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W・E s ワールド・エンカウント ストーリー  作者: ムラツユ
World Examiner begining ~異なるモノ達~
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travelers rumor

 さすがにこの町に一つしかない食堂なだけあって賑わいが他とはちがって、様々な職業の人が出入りするの姿がよく見えた。

 特によく見るのは、冒険者や商人といった町の外で働く人々だ。

 彼らがこぞってこういった大衆食堂で昼を過ごすのは、大きい要因の一つとして情報交換のしやすい場である、というものだろう。

 つまりここは情報が集まりやすく、そして手に入りやすい場所でもあるということだ。

 まあその分ガセネタだったりいらない情報もよく耳にする場所でもあるのだが。


 閑話休題そんなことはおいといて

 店長の許可も無事とれたことだし、早速聞き込み作業に入る。

 カミュはまだ現地語をマスターしてないのでもっぱら俺が聞き込むのだけど。

 さてここから先はちょっとしたダイジェスト版でお送りしよう。



 とある気弱な新米冒険者:

 え、ぼ、僕のことを呼んだのかい?

 話を聞きたいだって?そんなことを言われても見ての通り最近始めたばかりで、逆に人から教わることのほうが多いくらいだよ。

 世間話でもいいからって言われてもなぁ…て、そこのお嬢さんはなんでそんなにこちらを睨み付けているんだい?

 わかった、わかったからそんな目で見ないでくれ。

 でも何を話したらいいか、そうだ。

 僕は最近冒険を始めたんだけど、一寸した理由があるんだ。

 理由といっても、単純なあこが…待って!?もう少し話させてよ!?


 僕の出身の国はずっと魔物被害や亜人の侵略行為なんかで悩まされていてね。

 そこで王様が一大決心をして、勇者召喚の儀を執り行うことにしたんだ。

 一口に勇者、といっても彼らが僕たちの国に何をもたらすかはわからないんだ。

 過去にその力を使い世界を平定したとも、逆に混沌をもたらしたとも伝えられているんだ。

 それはもう、国どころか世界を巻き込む大ばくちだったって後の王様も口にしてたよ。

 そんな心配とは裏腹にでてきたのは僕よりも貧弱そうな少年だったみたいで当時は国中が気落ちしたものだ。


 でもその少年は時が経つにつれメキメキと力を伸ばしていってやがて魔物の大軍を一人で追い払ったり、亜人との交渉の席を作って和解したりと小さかった僕達の国を大きく強いものへと変えていったんだ。

 まだ亜人との仲はぎくしゃくしてるけど、そのうちわだかまりも無くなって本当に一つになる日もきっとそう遠くはないはずさ。


 そんなわけでその勇者様は今では国をあげての英雄になっててそれにあこがれて冒険者になる子もいっぱいいるみたいだよ、僕みたいにね。

 できる話といえばそれぐらいかな。


 それにしても銀髪のエルフなんて珍しいね、僕惚れちゃいそうだy(ry



 やけに腰の低い商人:

 おや、どうなされました?

 なになに、ワタクシめに聞きたいことがおありで、なるほどなるほどあなた方が異界からの使者、というわけですな。

 おやおやそんなに警戒されてどうなされたのです。

 嗚呼、『まさか、自分たちのことがわかるのか』といった感じですね…図星ですか。

 いえいえ、そんなありえない話ではないんですよ。冒険者よりも商人のほうが耳が聡くなるものです。

 それに我々のようなものは横のつながりを何よりも大事にしますんで、特に同じもの同士のつながりはね。

 できれば情報料を取りたいところですが、今回ばかりはサービスといったことにしましょう。ここには怖い怖い、番犬さんが鼻をきかせてますからねぇ。


 そうですな、変わり種として、こんな話はどうでしょう?

