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W・E s ワールド・エンカウント ストーリー  作者: ムラツユ
World Examiner begining ~異なるモノ達~
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一抜けて

今回は一日に二話投稿します

 早朝の珍事件(?)のことをルーに尋ねて見てみても『大丈夫です』の一点張りで、実質的な被害もぶち破られた襖のみ。

 現金等の貴重品が紛失したというわけでもないからあまり聞かれたくない事なのかもしれないと深く追及はしなかった。

 その日以降寝不足に悩まされることが少なくなったのは完全なる余談だろう。


 『光陰矢の如し』とはよく言ったもので、平日を忙しなく過ごしているうちにいつの間にか休日。

 つまり二回目の『アルバイト』、異世界に行くのは三回目と言うことになる。

 今回はルーが先に出かけており、』後で研究所のほうで落ち合う手筈となっている。

 何でも政府のお偉方に呼び出されてるのだとか、、彼女は重要人物でもあるから仕方ないのけど一緒に行きたかったというのが本音だ。

 まぁ俺ももう大人だし、そこら辺の事情と言うものを分かったうえで我慢できる人間だからね!

「と言いつつ、やっぱり少し寂しいツナギ君であったとさ」

「勝手なモノローグ付けるのやめてくれる?木之本さん。」

「君の素直な気持ちを代弁してるだけだよ。恋する青少年君?」

 口元に手を当て悪戯っ子のように笑って見せる木之本さん。当たってはいるので言い返せないのが非情に悔しい。

 研究所の前にある喫茶店『エンクエントロ』での一幕だ。

 少し早めについてしまったので喫茶店で時間をつぶしているところに、木之本さんと出くわしたといったところだ。


「と、そんなことしてる暇はなかったね。ささ、早く入っちゃってよみんな待ってるからさ。」

 木之本さんがやけに急かして中に招待することに少し嫌な予感がしたものの、暇をつぶしたおかげで丁度いい時間にはなってる。

 彼女のなすがままに研究所の中へと入っていった。


 まず最初に見かけたのが意外や意外、最年少のリュウだった。

「あ、ツナギさん。はよっす。」

「あ、ああおはよ…てかなんで此処に居んの?いや別に好き嫌いとか関係なくな」

 リュウははたしかにあの時、自分にはきついからやめたいって言ってたはずなんだけど。

「リュウにはこれからサポートのほうにまわってもらうつもりなんだ。」

 その疑問に応えたの本人ではなく後ろから姿を現した白衣を着た少女、五織さんだ。

「五織さん、サポートって?」

「基本的には私やマキナの手伝いだね、超能力を使った本格的なものもそのうちやってもらうかもだけど。リュウ一人だけ放っておけないていうのが本音だけどね。」

「一人でいるのも暇なんでだったらついでにって感じっす」

「なるほど。ここに居る分なら危険も少ないだろうし問題ないな。じゃぁ改めてよろしく、リュウ。」

だけ「余り手助けはできないと思うっすけどね。」

 と言うことは、前回とまったく同じとまではいかなくても変わりのないメンバーで探索に当たっていくらしい。

 戦闘要員でもあるリュウがサポートに回ってしまうことで少しだけ心細さもあるが、そもそも俺たちの班は調査をメインに動くので問題はないはずだ。

 自己保身的な考えになってしまった事に自己嫌悪が…。


 気を取り直して他の面子に挨拶をしていくと、ルーがまだ着ていないことに気付いた。

 少し心配になって事情に詳しそうな人に尋ねようとすると、パンパンと手を叩く音がする。

 そんな彼女の側には背中で背負うような紐がついている機械が鎮座していた。

「ハイハイ注目注目~。今回導入されるようになった新装置の説明をするから。みんなよく聞くように!後で聞いてなかったって言うのもなしだからね!」

「装置ってのはその大きな機械の事デスカ?なんかどこから突っ込めばいいのか分からないフォルムデスケド」

「お、此のフォルムのこと聞いちゃう?お目が高いねぇカミュちゃん、実は-」

「マキナマキナ。時間おしてるからそれは後にしよう、ね?」

「ここからがいいところなんだけど…仕方ないね。じゃ軽く昨日説明をば」

 五織さんにさえぎられたことで、木ノ本さんはパッと見でわかるほど肩を落としている。

 しかしすぐに気を取り直して昨日の説明に入った。


「これは転移装置の簡易版、その試作版ってところかな。以前までは町のある地点まで戻る必要があったけどこれさえあればどこでも世界間の移動ができるって寸法さ。」

「おぉ、じゃあ今回から、遠出も可能になった、てことか?」

「大体ヒノのいう通りって思ってもらって構わないんだけど、取り扱いに十分気を付けてね。具体的には-」

「一寸待った。」

