彼と彼女の恋空模様 下
突発自己紹介
音羽響
東都技術総合大学に通う青年
ちゃらめというよりは小悪魔系の男女問わず人に好かれやすい性格アンド容姿
そんな彼だがもちろんDT
将来の夢は世界レベルで歌で大成すること。
彼女募集中
木之本雅紀菜
人懐っこい猫のような性格をした少女。
普通科に通っているが、得意分野は機械工学、というよりはその博士号を持っている。
子供のころに大けがしたものの無事生還したという裏話がある。
普通科を専攻したのは一度だけ普通の大学生活を送りたかったからともいわれている。
「あのさ、ルー。」
「はい、どうしましたか?」
今日も同じく彼女は遅めの時間まで出かけて巧みに連れられて帰ってきた。
二人には一言も二言も申したいし、何よりいったい何をしているのかを尋ねたいとも思ったこともざらにある。
「その、さ。なんか無理してたりとかしてないよな」
「-ええ、大丈夫ですよ。毎日充実した日々を過ごさせていただいています」
「…そっか。だけど嫌なことがあったらすぐにいってくれよ?その、大事な…親友なんだからさ」
「-はい!心配をかけるかもしれませんけど、これからもよろしくお願いします」
「-ああ、よろしくな」
でも、やめたのだ。下手に詮索しても何も得ることはないだろうし、アイツの性格上もしひどい目にあっていたら助け出すだろう。
別に彼女をあきらめたわけではない、ただどっしりと安心できるように構えることにしたのだ。
人生の先達から得た訓示をもとに自分なりに考えた結果である。
もし、ルーとタクミが結ばれることになっても、それが彼女のためになるなら―
◆
「いいわけないだろおぉぉ…」
失礼、未練たらたらである。
詮索もとい、捜索を打ち切ったのも手掛かりが一つもなかったからで完全にお手上げ状態なのが理由だし、どっしり構えるのは最後の男のプライドでもあったから納得はできる
だけど福井さん、あきらめるのだけはたぶん無理だ。先生、このままだと後悔だけを胸に秘めて余生を過ごしそうです。
何とかルーの手前で恥はかけないと家を出るまでの間平静を保ちながら大学へ向かい授業をこなしていたものの、最後の最後で緊張の糸が途切れて一気に気分が沈んだのだ。
キャンパスにあるそこそこ広い、野外ホールでいきなり機構に走ったため周りは引いている気がしなくもないが、そんなことはお構いなしにうなだれていた。
今更人の目線気にしてもしょうがないので発散して帰るころには体裁を保てるようにしなければ。
「おいおいどうしたよ?そんなこの世の終わりような顔をして」
そんな折、唐突に声をかけられる、振り向けばそこには大学初の友人-音羽が立っていた。
「なんだ、お前か、いやなんでもないさ。少しばかりこの世の無常をかみしめているんだ。」
「なんだとは心外な、てかそんな儚いこと考えてると早く老けるぞ。」
それは勘弁願いたい、男は年を重ねたほうが味が出るとか言うものの、この年でおじさん見たくなるのだけはいやだ。
「それで、いったいなんでそんな黄昏てんのよ。俺にも相談して見なって」
それはもうあけっぴろげに、いつでもウェルカムといった感じで手を叩いている。
その姿に、一寸相談してみようかと気持ちが揺らいだが、すぐに今までの現状を思い出し口を閉じた。
経験則から、人に異性との付き合いかたを教わるのはタブーだと刷り込まれたのだ。
…聞いた人がいけなかった気がしなくもないが、それはそれ、深く考えてはいけない。
いやでも音羽ならそういうものにも詳しい気も…
考え込むこと数分、意を決して頼ることにした。
「フーン、異性の付き合い方ねー」
「あ、いや無理に聞こうとは思わないんだ、こういうテクニック?て人に教えたら効果薄まるものもあるみたいだし」
ひとまず防衛線を張って、牽制をしながら退路を確保するのも忘れない。
何事においても逃げ道というのは重要だ、勝負所ではない限りわざわざ正面から出向くことはないというのは持論の一つだからだ。
しかし、音羽は少し考えるそぶりはするものの、以前の二人のような豹変ぶりは見せない、これはもしかしたら期待できるかもしれない。
そう考えていた時期が私にもありました。
「スマンが、俺には教えられそうにないな、」
「そうか、いやありがとう話だけでも聞いてくれて」
ちょっと期待が大きかっただけに落胆の幅も大きい。
しかし、そのまま話を切り上げ別の楽しい話題をさがしていると、音羽が待ったをかけた。
まるでまだこの話は終わらせはしないと躍起になっているようだ
「教えはできない、がそこで一つ提案がある。」
「なんだ?」
「習うより慣れろ、だ。一緒に合コンいかねぇか?」
なるほど合コン、合コンか…
「へ?合コン?」
「そうそう、人が集まらなくてまだ一度もやってないからな。まあさすがに大学始まったばっかだと時間の都合がつかないこともあるだろうってことで先送りにしてたんだよ。まあでも求める声が出たからにゃあやるしかねえよ、お互いのことを知るには場を設けるってのが一番だからな!」
音羽はとても楽しそうな顔でこれからの予定を考えている
「いやいや待てよ!そこまでしてもらわなくても、というか俺も気後れしてうまく話せないかもだし」
「-なら余計に荒療治が必要だね!」
「「うおわぁ!?」」
突然ひょっこりと、俺と音羽の隙間から飛び出してきた幾分か小柄な影に二人して驚く。
いったい何奴だと思って顔をうかがってみれば、最近姿を見せなかった木之元さんの姿がそこにはあった。
「きき、木之元さん、いつからそこにいたんだ!」
「いつからって、君が『いいわけないだるぉぉおお』ってムンクのポーズしていたところからだよ」
ほぼ最初からじゃないか、現に彼女は先程の様子がツボに入ったのか必死に笑いを抑えている、なんたる不覚…!