 今この大陸、いや、あなたたちには『世界』といったほうがいいでしょうね。

 ここには、大きな国が四つそのうち1つが海の向こうに確認されています。

 さて、先程聞いたと思いますがそのうちの一つが今代の勇者を召喚したアトラ、という元小国、今ではアトラ連合国と言われるいくつかの部族、都市国家が手を組んでできた国でございます、今後の動向が一番気になる国ですね。

 それに対抗するように元からありましたハイマン帝国も富国強兵を行いまして。一触即発まではいかないまでもかなり険悪な関係見たいですねぇ、なんせ真逆の思考を持った対立国でございますから。

 個人的にはハイマン帝国に勝っていただきたいものです、そのほうが商売が楽に…ああいえこちらの話です

 ああ、ちなみにここはその両国の国境、その南端に位置しております、怯えなくても大丈夫ですよ、

 ここまで戦端が開かれることはないでしょうしここは緩衝地帯の上にただの交易拠点ですから、わざわざ攻め込んでまで手に入れるほどの戦術価値もありませんから…

 おっと、どうやら時間が押しているようですそれでは私はこれで…はい?

 ああ、他二つの国について聞いてないと、そうですねぇ、他二つについては私も詳しくはないんですよあそこまで行くだけでなかなか骨が折れるもので、ただ他二つは亜人たちが支配している国、らしいですよ?

 



年配で重装備の冒険者:

 お、お前さんはあの時大立回りした坊主じゃねぇか、なかなか面白かったぜ、あとでさっきの技教えてくれよ。

 え?覚えてない?なんだ我武者羅でやったのか、そのわりには綺麗に決まってたけどなぁ。あれが使えれば生け捕りの賞金首でも楽々捕縛できるだろうに。

 え、なんだって?話を聞きたいのか?そうさな…あれだけ綺麗に決まった技なんだあれと似たようなモノ覚えていたら教えてくれよ。

 どんな感じだったかって言われると、ふむ。まるで人に羽が生えたように軽々しく背負ってそのまま叩き落した感じだったな。

 お、覚えがあるのか。よし、じゃあそれと交換条件だ。

 何、一寸したコツと基本的な動き方さえ教えてくれりゃぁ充分さ。


 さて、契約成立ということで何を話そうか。

 ん?どうした。俺の武器が物珍しいってか。

 いいところに気が付くねぇ、実はなこの剣、とあるドワーフの名工に直々に頼んで作ってもらった一品なのよ。

 そのおっちゃんが言うには東の終わりの国で得た技術をふんだんに使ったモノらしくて耐久力は心もとないがその分切れ味も一味違ってな。手入れさえ怠らなければ使い続けても永遠にこの美しさを保つって言われたよ。他の細工も緻密でな、何でも知り合いに無理言って作って持ってきてもらったそうだ。なんてったかな、『ゴホウ』?つー魔術がかけられているそうだ。これもう家宝にするしかねぇな。

 ああ、すまねぇ、嬢ちゃんつい熱く語っちまったぜ。なんせ親友に俺たちの絆の証だ、なんてい言いながら誇らしげにもらったものだから自慢したくってよ。割とそっちの坊主はノリノリだったみた…

 

 おっとっとここまでにしとこうか、え、何ドワーフについて聞きたい?なんでまたそんな当たり前のことを聞くんだ。まあいいか。

 つってもほとんど常識的なことしかいえねぇんだけど、確かによく見るって程じゃないが町に一人はいるんじゃないかってくらいには生活に溶け込んでいるよ。

 まぁ、人前に出る奴が少ないのは童話にもされているくらいの大昔の戦争が原因らしいが、割と友好的だぜ。

 人によっちゃあ、いつもしかめっ面しているように見えて、そうだな今の嬢ちゃんみたいな感じだ。まあそれでおっかないって思っている輩もいるようだが、そんなことはねぇ、確かに俺の親友も頑固一徹なところもあったが腹割って話してみると、本当にいいやつばっかだよ。

