ピンタの話 5
反動でしょうか。すごく短いです。
最近のニーニャとマリアは仲が良い。
仲が良くて悪いことはなにもない。
しかし、妙な疎外感がある。
「ピンタさんに相談してもしようのないことですから――」
とマリアには言われた。続けてこうも言われる。
「――ニーニャさんと何かお話ししたいことでもあるのですか?」
話したいことというか、確認したいことというか。なんか、まあそういったことがある。僕もよくわからないから曖昧に返事をしてしまった。
「ちなみにどんな?」
「なんで知りたがるのさ」
「色っぽい話が女の子は大好物なんです」
このセクサロイドはこともあろうに自分を女の子と自称したぞ。
「色っぽい話じゃない。色っぽいどころか。血なまぐさい話かもよ」
「銃で自分の頭を打ちぬくとかですか?」
「……話したことあったっけ?」
「いえ、ニーニャが教えてくれました」
おしゃべりめ。いや、こいつみたいにしゃべらないよりかはよいのかも。だけど、それっていうなら、僕にしゃべってくれたっていいじゃないか!
「なんで、頭を撃ち抜いたんですか?」
「笑うだろ?」
「場合によっては」
「マリア姉さん……お前じゃないよ。一緒に住んでたマリア姉さんが、頭を撃ち抜いたから。僕も続くのが自然なことだと思ったんだ」
人を傷つけられない僕が僕自身は傷つけることができるかもしれない。別にそんな大層な考えがあったわけじゃないけど。
「失敗したということですか?」
「……僕の頭が弾より硬かった。それだけ。あまりの衝撃に気絶はしたけど」
ニーニャにたたき起こされたのはついこの前のこと。
ぐずぐずになった泣き顔を思い出した。
なんだか、悪いことしたな。とちょっとは反省した。
僕の頭よりは柔らかかったユタカは死んだらしい。
いや、やっぱり記事を書いていたから死んでいないのだ。
死んだけど、別のユタカが起きて動き出している。
シティの人間ってのはそういう奴もいる。
ひげじぃに教えられた言葉が僕の中の「もしかして」といったものがぐるぐる巡った。頼まれごともどうにかしないといけない。
どうして僕なんだ?
姉さんからは面と向かって役立たずと言われるような僕だ。自信なんてものはない。最近はニーニャも僕とロクに話してくれないし。というか、多分避けられてる。
早くニーニャと話をしないといけない。
僕はすっかり雪が溶けた外へ、外套を羽織って出ていった。
マリアには「ちょっと外へ出る」とだけ伝えた。
お昼ご飯はたんまりと用意しとくように伝えた。