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彼と彼女の恋空模様 終

突発的自己紹介

五織春

 木之本が連れてきた少女、異能者三人とも旧知の知り合いで、異世界の件にも一口噛んでいる。

 すでに思い人がいるようだが、結果は芳しくはないようだ。


風見隼

 異能者三人のうちの一人、カミュの本名。

 実は結構の人見知りなのだが、勝気な性格もあり初対面の相手には結構強く厳しめに応対している。

 それは不安の裏返しでもある、というのは彼女の理解者の談。 

 因みに今回集まった中では最年少である(高2)

「えー、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。メンバーとしては男女比3.3の六人…のうち一人所用で遅刻といういささかささやかなものですが、…要はパーっと楽しんで親睦を深めようぜってことでカンパ~イ!」


 主催である音羽の音頭とともにそれぞれが持つコップを盛大に打ち鳴らした。

 もちろん中身はノンアルコールである。

 すでにお気づきかもしれないがいま、女子の人数が少ない、何でも準備に時間がかかり先に進めてほしいとの言伝を、今回初めて会う少女が預かっていた。


「さて、とりあえず自己紹介だ、まずは俺、音羽 響、よろしくな!」

「そして経理担当の木之元雅紀菜だよ。よろしくね~」


 この順番から察するに先に企画組が紹介する流れの様だ、だがすでに準備は完璧いざ、参る。


「不肖ながらおれが発起人になってしまった仲秋つにゃ…!常義だ」


 完璧なんて言葉はこの世になかったよ…

 周りはもちろん笑いをこらえるのに必死…おいこらそこの企画者二人声立てて笑うな泣くぞ!

 

「ふふ、ごめんね。でもおかげで緊張がほぐれたよ、私は五織春(ごしきはる)、今日はよろしくねみんな。」

「いやほんと助かった、ああ僕は水瀬 巡ていうんだ、よろしく」


 ただ清涼剤にはなったようでその後の自己紹介含めてとても楽しく過ごすことができたのは不幸中の幸いだったのだろう。

 ただ―


「それで、その友達ったらひどいんだよ!いや病気みたいなものだから仕方ないとは思うんだけど、それでも限度ってものが―」

「最近一人の時間が減ってさ、パーソナルスペースっていうものどんどんなくなっていくのを感じて―」


 どうやら今回初めて会った二人はどうやら彼氏、彼女もちらしい。

 本人にそのことを聞いたら似たような反応で違うと豪語していたが、まあおそらくそうなのだろう。

 片やなかなか芳しい反応が見れなくてついかっとなって参加、片や一寸経験しておきたかったという軽い気持ちで参加しているが、状況は似たり寄ったりだった。

 ほら企画者ズ、涙ふけよ。

 俺としては、そういった話がメインで参加したのでなかなかに有意義だ。ついでだし彼らに聞いてみるのもいいかもしれない


「なぁちょっとききた―」

「すいませんデスイオリさん遅れマシ―ゲェ!」

「ん?-ああ!?」


 なんかいやな反応されたと思って声の方角に向き直ってみればそこにはゲーム(あの件)以降会うことが無かった、因縁深い?少女がこちらを見て固まっていた。



「ドーモ、風見隼(かざみしゅん)デス、コンゴトモヨロシク」

「シュン、どうしたの?なんかぎこちないけど…」


 ぎこちないのも仕方がない、仕事先での仲間と鉢合わせになったあげくその相手はひと悶着あった奴ならなおさらだ。

 こちらはもちろんあちらも気まずいらしく、いまだに一度も視線は合わなかった。一応同じ釜の飯を食った仲間なので、出来れば仲良くしたいのだが…。

 というか先程から木之元さんが訳知り顔で必死に笑いをこらえているのが見えて正直、そろそろ怒ってもいいかと思っている。


「っくくく、いやね春、この子たち最近バイト先(・・・・)で知り合ったばっかなんだよ。-ついでに親睦深められそうでよかったじゃない二人とも。」


 その言葉だけで、何かを察したのか五織さんはポンッと手を叩いて「ああなるほど」とこぼした。

 それだけで男性陣は騒然、特に音羽はいったいどこであったんだとヘッドロックをかけながら問いかけるし水瀬は水瀬で先程勘繰られたのを根に持っているのか下世話な目線でそれとなくついてくる。


