ピンタの話 3
お友達みたいな恋人。恋人みたいな友達。なんかそういう枠っていうのが流行ってますね。でも、実はその枠も圧力なんでしょうね。
ニーニャは食事に乱入してきて、用意されたスープと芋を全部平らげた後。彼女はひとしきり僕に何かしら言ってから出て行った。マリアの外套を羽織ってだ。あれはマリアの匂いがする。持ってかれたのはちょっと残念だったのは教えていない。
ニーニャは嫌いってわけじゃないんだけど、最近のニーニャは気難しい。だからどうしたってわけじゃないんだけど、何もしていない僕にいらだっている様子だ。
「ピンタさん。先ほどのニーニャさんはどんな方なんですか? 元気な人というのはわかるんですが」
マリアが困惑している。
困惑……しているのか? あんまり表情に出ないのでわかりづらい。島には珍しい白い肌。姉さんとは似ても似つかない。
「ニーニャは友達だよ。元は姉さんの友達だったけど、姉さんが死んだ今は僕の友達」
「異性のおうちに押しかけて、ご飯をたいらげていくのがただの友達ですか?」
「……違うの?」
「てっきり、ピンタさんの恋人だと思ってました」
恋人か。考えたこともなかった。
友達未満だったり、恋人だったりと忙しい。
僕とニーニャはなんだろう。友達で落ち着いてたんだけど、周りがそれを許さない。流されるなら流されてやろうとは思うけど、流れが分からない。
「……マリアのご飯、美味しい。また作ってよ。買ってきてほしいものがあったら教えてくれなね。買ってくるから」
朝食を食べ終えた後、島の中央部に向かう。しばらく外に出ていなかった。
スモッグの中をかき分けるように歩いた。ニーニャはこのスモッグが目に染みると言った。彼女はこのスモッグが嫌だからとゴーグルをつけている。僕はそのゴーグルは視界を狭めるからやめろ。と注意したのだけどあいつは聞く耳を持たない。
スモッグを抜け、なだらかな丘をのぼった先にジャンクショップはある。
掃きだめの島の経済は全てここで回っている。
ひげじぃは初めて見たときと変わらない。初めて会ったのはいつだったか。
「ピンタか。もっと早く顔を出さんかい」
ひげじぃはゴミの香りの他にたばこの香りもする。島でたばこを吸う人は少ない。
シティは喫煙者が多いらしい。島の人は健康志向なのかもしれない。
「もう、大丈夫なのか?」
「なにがさ」
「……うんにゃ、なんでもないさ」
食材を買うためにニーニャは定期的にひげじぃの元に顔を出していたはず。
僕の無事なんてのは知ってたはずだ。
「食材を一通り欲しい。人が増えた。何が欲しい? って聞いても、ロクに答えないからね。一通り揃えようと思う」
あいよ。とオーナーは快諾して、日持ちする芋から長持ちしない葉物の野菜。調味料をそろえた。冬だし、心配はしてない。
「結構するぞ。大丈夫か?」
「問題ないよ」
「先日の死体は高く売れたからか?」
「やめてよ。まるで僕が死体を作ったみたいじゃんか。死体が転がってたから売っただけだよ」
島のことはひげじぃにはなかなか隠せない。隠すこともしなかったけど。マリアと運んだ死体はちょいとばかり目立ったらしい。
誰が作ったともわからない死体を売るなんてのはリスクだ。
横取りしたとか思われて、ちょっかい出されたらかなわない。
今回の場合は死体を作った奴が検討ついたから、売っただけだ。
「大層な美人を囲っているようじゃないか。お前も男だったんだな」
「僕は昔から男だよ?」
たまに大人達とは話がかみ合わないことがある。
外に出てわかった。マリアは目立っていた。
しばらく引きこもっていたのが悔やまれた。
姉さんの骨で作ったブルーダイヤをひげじぃから受け取った。
それは小指の爪程度の大きさで、ネックレスにしてくれていた。首からかけると、ちょうどみぞおちに接した。
それとなく匂いを嗅いだけど、姉さんの香りはしなかった。
「マリアの匂いはするわけないだろ」
ひげじぃに見られた。不覚。
実はこの小説は全て完結しています。予約投稿しているだけなのです。ご安心してください。
追記:昨日感想きたぁああ!