 今度は俺が木之本さん説明を遮る。どうしても聞きたいことがあったからだ。


 すると、

「-ナニカナナカアキクン?」

「なんでカタコト…。そんなことよりまだルーは来てないんだが勝手に始めちゃってもいいのか。も一つ言うとそのことについて何か聞いてない?」

「アレー?ソウイエバイナイネェカノジョ。ドウシタンダロ?」

「お前…それわざとだろ。。知ってること全部はけ、な?」

「どうどう…落ち着いて、ちゃんと話すから。…ルーちゃんはね、今日はタクミ君の班に同行する予定なんだ。」

 時間が止まった、気がした。

「-ハ?」

「だから、今日から二日間、ルーちゃんはタクミ君の班に同行するの」

「いや聞こえてたけどそうじゃなくて!なんでそんなことになってるんだよ!?」

 初めて聴かされた衝撃の事実に、つい木之本さんの肩をがっしり両手でつかみ、驚愕やら憤慨やらの感情を綯い交ぜにするかのようにグラグラと揺らす。

 

「此れには今の人間社会よりこじれて汚れた大人の世界の話が合ってだねねねね」

「なんだその言い訳に使えるベスト10に入りそうな謳い文句は!?ごちゃごちゃ言ってないで理由をは な せ や !」

「その前ににに、私の肩を離せ!」

 一瞬の隙をついたのか、彼女は猫のように素早く身をひねり拘束から抜け出す。先程の揺れがまだ残ってるのか顔色が悪い。

 かくいう俺はヒノに宥められ先程よりは平静を取り戻していた。と言っても心中では疑問と不安が渦巻いている。

 そして呼吸を整えた終えた木之本さんが言いずらそうに口を開いた。

「大まかな理由はさっき言った通りなんだけど、彼女はいわゆる異世界と地球をつなぐ重要人物になるかもしれないって話は聞いてる?聞いてなくても察してほしいんだけど。」

「まぁ、それとなく聞いてはいたけど」

「良かった。で、そんな人物をできるだけ危険な目に遭わせたくないよね?そして、出来ればよく目の届くところに置きたい。まぁ普通は考えることなんだけど。

それがタクミの班だったんだ。彼はお国からの信頼も厚いし実力もある。正にうってつけの人物だってね。」

「それを言ったらお前やヒノだって-」

「残念なことに私たちはあんまり信用されてないんだよねー、どっちかと言うと問題児って認識?」

 木之本さんはあっけらかんとそう宣い。

「命令違反と科はしてないけどよく勝手に動いてるからね、私たち」

 五織さんは遠い目をしながらそう呟き。

「ほとんどマキナの独断専行。私もよく無視することあるけど。」

 最後に唐突に話に参加したクーさんの一言で締めくくられた。

 ただ一つ思ったことと言えば、ついていく人間を間違えたのかもしれない…


「ま、まぁそういう事情以外にもこうなった原因はあるから!いまさらどういこういっても遅いしね…でも心証よくすれば私たちの要望も通りやすくなるから、これからの仕事を頑張ってもらいたいんだけど」

「早く機能の説明終えて出ませう木之本博士!」

「…なかなかに厚い掌返しだね。いや仕事熱心なのはうれしいんだけど。」

 そして一つ咳払いをするとようやく装置の機能説明に戻った。


 まずは基本的な使い方からはじまり、そして最後に取り扱い方の諸注意で締めくくられた。

 見た目通りこの装置は繊細なものらしく、強い衝撃に弱い・防水加工前・起動に半刻の時間が必要という一昔前のゲーム機を彷彿とされるものだ。

 なので屋外での使用はもちろん厳禁、出来れば周りに信頼のおける人を置いて見張ってもらう方がベストだという。

 なかなかシビアな使用条件だが、これがあるのとないのでは旅の効率も段違いだ。大切に使っていくべきだろう。

「それとこの装置、いま支給されてるのはウチの班だけだから。」

「え、どういうことだ?」

「これの製作に携わった…と言うか製作指揮を執っていたのが私なんだ。だから一機だけの試作品を優先的に配備させてもらったの。あ、試作品と言っても一応安全性の確認はしたから」

 ありがたい誤算だ。つまり俺たちの班だけ先行して調査に臨めると言うことだ。

 この少ないアドバンテージをいかして彼らに差をつくなければならない。あまり乗り気ではなかった異世界調査だったけど、これからは本腰いれて当たらなくては。


 そう決意を新たにしている傍ら、カミュがこちらを見ていることに気付いた。

 なにか言いたそうにこちらを薄く睨み付けている。

「あの、なにか?」

「別にー」

 その割には先程よりきつい目線をこちらに向けているのが気になる。

 …一考えてもその理由にたどり着かないので一先ず彼女のことは頭のすみで考えることにして、旅立つ準備を澄ますことに専念。

 今度は一体何が起きるのか、ルーが寂しい思いをしていないか、いろいろと不安は尽きないが、それらを振り払うためにもただ前を向き進む事しか考えていなかった。

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