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序 花桜八重 ──失踪事件から二十九日

 ある春の日、私の姉は消えた。会話をした私が最後の目撃者だった。

 その日以来、私は姉を捜している。どうして消えたのかを、探るため。

 親友の葵とともに探偵団を作り、私達や姉も通う女学院を調べる。しかし、なかなかめぼしい情報はない。


「仕方ないわ、八重。桔梗さんの悪い噂は全て消されてしまうのだから、事件に巻き込まれたとしてももう残っていないわ」

「──そうよね」


 姉は女学院の中でもかなり美人の部類に入る。私もそうだが、父親が将来のために、と都合の悪いことを消すよう院長に言ってある。

 そのせいか、私の姉は完璧な美人と呼ばれ、崇められている。

 何の手がかりもないまま帰宅する。母親は私を見かけるなり、鼻で笑った。


「八重、気にしすぎよ。わざわざ探偵団まで作るなんて、バカげてるわ」

「……でも」

「いつか見つかるわ」


 母親は何も知らないから、言えるのだ。


 ──あの日、姉と私は女学院の4階の教室で昼ご飯を食べていた。葵が休みなので、たまには姉妹で一緒に、と私が思ったのだ。

 姉はふと窓の外にある空を見上げた。


「私も、いつかこの広い空に羽ばたいてゆけるのかしら……」


 姉は前から謎めいたことを突然呟くことがあった。だから、私は気にしなかった。


「何か飲み物買ってきますわ」

「ありがとう、八重。それじゃあ、ほうじ茶をお願いできるかしら」

「わかりましたわ」


 姉は笑顔だった。

 ほうじ茶と緑茶を買って戻ると、姉はいなかった。急用ができたから戻る、と綺麗な字でメモを書いて残していた。

 しかし、ここからがおかしいのだ。近くにいた人は姉を見かけていないのだ。

 じゃあ、飛び降りたのか? ──騒ぎになっていないから、あり得ないことだ。


 姉は教室から消え去ってしまったのだ。


 探偵団を作り、調査に乗り出したのには訳があった。私は姉よりも女学院では立場が下。だから、探偵団を名乗ることにしたのだ。


「……虚しい」


 私は自室に戻ることにした。

 学院の中でも姉と親しい人と会いたくても断られてしまう。姉が消えてからもうすぐ一ヶ月が経とうとしている。

 私は余計焦るばかりだった。

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