「木之元さん!別にこんな奴と仲良くする気はないデス!てかこいつが来ると知ってたら来ませんでデシタヨ!」

「え、ホントに?ホントに?」

「シュン、いじわる言っちゃだめだよ。ホームであんなに―」

「ワーワー!!それは言っちゃダメデス!!」


 女子のほうは女子のほうでなかなか姦しくなっているが男性陣もなかなかカオスだった。


「とりあえず、仲秋よ…今知り合ってる女性関連全部はこうや…まずはそれからだ」

「イダダダダ、その前にまず離せ!締まってる締まってるぅ!」

「へーほー、いわゆるツンデレってやつだねー。ウンありだと思うよ仲秋。」

「だから違うッつ~の!」


それからというもの、

 やれお前らホントはつきあっているんじゃないかとか、やれこの中で独り身なのって俺だけかとか、やれ写真即売会やら

 それはもう話が東奔西走するかの如く飛んで跳んで飛んで最終的にカミュ、もとい風見がバテテ寝落ちするまで宴は続いた。

 あえてここでは誰が何を言ったのかは名言せずにおくのがいわゆる大人の気づかい、ということで。

 木之本さんは迎えが来ているとのことで先に離脱、五織さんとダウンしている風見はどうやら帰り道が一緒だということで大丈夫とは言われたのだが、さすがに夜中に女子二人、しかも一人は眠っているというのに心配するなというのは無理な話なので男子の中でくじ引きで正当に決めた結果が話の冒頭の状況と相成るのであった。




 そして今は最寄りの駅まで送っていく最中の道中。

 ふと、五織さんが呟く。


「でもよかったよ、こんなにシュンが生き生きしているところが見れて」

「生き生き、というよりは単に暴走もとい感情のままに怒っていただけに見えなくもないんだが」


 一応本人を背負っている状況でそんなこと言っていたらいつ攻撃が来るかわからないが、今は寝てるから大丈夫だろう。

 今なお幸せそうに、規則的な寝息をたてている少女を見ながら嘆息をこぼすと、五織さんは小さくこぼすように笑った。


「そんなことないよ、この子結構人見知りでさ、此処に来る前はちゃんとお話しできるか心配してたぐらいなんだから。ただ、今日は緊張しすぎて最後まで持たなかったみたいだけど」


 最後に「楽しみにしていたのもホントだよ」と付け加えて五織さんは微笑む。

 一瞬、鼓動が早くなった気がした。

 ただ、そう思ったのも束の間、彼女は真剣そのものの顔つきでこちらを見つめている。


「君も、カミュと同じで、あのバイトをしているんだよね。」


 ここでわざわざ名前を言い換えてまで話をするのだから何かしらの特別な話であるのは分かった。

 その話というのはもしかしなくてもあの、冗談のような仕事の話だろう。

 カミュと親しげだったのだから知っていてもおかしくはなかった。


「そうだけど、それがどうしたんだ?」

「あの仕事は、危険なことも多いっていうのはわかるよね」

「試験受ける前に一応確認はしたし、それに終わった後の話で理解はしている、つもりだけど」


 わざわざあんなよくワカラナイ機会を作って先に体験させようってくらいだからかなり入念に準備したものだということはわかる。

 それだけ、これからやらせることは失敗したらどうなるのかも、あれはおそらくクリアさせることを前提にしていなくて、わざと難易度を調整してその世界の厳しさを教えるためのものだったんだろう。

 …できれば、それで恐れをなして無茶なことをさせないために。


「それならよかった、もしまだゲーム感覚でやっているんだったら、すぐに止めなきゃいけないところだったよ」


 ほっと胸をなでおろしている彼女は、おそらくこの件にも一つ噛んでいることがうかがえた。


「ここからが本題なんだけど、出来ればこの子、ううんヒノやリュウのことも見ててあげてほしいんだ。」

「それは別にかまわない、けどどちらかというとこっちが面倒かけることになりそうだな…ハハ」


 これからのことを思うと苦笑いしか浮かばない、いままで一般人だった自分と、すでに一線を張っているヒノではその差は歴然だろう。

 正直お荷物になる未来しか見えない。

 それでも五織さんは心配ないといった具合でこちらを見ていた。


「特別なことじゃないよ、ただ、あの子たちが無理をしないように、要は見張っていてほしいだけ。」


 それくらいなら問題ないか、二つ返事で了承しようとすると、五織さんは続けて語る。


「ヒノたちは異能者だとか、超能力者だとか特別視されるけど、私たちと何ら変わりはないんだ。人に混ざって笑ったり、泣いたりすることだってできる。いまはみんな、臆病で話し方がわからないだけなの。」

「君のことは、この子たちからよく聞いたんだ、ヒノは友達ができたって喜んでいたし、リュウも悪い人じゃないって言ってた、もちろんこの子もね。だからどうか、これからも一緒に笑いあえる友達でいてあげてほしい。」


