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W・E s ワールド・エンカウント ストーリー  作者: ムラツユ
World Examiner begining ~異なるモノ達~
42/46

Мからmへ

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  -第一次異世界遠征による調査結果―


 今回、学生たちによる第一次遠征はつつがなく終了した、中にはこれから激化するのを見越して作戦から降りるものも現れたが、それは英断と言えるだろう。―少なくとも安全を確保するくらいの考えは残っているようだ。―


 さて、遠征から戻った彼らの報告をここに記しておこうと思う、君も知っておきたいだろうからね。

 私の班の主目的は異世界への融和対策および諜報、そして行方不明者の捜索の三つだということは依然話した通りだ。


 幸いにも第一回目にして一人目の行方不明者の現在地が分かった。

 といっても携帯転送装置の最終調整がまだなものだから今はまだ何も身動きが取れないのが歯がゆいところ、といったのが現状だ。

 私の班は携帯転送装置(あれ)が完成しない限り、大体的な調査に移れないだろう。

 まさかデザインでここまでもめるとは思わなかったのは唯一の誤算だ。

 個人的には少しスチームパンク的な風貌をしていたほうがカッコイイと思うのだけど…


 おっと話がそれた。あの装置については実用段階まできてはいるけど、時間の都合上ランドセルほどの大きさにまでしか軽量化&縮小化することはできなかったから調査員たち、とくに私の班は異世界補正(ブースト)を切ってあるからさぞや大変だろうね。

 -まだ彼らには私たち(・・・)の思惑については話していない、もう少し、信頼してもらうまでゆっくり待つことになるかな。



 それじゃあ、これからは真面目な調査報告に移るよ。


 まずあの世界に充満する魔素について『霊感青年君』に渡した※デバイスに内蔵された計測器を使って改めて計測してみたけど、こっちとは比べ物にならないほどの濃度だ。

 魔術師(きみたち)が羨むのも仕方ないと思えるほどに、ね。

 これだけの濃度があればここで言う奥義クラスの魔術もバンバン使えるだろう、『魔法』にたどり着くための研究もやりたい放題だ。

 君にもこの調査に参加してもらいたかったけど意地っ張りだから絶対に来ないだろうね、でも君たち本来の研究じゃ確実にこの先が長くないのはわかってるはずだよ、だから…


 ううん、この話は置いとこうか。

 あとは君たちが懸念していた魔素の中毒症状について


 一応、この調査が始まる以前から中毒症状についての問題提起はなされていたけど、臨床結果と実地の濃度量から鑑みて一般の学生なら一か月、異能者達は一週間までなら問題ない、ていう結果になった。

 ただ、個人によって差が出るみたいだから油断はできない、とも言える。

 だから、これからも彼らの健康管理には十分に注意することにするよ。


 後は現地の魔物、いや『魔法生物』に関しての報告がいくつか

 他の、主に戦闘班と呼ばれる調査員たちからもたらされる情報とサンプルから得たものは、現地の魔物と言われる『魔法生物』はこちらの『魔物』とは似ても似つかないモノだった、と言う話を聞かされたよ。

 そもそも、ゲームみたいに倒したら素材だけ残してあとは霧のように消え去るわけじゃなく、自分ではぎ取ったみたいだから、まあ調査員の人たちはご愁傷さま、といったところだね。


 私の班はもっと凄惨な現実を目の当たりにしたみたいだけど。


 今回も取らされたサンプルを無関係な生物学の教授に渡してみたときの話だと、『見たこともない進化を遂げてはいるが、これは現存する生物の突然変異か何かかね?』だそうだ。

 彼には汚染された地域で発見された新種の生き物だって説明したけど、きっと中らずとも遠からずといったとこだろう。


 もしかしたら君の懸念したとおりに人体にも少なからぬ影響を与えるかもしれない、中毒症状も…

 あまり憶測で話をするのはさすがにまずいか、もう少し明らかになるまでこれは保留ってことで。


 次はあっちの文化レベルに関して


 この遠征計画が始まる以前からある程度わかっていたことだけど、どうやら中世の文明で停滞しているみたい。

 奴隷なんて普通に存在している世界だから当たり前、なのかな。

 私の専門外だから詳しくは知らないけど。


 ただ、やっぱり地域によってそれなりに多様な文化を所有しているみたいだね。

 うちの班の報告によると、侍、なんて日本の中世近代文明に類似した文化圏もあるみたいだ。

 世界の広さもおそらくだけどこっちとさほど変わらないだろうから他にも多様な文化を見られるだろうね、楽しみだ。

 

 なんで中世文明のあたりで技術関連も止まっているのか一つ、個人的な考察を記しておこう思う。

 といっても考えればすぐに思い至るような安直なものだけど

 あちらの世界における文明の利器と言えるもの、要はこっちの機械の役割をしているのが魔法、ということなんだろう。

 君のことだから軽々しく魔法なんて言葉は使うなって怒りそうだけど。


 それは置いといて、今の機械を中心とした文明に呼応するように文化水準も高まってきている。

 逆説として科学技術が発達しない限りは文化水準も伸びることはない、ということかもしれない。魔素を際限なく使えるあちらでは機械に頼る必要はなく、よって文化も中世のあたりで停滞してしまったということだと私は思う。

 それが偶発的なのかそれとも…判断しかねるのが何とももどかしい。


 まだあちらは不思議と疑問に満ちていて科学者精神をくすぶられる。


 っとあともう一つ、あちらの種族関連の話ね

 といってもこちらはまだ時間かけないとわからないことがたくさんあるけど、わかった範囲で言えば。今確認されているだけで3種類までは異種族が確認されているくらい。

 もしかしたらまだ見ない種族も存在するかもというのもあるね。

 まだ未開の土地があるみたいだから、そこに期待してもいいんじゃないかと思う。



 嗚呼、そういえばもう一つサンプルが手に入ったのを忘れてたよ。

 ヒト型(・・・)魔法生物のサンプル、こっちは国にはまだ届けてないから手元にあるんだ。

 専門家の意見も聞きたいしこれを君に贈ることにした。

 自らの研究材料にしてもいいけど、何かわかったらちゃんとこっちにも情報回してね。




 今度は文面じゃなくて直に会えたらうれしい。

 君に言うのは酷かもしれないけど、体調に気を付けて日々を過ごしてね。


それじゃ、また


※『霊感青年君』に渡したデバイスだけど、一寸意匠を凝らしすぎていろんな機能取り付けちゃったけど問題ないよね、あれ自体は一種の補完装置に過ぎないんだけど


                              Dear magus


From M



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「さてと、これでいいかな。」


 一応誤字がないか確かめてみるけど、きっといくつか漏れ出るだろう。

 完璧なんて言葉は幻想で、歪な状態こそが自然なこの世界で、それでも追い求めるのが人間で。

 そんな話はどうでもいいか。


 そのまま、封筒に調査報告、という名の個人的な手紙を入れて切符を貼る。

 あとは近くのポストに入れれば、近日中にあの子の元へ届くだろう。

 ただ届いたからといってすぐに読んでくれるかは分からないが。


「少しは心配するこっちの身にもなってほしいよ、全く。」


 いつ死んでもおかしくないことを平然とやってのけるものだから、逆に案ずる側のほうが寿命が縮む思いをする、というのは些か滑稽に思えた。

 

 それよりも早く届けてしまおうか、時間も押してきていることだしね。

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