるまえに「コーヒーをいれる」が必要な人もいるでしょう。
また、机にカバンや服が置かれていたら「机を片づける」を入れなくてはいけません。
最重要行動にたどり着くまでの行動を、ここでは準備行動と呼ぶことにします。
この準備行動は、たとえ気にならないほど小さくても、ひとつひとつが立派なハードルであると認識しましょう。
飛び越せない高さではありません。
しかし、ハードルはハードル。知らぬ間に心理的障害となり、いずれは「小説を書く手を止めさせる」ことも考えられます。
最重要行動へたどり着くために、準備行動は減らせるだけ減らしていきましょう。
できるだけスムーズに。
苦労することなく最重要行動にたどり着けるよう、工夫をしていくわけです。
どんなささいなものでも、行動が増えれば、その分だけハードルを高くしていると自覚してください。
毎回毎回、執筆の前に「机の掃除」をしていてはいけません。
最重要行動に、どれだけ早く、どれだけ簡単にたどり着けるか。
行動も環境も、できるだけ『シンプル』であることが、習慣化のカギを握っています。
つぎは、3つ目の要因。
本当によくある失敗は、おそらくこれでしょう。
「行動目標自体を忘れてしまって、気がついたら習慣が途切れている」
そんなバカな……と言いたくなるかもしれませんが、ウッカリ忘れることは、よくある失敗の一つです。
あと回しにするよりも悪意はなく。
だからこそ罪悪感もなく、ズルズルと忘れたままにしておけるのです。
忘れることへの対処法は、どんなものがあるでしょうか?
「がんばって思い出す」
こういうとき、思わず「がんばる」と言いたくなりますが、気力にもとづく対処法を選んではいけません。
気力に頼るのは失敗のもとです。
「がんばる」「本気を出す」という意気込みは、習慣化においてほぼ意味をなしません。
気力というものは、長期的な維持や管理がとても難しく。
維持させるためには、そのための技術を習得したり、コーチングしてくれる人物が必要となってきます。
あなたはべつに、気力維持の技術を習得したいわけではありませんね。
小説を「書く力」を得たいだけです。
そして、初心者であるあなたでは、自分をコーチングすることもできません。
デビューもしていない状態で、編集担当のような存在を得ることも難しい。
さて、どうしましょうか?
こういうときは、単純に考えてみると答えが見つかります。
たとえ忘れてしまっても、思い出す「きっかけ」があればいいだけですよね。
人に頼れず、自分の力ではどうにもならないときこそ、かしこく道具を利用しましょう。
あなたか毎日、それもひんぱんに目にするものは、なんでしょうか?
パソコン、スマートフォン、手帳、自室のドア、トイレのフタ、冷蔵庫の扉……。
利用する道具は、どんなものでもかまいません。
道具のどこか。かならず目につくところに、行動目標とスケジュールを掲示してください。
スマートフォンを持っているなら、アラームをセットするのもオススメです。
「きっかけ」を用意するだけなら、たいした負担ではないので、いますぐ用意してみましょう。
壁にぶつかるたび。
ハードルに引っかかって転ぶたびに、自分をきびしく叱責するのは、北風を吹きつけるようなものです。
習慣化に成功して、最重要行動を定着させるために必要なものは、北風なのでしょうか?
違うと答えたあなたに、ぜひともつたえたいのが、習慣化するための最後のコツ。
積極的に、自分に“やさしく”する――です。
この“やさしく”には、ふたつの意味があります。
ひとつは“優しく”です。
自分を叱責するのではなく。ダメ出しをするのでもなく。
うまくいかなかった理由を見つけて、そっと道から取りのぞいてあげる。
失敗には、なんらかの理由が存在しています。
その理由を見つけもせず、自分に文句をつけてなじるだけでは、なにも解決しません。
自分を責めることはやめて、理由の発見と排除に力を注いでいきましょう。
もうひとつは“易しく”です。
小説にかぎらず。あたらしいことに挑戦するときには、“易しさ”を追求していくのが近道です。
理解や習得がしやすく。
単純にして明快で。
簡単でわかりやすいことが、とてもだいじなのです。
小難しい説教や、難解な課題は、成長したときのために取っておきましょう。
壁に直面したら、ただなやむだけではいけません。
どうにかこの壁を、“易しく”できないか?
飛び越せる高さのハードルにできないか?
そうやって頭に汗をかいて考えて、ちゃんと実行に移すようにしてください。
あなたはいままでも、ちゃんと努力をしてきたはずです。
それなのに、どうしてか前に進めなかった。
前に進めなかった理由。それは単純に、努力をする場所を間違えていたからなのです。
より“優しく”。
より“易しく”。
誰よりもだいじな『自分のため』に、もっと“やさしく”する努力をしてください。
自分に“やさしく”することさえできれば、長い道のりから『2つのハードル』が取りのぞかれ、執筆に集中できるようになります。
あなたの小説は、行動がつくります。
あなたの経験も、行動がつくります。
だいじな行動を続けていけるよう、もっと自分に“やさしく”する工夫と努力をしてみてください。
【まとめ】小説を書きつづけるためのコツ。
・数値目標ではなく、行動目標を立てる。
・習慣化に失敗する3つの要因と対処法を知り、最重要行動を継続する。
・誰よりもだいじな自分のために、“やさしく” する努力をする。