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W・E s ワールド・エンカウント ストーリー  作者: ムラツユ
World Examiner begining ~異なるモノ達~
43/46

ゲート

久しぶりの投稿、、少し調子が悪いっぽいです

 初日のバイトも無事に終わり、平日。

 社会人でも学生でも、おそらくニートや引きこもりにも訪れるだろう昼の時間、この時だけは仕事を忘れて弁当にありついたり、若しくは打ち合わせも兼ねて団体で食べたりと人によって様々な過ごし方をするであろこの時間に、俺も例にもれなくルー謹製弁当にありついていた。

 二人で。


「ところでだナカアキ君。」

「どうしたんだい、木之本さんや。」

「世界には二食で一日を過ごすところもあるから君の考えは間違っていると言っておこう」

「心を読むな、サトリかお前は。」

「私をあんな毛むくじゃら妖怪と一緒にしないでくれるかな?」

「いいと思うぞ?ハゲになる心配はないし。というかわざわざそのために話しかけたのか?」


 お互い意味のないに軽口を叩き合いながらも、箸をの動きは止めない。

 穏やかな春の天候の中、活発な生徒たちによる喧騒も相まってこの大学の雰囲気は明るいものになっている。

 その中にはひっそりと、ゆっくり昼を頂きたい人もいてそのうちの一人が俺なわけで。

 同じことを考えていたのか木之本さんとバッタリ遭遇、そのまま相席の流れに相成ったのである。

 因みにサトリは心を読む化物で、山の中に現れて道行く人々の心を読み動揺させたところを襲う妖怪と言われている。

 元となったものが中国の故事なのだがそれ自体は珍しいことではないので割愛しよう。


「それにしても妖怪、妖怪ね…ナカアキ君はどう思う?」

「どうって、なんのことだ?」

「君の目線から見て、まm―妖怪ってどういうものだと思うのかってこと」


 この質問自体は何か意味があるのだろうか、俺には彼女の意図がつかめないもののきっとただの雑話だと思いながら、一先ず思考を始める。

 知らず、箸を止めていた。


「―そうだな、過去に起こった事柄を昔の人が面白可笑しく改竄して言いふらしたモノ、じゃないか?」

「うわ、ロマンがないねぇ。あれほどファンタジーな体験してきたのに。」

「だってそうだろ、鬼は代々朝敵として畏れられる象徴として、他には鎌鼬なんかの自然現象を記したものだったりだ。」

「いやまぁ。確かにそういうものだけど…よほど『治療』とやらが優秀だったのかねぇ、こりゃ先が長そうだ。ってそうじゃない。」


 どうやら本題は別にあったようで、木之元さんは多少強引に話題を切り替えた。

 そして周りに聞こえないように声量に気を付けてこちらに話しかけてくる。


「ルーちゃんの事なんだけど、彼女どうやってこっちの世界に来たの?」

「どうやってって…」


 別に誰かに口外するなと言われたわけではない、無いのだがわざわざ自らの黒歴史(アヤマチ)を暴露したくはない。

 その場凌ぎに言葉を濁すことにする。


「まぁ、色々とあったんだよ、色々と。」

「もしかして聞いちゃいけない類だった?」

「別に暗い話じゃないが…なんでそんなことを聞くんだ」


 話題の転換も兼ねて逆に尋ねると彼女は少し考える素振りをしてゆっくりと口を開いた。


「そりゃ、世界間をつなぐ方法に科学者が興味ないわけないじゃないか。それにこれからの調査に影響が出るかもしれないし。」

「そんなものか?」

「そんなものなの。それともし、もしだよ?その何らかの移動手段ゲートが生きていたら―。」


 彼女の言に合わせて夢想する、あの無残になったマイパソがまだ生きていて、未だに異世界へ続いているのだとしたら。


「―またいつ、しかも今度は友好的な輩が来るとは限らない…か?」

「そういうこと、あとついでに今はまだ大丈夫だけど、正式に彼の世界との国交が始まった時は法で罰せられちゃうかもね。」


 それは勘弁願いたいのだがつながっているのかどうかわからないし下手に動かして悪化するのも避けたい。

 考え抜いた末に、事情を話して今は亡き夢の残骸を見てもらうことにするのだった。

 …いやだって直せそうだったらただで直してくれるっていうし、そろそろパソコンがないと厳しいかなって思うんです。



「ほうほう、此処がいわゆる君たち二人の愛の巣ってやつなのね」

「ちがうから、そういうんじゃないから。」


 自宅に招いて早々に爆弾発言をかます木之本さんを早々に制して、中へと招く。

 これで女性を家に招くのは二人目だな、とわけのわからない感慨にふけっている間に、ずんずんと木之元さんは中へと入っていった。


「ちょ、勝手に奥まで入るなよ」

「なにさ、別にいたずらしようってわけじゃないんだからいいだろう?遠慮する仲でもあるあるまいし」

「それはこっちのセリフだから、そもそもそこまで仲良くした覚えはないぞ」

