小説を書けないでいるあなたへ
小説を書いてみたい!
頭のなかにあるすごい物語を、みんなに見てもらいたい!!
でも、しんどい。
なんでだろう?
終わりまでの流れは決まっていたはずなのに、最初の1ページも書きあがらない。
うーん。とりあえず、小説の書き方でも読んでみようか。
これさえ読めば、もう書けるはず。
……ふむふむ、なんとなくわかったぞ。よし、もう一度書いてみよう!
…………ああダメだ、今度も書けない。
どうしよう、ずっと机に向かっているのに、まったく進まない。
このままじゃ、絶対に書きあげられない。
小説を書くなんて、自分にはムリなんだ――。
書きたい物語があるのに、小説が形にならない。
そんな風になやんでいる、そこのあなた。
あなたはもしかして、自分に『無意味なハードル』や『レベルに合っていない高いハードル』を課していませんか?
「小説を書くことが当たり前。書かないでいると気持ち悪い」という状態になるまでは、まだ初心者です。
あなたは初心者である自分に、ちゃんと“やさしく”接してあげていますか?
書きたいという意欲があって、書きたい物語がある。
それなのに、いっこうに書きはじめられない。
または、どうにか書きはじめられたけど、途中で手が止まってしまって、終わりまでたどり着けない。
こういったなやみを抱えている場合。
必ずと言っていいほど、あなたの心のなかに『無意味なハードル』や『レベルに合っていない高いハードル』が存在しています。
『2つのハードル』は、小説を書くときにあらわれる邪魔者です。
その正体は、あなたが“常識”や“目標”と思い込んでいるものです。
・ちゃんとした設定とプロットを作り、執筆中は迷いなく書けるようにする。
・作品に関わる参考書籍は、最低○冊は読み終えていないといけない。
・資料はファイリングして、すべて手元に置いていないとならない。
・毎日、最低○文字書けないとダメ。
・かならず数値目標を立てて、期間目標どおりに達成していく。
……具体例をあげていけば、切りがありません。
だいじなことなので、最初に断言しておきます。
小説を書くときに必要なのものは、かたくるしい“常識”でも、高い“目標”でもありません。
むしろその“常識”と“目標”が、あなたの執筆を邪魔している張本人です。
“常識”や“目標”というハードルにとまどい、身動きがとれなくなっているなら、いったん道からハードルをどけてください。
1つの小説を書きあげるのには、想像以上の力と時間をつかいます。
1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月……。
場合によっては年単位の時間をかけて、執筆という道を行くわけです
いくつものハードルを飛び越しつつ、長い時間をかけて完走をめざす。
……考えただけで気が遠くなります。
小説を書きつづけていくあいだ、あなたがめざすべき状態は『シンプル』のひとことにつきます。
『無意味なハードル』や『レベルに合っていない高いハードル』などもってのほか。
なによりも『シンプル』に。
もっと楽に、もっともっと簡単に。
邪魔なハードルは、道からどけて。
高いハードルは、できるだけ低くして。
初心者である自分が、そこから進めなくなって困らないよう。
長い道のりが、ほんのすこしでも“やさしく”感じられるよう、目の前にある段差を埋めて、道を整えてあげる。
こんな話を聞けば、あなたはとまどうかもしれません。
創作論は、世の中に山ほどあります。
しかしながら、自分に“やさしく”しろと書かれているものに、筆者自身も出会ったことがありません。
どこか違和感があるのは、不備があればすぐに罰をくわえる対応に、慣れすぎているせいです。
“やさしく”すると聞けば、後ろめたく、成長を阻害してしまうように感じられるかもしれません。
しかし、それはただ単純に慣れていないだけです。
世界的に有名なイソップ寓話「北風と太陽」の話にあるように、人は“きびしく”されると強い抵抗をしめします。
子供の頃のあなたは「どうして北風が負けてしまったんだろう?」と首をかしげたでしょうか。
おそらく「太陽が勝って当然だ」と考えたはずです。
それなのに、いざ実生活になると北風のような行動をとる人が多いのです。
北風を吹きつけてくる相手が、なにも他人だけとは限りません。
ほかでもないあなたが、自分自身に対し、冷たい北風を吹きつけているときもあります。
あなたはいま、小説が書けない自分をなじっていませんか?
やる気がないと責めてはいないでしょうか?
自分を追い込むために、ムリな“目標”を立て。
達成できなかったからと、さらに高い“目標”を課してはいませんか?
昨日、5ページすら書けなかった自分に、今日中に10ページ書くことを強要してはいないでしょうか?
あらためて考えてみてください。
ハードルをより多く、より高く設定するのは、本当に有効な手段なのか――と。
北風は、どんなに強く吹いても、旅人からコートを脱がすことはできませんでした。
あの物語にならうなら、あなたが本当にしなければいけないのは、自分という旅人を、太陽のようにあたたかく照らすことではないでしょうか?
たしかにそうだ。
そんなこともわからないなんて、自分はなんてダメなヤツなんだ……と落ち込むことはありません。
家庭でも学校でも会社でも、人を罰する――いわゆる懲罰的な手法ばかりが目立ちます。
そんな場所で生活しているせいで、見習うべきモデルに出会えていないこともあるでしょう。
あなたはまだ、ほかの手法を知らないだけ。
知らないなら、それを知るだけでいい。
わざわざ自分を責める必要は、どこにもないのです。
この『自分のため』の小説の書き方では、小説を書きあげることを最終目的にすえ。
創作していくにあたり出現する『2つのハードル』と、その対処法。
それから、自分に“やさしく”するコツを紹介していきます。
ぜひ、目の前にたちはだかる『2つのハードル』を排除し。
書きはじめる力、書きつづける力を手に入れ。
世界でたった一つしかない、あなただけのすばらしい小説を生み出してみてください。
【まとめ】
・小説を書けないのは、自分のなかに『無意味なハードル』や『レベルに合っていない高いハードル』があるせい。
・小説を書くときは『シンプル』な状態をめざす。
・『2つのハードル』を排除し、自分を “やさしく” あつかうコツを知れば、小説が書けるようになっていく。