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プロローグ
俺はあの通学路を通る。『何か』を探して。遠い昔、多分10年くらい前のことだったと思う。俺はたしかにここを通った。でも、お前が思い出せない。お前は誰なんだ。頼むからどこかから出てきてくれ。カーブミラーのある曲がり角に、俺は立ち尽くした。
渋谷とか、銀座とか、そんな所は毎日何かが変わっている。そんなことはあまり気にせずに過ごせた。ただ、私は、君と通ったあの道が、変わっていなければいい、と切に願う。ようやく慣れた東京から、今日は地元に帰っている。もしかしたら、君に会えるかもと思って、いつもの通学路を通ってみたが、やはり彼の影はなかった。
私は今、実家の部屋にこもっている。またスマホを確認する。着信はない。はぁ…。なんであの時に私だって言えなかったんだろう。私は机に突っ伏す。
やっぱり、俺はあの時、聞くべきだったんだろうか。
やっぱり、私はあの時、言うべきだったんだろうか。
本当はもっと…
本当はもっと…
お前と一緒にいたかった。
君と一緒にいたかった。