 そんなやり取りの末、件のパソコン、もとい殉職してしまった盟友の前にまでたどり着く。

 ちなみにいまはルーは外出中だ、今日も大人数相手に異世界の講義をしているらしい。

 お前はいかなくていいのか、と言われそうだが木之元さん曰く「君には優秀なガイドがついているじゃないか」とのこと。おそらくルーの事をさしているのだろう。

 さて、話を戻して、今は木之元さんがもううんともすんとも鳴かない、はずのパソコンの前に立ちいろいろと試しているところだ。

 近づいてボタンを押してみたり、何かよく分からない装置を取り付けてみたり。

 そしてあらかた調査が終わったところで、彼女は口を開いた。

「これ、まだ生きているかもしれない。」

「マジか。うわぁ、あと少しで犯罪者まっしぐらだったのか、俺」

 早期発見ができたことにより、安堵と恐怖の入り混じったふくざつな心境で冷や汗をかきほっと胸をなでおろす。

 しかし続く木之元さんの一言でそれは驚愕の色に染まった。

「ううん、それだけじゃない。このパソコン自体がまだ完全に機能を失ったわけじゃないんだ」

「は?」

「わかりやすく言うとね、このパソコン、直せるよ。」

 その一言で、思わず彼女の肩を強く握る。

「直してくれるのか!?」

「う、うん他の人には難しいと思うけど、わたしなら何とかしてみせるよ。」

「あ、でも修理代は高いんだろう!?完膚なきまでに壊れているのだし」

「いや修理代とかいいから、というかそろそろ離して。近い近い!」

 さらに無償で修理してくれるらしい、あまりの大盤振る舞いに肩から手を離し思わず手を合わせる。

「恩に切ります木之本大明神様…!」

「君実は馬鹿にしてるよね、そうなんだよね?」

 失敬な。十割十分感謝の念で埋め尽くされているさ。悪ふざけ込みでな。


 そんな茶番劇をはさんで、今度は木ノ本さんのラボに運び出すための準備にはいる。

 丁寧に梱包して専用の配達業者に頼むらしいのだが、その運賃も出してくれるとのこと。

 至れり尽くせりとはまさにこの事、しかしそれあわせて不安が大きくなるのは小心者のサガというもので。

 作業の最中に本当に大丈夫なのかと何度念押しすると、「経費で賄うから問題ない」と木之本さんは言う。横領とかの類ではないとも言っていたが正直心配ではあった。



「それにしても、どうしていきなり、しかもこんな場所からつながったんだろうね?」

 準備を済ませた木之元さんが唐突にそんな疑問を投げかけてきた。

「…そりゃぁ、俺が一瞬の気の迷いでメールのURLを開いたからだろ。」

「その行為自体は何も変わったことはないじゃん、それにスパムメールやらのトラップを踏む輩は世界にいくらでもいただろうしね。私が言いたいのは-」

 そこまで声に出して木之本さんは途端に口をつぐむ。すぐに頭を振って話を再開した。

「まぁ、それは君に聞いていも仕方ないか。ただ、一つこちらから言えるのは、少し周りに気を付けたほうがいいかもねってくらい。」

「気を付けるって、ルーのことか?」

「ルーエさんのこともしかり、あとは転移装置ゲートの件についてもね。」

「転移装置?それは今さっき木之元さんが運び出して解決したじゃないか。」

 そう、修理するというのはおまけにすぎなく、今回の目的はつながっているかもしれない状況に対する対処だった。

 これから何らかの処置して二度とそんな突飛なことが起きないようするはずではなかったのだろうか。

 それに対して木之本さんは静かに頭を振り、その疑問に答える。

「たしかに、現状一番危険なものを抑えてあるし、その処置も問題はないだろう。でもさ、つながる要因になった別の何かがないとは限らないんだよ。」

「あのパソコンがすべての原因じゃないのか?」

「今出来る限り異常なところがないか見てみたけど、それらしいものは無かったよ。また帰ってからも調べてみるけど、何か別のものが作用してなった可能性も否めないね。」

「まじか…」

「マジマジ。いつ、別のところに再発してもおかしくはないんだ。それだけは肝に銘じてよ?」

 それだけ残して木之本さんは自宅へと帰っていった。

 最後の発言は、私個人としては

 彼女の言っていることが本当なら、その要因を見つけだあない限り枕を高くして眠ることが出来ないということだ。

 よほど低確率だが寝首をかかかれることだってあるのだし、それ以外の厄介事も抱え込むことになるのだろうし。


 それを踏まえてみたら、軽率な行動だったのかもしれないが、それを悲嘆することはしたくなかった。

 あれが無ければ、今頃変わり映えしない平穏な大学生活を送れたはずだが、ここまで個性的な友人を得られることはなかった。

 だからこそ、俺は此の行動に後悔してはいないし、いけないだろう。

 だから、これからのことに思いを馳せながら少しでも自分にできることを探して行こうとそう決意したのだった。

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