それでも私は
今回は結構短め、三人称視点のお話になります。では、どうぞ。
これからするのはあったかも知れない。でもそこまでこの話とは関係のない。
そんなこぼれ話。
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日が暮れかける、帰路に就くには申し分ない時間の中、一人の青年、見えないもう一人の少女が連れ添って歩いていた。否、正確に言えば青年の跡をつけるように少女が後ろからついて行っているというのが正しい。
もっとも、他人から見れば、青年がひとり寂しく往来を歩いているだけに見えるのだが。
そんな二人は、黙々と目的地へと歩みを進めていった。
ふと、青年が口を開ける。
「これから言うのは、まぁ単なる独り言なんだけど、暇だろうから聞いておくといい。」
そんな誰もいない、見えない場所に話しかけるように語りだす。
少女は突然のことで驚いたがすぐに問い詰めるように近づいた。
「私のことがみえるのですか!?」
その迫力たるや、見えていれば誰であろうと引くことは間違いないと思われるものだ。そう、見えているのならば。
青年は何もなかったようにそのまま言葉を紡いだ。
「君のことは見えないし、聞こえない、でもなんとなくだがいるのはわかる。ま、それだけなんけどね。」
そう言って頭を掻く。
少女はそのことにやや気落ちはしたものの、いない者扱いされるよりはましだと、そう思うことにした。
青年は気にした素振りもなく、話を続ける。
「これからのことは気にしなくてもいい、元の場所に戻りたければその手伝いはするし、その逆は、…まぁ何かしら手は取ろう。」
「あれほど、仲秋君が入れ込むんだ。君がそこまで悪くないものだってのはわかる。でも、だからこそこのままにしておくと、君たちにとってひどい現実が待ち構えているだろう。ほかの例を見ても大体そうだった。…かくいう僕もその口でね」
眼鏡を上げながら、ごまかすように苦笑いをする青年。どうやらこの話は、あまり人にはしたくないたぐいのものらしかった。
少女はただただ青年の言葉に耳を傾けている。
「僕は、そんな将来ありうる悲劇を、少しでもなくしたいんだ。違うな、僕と同じ思いをさせたくないこれが正しいか。」
要は僕のエゴなんだよ、と付け加えて青年は言う。
その顔は、見えてない少女に対して、真摯に考えているかのようだ。
「こんな急な、荒い対応になってしまったけど、本当にすまないと思っているんだ。でも、最悪姿を消したり自殺にまで追い込まれる子も見てきた。そうなってほしくないと思ったからここまでしたんだ。だから、恨むんなら、彼じゃなく僕を恨んでくれよ。僕が無理言って引き離したんだから。」
青年はとても真剣に、それでいて気兼ねなくそんなことを言う。
「それでも、私は―」
―彼と一緒に居たかった。―
誰にも聞こえないそんな声は、最後まで口に出すことはなかった。
「それにしても、まさかアイツらがいない時に限って、こんな事態になるとは、人生ままならないものだねぇ。…ん?鍵が開いてる…確かにしめたはずなんだが」
青年は怪訝な表情をして門の前で唸っている。
その姿を少女は後ろでただただ見つめていた。