 俺の知り合いの冒険者もドワーフと結婚して子供も生まれたってやつもいるし、なんだかんだで涙もろかったり、中には人の話に混ざりたがるドワーフもいるからな。

 なんだかんだで俺たちとドワーフは切っても切れない関係ってわけさ




 割とみんな気前よく話してくれたおかげでたくさんの情報を集めることができたのは僥倖と言えるだろう。

 途中色目でルーを見てきた冒険者とかなんか怪しげな商人とか、先程の騒ぎを見て柔道を教えてほしいって冒険者もいたが、本当に多種多様な人たちが集まるところだなと実感した。

 …あの、話に没頭しすぎて忘れてたりはしてないんでそんな目で見ないでいただきたいんですけど、カミュさん。


「イエ、別にうらやましいだとか、楽しそうだとか思ってないデスヨ?ええ」

「これからは気を付けさせていただきます。」


 さて、一番忙しい時期もすぎ、そろそろみんな片づけを終えて戻ってくるころだ。

 店の外にて待ち合わせて、街を歩き回りながら情報の共有をしようという話になっている。

 ただ一つ後悔があるとすれば、もう少しルーのウェイトレス姿を見ていたかった…、あとでカメラ持参してもいいか聞いておこう。

 

「すまない、待たせたか」

「いや、大丈夫だよ、お疲れヒノ。悪いな、途中で抜けちゃって。」

「気にするな、それよりも、いい情報はあったか?」

「そこそこかな、じゃあ情報交換しちゃおっか。」


 先程までの話を分かりやすく説明した後、今度はヒノとルーが聞いた話を聞くことになった。


「えっと、最近ここから少し東にある集落が略奪にあってなくなってしまった、というのを聞きました。…それが獣人の集落だったそうで、もしかしたら…」

「それがランちゃんの故郷かもしれない、ていうことか。そりゃたしかに下手に話せないな…。」

 

 東ということはおそらく、ハイマン帝国とやらに略奪もしくは強制徴収でもされたのだろうか。憶測の域を出ないが当たらずとも遠からず、といった具合だろう。


「それと、奴隷の扱いについてだが、最近、急激に変わりつつある、らしい」

「変わるってどんな風に?」

「何でも、恋愛の自由が認められた、とか、生活が改善しつつある、みたいだ。西からの、冒険者に聞いた話、だ」

「嗚呼、なるほど。それはさっき聞いた話と合致するなぁ…」


 絶対に、此処に飛ばされた地球人の仕業だろうな。

 きっと、綺麗な奴隷の一人や二人囲っていてもおかしくはないけど、そこら辺はどうなのだろうか?

 未だに隷属の腕輪が外れない俺としては気になる話だが…。


 ともかく初日とは思えないほどの収穫ではないだろうか、逆に初日だからこその量ともいえなくはないが、今の現在地とその状況が分かっただけでも目標にぐっと近づいたはずだ。

 問題は場所が分かっても、今の状態だと遠出ができないから得られる情報に限りがあることと、行方不明者と連絡ができない事か。

 それも時間の問題らしいから、気長に待つしかないわけでそれまではゆっくりと準備を整えておこうという話になった。


 のはいいんだ。いいんだけど。


「なんでまだステータス化されてないのさ!?」

「何でも、それに関する機器がそろえられなかったらしいっすよ?」

「そもそも、主任務が戦うことじゃないから、経費の削減したかったそうデス。ということで私たちもされてないんデスヨ」


 資本主義の弊害か、今回もなぜかステータス化もブーストもかかってないそうだ

 道理で調子がいつもと変わらないと思ったら。

 というかそこは支給されるものじゃないんですかそうですか

 そういえば、俺とルーは特殊な例みたいで調整が必要だとかそうでないとか聞いた気がする。

 …もしかしなくても俺のせい?


「ガッデム!!結局どこもかしこも金金カネか!」

「落ち着け、俺たちが、守ってやる」

「そ、そうです!ツナギさんは私たちが守って見せます!」


 二人のやさしさが心の傷に染みる…、

 でも違う、そうじゃない。

 この状態で外に出ると完全にお荷物になる自分が情けないだけなんです。 グスン


 とりあえず木之本さん、帰ったら直談判な。

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