 真剣な眼差しで嘆願する彼女の様子から、どれだけあの三人が思われているのかが理解できる。

 彼女の願いとは別に、友人ができるのは諸手を挙げて歓迎すべきことだから問題ない。

 ちょっと趣向を凝らして恭しく頭を下げた。


「こんな俺でもよければ、こちらこそよろしくって言っても相手が違う気もするけど」

「ふふ、よろしくされちゃったから、私たちももう友達だよね」


 お互いに笑いあいながら歩いているといつの間にか駅へと辿りつく、すでにホームと呼ばれる駅の近くでは迎えが待っているらしく、此処で別れることになった。

 未だに目を醒まさないカミュをそっと五織さんに預けて、別れの挨拶を澄ましたらそのまま踵を返す。

 唐突に五織さんが声をかけてきた。


「あのとき、シュンを助けてくれてありがとう!この子もかっこよかったって言ってたよ。それだけ言っときたかったんだ、それじゃ!」


 その言葉に一瞬だけぽかんとしていると、五織さんはその反応を見て満足したのか満面の笑みでカミュを背負ってそのまま乗車口へと降りて行った。

 ようやく思考が追い付いた時には、すでに彼女たちの姿はなかった。

 過ぎたことをくよくよしてもしょうがないので、そのままきろへとつく。

 ふと、大事なことを思い出した。


「あ、そういえばルーのことを聞くの忘れてた…」


 どうしたものかと頭を抱えていると着信音がなる。

 見てみれば木之元さんからのメールだった。


「なになに、『君の知りたいことは、家に帰ればわかる』…なんだこれ」


 ルーの話だということは察せたものの漠然としすぎてほとんどわからなかったが、そのまま足を動かすことしかできなかった。




 「ただいまー、つってももう寝てるだろうな」


 なんだかんだで帰りは深夜に近い時間帯になっていった。ルーもこの時間なら帰っているだろうが、下手すると帰りが遅くてもう布団にくるまっているかもしれない。

 そう思っていたのだが、奥の部屋には煌煌と明かりがついていた。

 様子を見てみるとちゃぶ台に突っ伏すようにして眠りこけているルーの姿あった。


「またせちゃったか…ルー、起きろー風邪ひくぞー」

「うう、あ、お帰りなさいツナギさん、今日は遅かったですね。」


 眠りが浅かったのかすぐに目をこすりながら体を起こす。


「スマン、少し興が乗っちゃって、ついでに送り迎えももやっていたから。待たなくていいって先に言っておくべきだったな」

「いえ、構わないですよ、それに私も用があって待ってたんですから」


 「ちょっと待っていてください」と彼女は言い残して部屋を後にした。

 用事…用事…もしかしてわたし付き合うことになりました宣言か、今からタクミに電話なり呼び出すなりしてくるのか…!

 不安と葛藤に身をよじらせているとひょっこりとルーが戻ってくる、あたりには人影はないし電話も持ってきていない、代わりに綺麗にラッピングされた小箱が大事に握られていた。


「ツナギさん、今までありがとうございます」

「あ、嗚呼、どうしたんだいきなり。」


 知らず、息を呑んで彼女の言葉を待った。


「あの、このバンドのお返しをしていなかったので、粗末なものですけど私からもプレゼントをしたかったんです。受け取ってくれますか?」


 そう言って彼女からその小箱を手渡された。


「え、いや嬉しいけど、これどうしたの?」

「この一週間働いて稼いだお金を使ったんです。どんな仕事をしているかは言えないですけど、まっとうな、私にはもったいない仕事ですから大丈夫ですよ」

「てことはなにか、今週から一人で出かけていたのは仕事をしてたのか?タクミと付き合ってたんじゃなくて」

「いえ、両方です。」

「!?」

「仕事終わった後に、プレゼントを買うためのお店を一緒に探してもらったんです…あれ、どうしたんですか?」

「なんでもない」


 彼女の言葉を聞いた瞬間ついちゃぶ台につんのめってしまう。

 アイツ、付き合うってそういうことか…!謀られた…今頃高笑いしているに違いない。

 けど、あの雰囲気は真剣なものだったからおそらく好きだというのは本当、なのだろう告白はまだだろうが。

 すとんと今まで喉元につっかえていた疑問が解消されて、途端に体から力が抜けていくのが感じられていく、ついでに力ない笑みもこぼした。


「そ、それでですね、これからも何日かおきにその仕事を続けていくことになったので、これからは私も生活費、というものを払わせてもらおうと思っているんですけど…どうして笑っているんですか?」

「いや、一寸愉快なことがあってね、思い出し笑い。別に気にしなくてもいいよ、まだどうにでもなるし」

「いえ、払わせてください。頼りっぱなしというのは嫌ですから」


 なかなか強情な性格だからおそらく何を言っても無駄だろうと早々にあきらめる。

 

 今日も今日とて日が巡る、人の思いを託して託されて、また今日のような日々が続くことを祈って、今の立ち位置に満足する。

 彼女の思いはわからないけど、それでもいいかと思う今日この頃。


「これからもよろしくな、ルー。」

「はい、ツナギさん。」

これで、閑話終了です

次からは第二部に入りたいと思います、コンゴトモヨロシク

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