「ところで木之元さん、何か用があってこっちに顔を出したんじゃないのか?今ちょーっと女性には聞かれたくない話をしているんだ」
音羽は極めて穏便にお引き取り願おうと木之元さんに少しの間離れて欲しい旨を伝えた。
それでも木之元さんは訳知り顔で、得意げに言葉を紡いだ。
「ふふん、合コンでしょ?私も興味あるんだ何なら女子はこっちで集めてくるけど、どうする?」
何、だと。こいつにそれだけのコネがあるというのか…(失礼)
「マジでか!いやマジですか!?木之元さん」
「マジマジ、大マジよ」
「さすがだ、木之元さん、いや木之元大明神様!!」
音羽は音羽で望外の助っ人に感極まっているようで正直話にならない
「まずは、うちのクールビューティ担当のクーちゃん!君も一緒に…」
そこまで言い切ると途端に声量がしぼんできた。
なぜかというと件の少女、クーさんはすでにこの場にいないからだ、ついでに言伝も頼まれたのでそれを伝えることにしよう。
「あー、悪いんだがその子は『彼を探しに行くから、此処でお別れ』って言ってどっかいったぞ」
「親友が冷たい!」
確かにクールだったな。親友に対する態度も冷たいぜ。
そんな木之元さんもすぐに復帰したかと思うと黒い笑みを浮かべている。
「…後でその彼にクーちゃん嬉し恥ずかし秘蔵写真を売りさばくとして、一先ず何人くらい集めればいいのかな?」
お前ら本当に親友なのかと疑問に思うが、それで本人たちが納得しているならあえて何も言うまい。
そんなどうでもいい考え事をしていた最中にどうも商談がまとまったらしく二人は熱い握手を交わしている。
「て、一寸待て!俺は参加するとは言ってないぞ!?」
いつの間にか自分も計算に入れられていたことに待ったの声をかけた
しかし彼らは取りつく島もない。
「発起人が参加しなきゃ拙いだろ?大丈夫だってオレがリードしてやるから」
「そうそう。これを機に女性の付き合い方とやらを身につけなきゃね」
くそう、二人とも、少なくとも一人は善意でやってくれているからなおさら断りづらい。
だが俺にはルーがいるしけど付き合ってはいないし、ああもう頭がこんがらがってきた!
そんな俺に最後の一押しがかかる。
「そのお金はこっちで持つし、知りたい情報教えてあげるよ?」
「行きます、行かせてください。」
こうして急遽週末に予定された発起人俺、主催音羽、経理木之元さんの合コンが開催する運びとなった。
…少し自分が情けなくなって涙で枕を濡らしたのは完全に余談である。
◆
そして当日、会場となる駅前商店街のファミリーレストランにはまだ集合時間一時間前にすでにその近くで人の字を手のひらに書きながら待機している青年の姿があった、もちろん俺こと仲秋常義である。
なんだかんだで楽しみにしているじゃないかと突っ込みがきそうではあるが、初めての集会による緊張と、後は男の性、ということで納得してくれると嬉しい。
そんな誰とも知れない人の共感を得ようとしていると、どうやら待ち人が着々と集まってきているようだ。
最近、どうも勘がよく働くようになって少し戸惑っているのだが、まあ有用ではあるからいいかと考えることを放棄している。
あとは単純に先程携帯が鳴ってそろそろ出発するという旨のメールを見たからでもある。
ぶっちゃけ後者のほうがあてにしていた。
その事もあって、人が来るのはもう少し先だろうと高をくくっていたのだが、どうやら早めに到着したのは俺だけではなかったようだ。
「-あの、もしかして今回ここで合コンを企画した人、ですか?」
確かに、集合地点で何かとそわそわしていたり人の字書いてたいたりする時点で関係者の可能性大だろうけど、いきなりそれは拙いのではないかと思う。
「木之元さんの知り合いなら、そうだけどそれを可能性大だからって見知らぬ他人に言うべきじゃないと思う、特に君みたいな少し小柄な子だと騙されてそのまま―」
「ちっさい言うな!それと僕は男だ!」
「え、うそぉ!?」
本日一度目の驚きである。確かに中性的な顔立ちで男には見えなくもないが、その背丈も相まって女の子だといわれても違和感はないほど。
とそこまで考えていったん思考を切り、彼女ではなく彼のご機嫌をとることにする。
今回は彼と音羽だけが頼りなのだから、ただ、この分だと逆に彼のフォローに入ることになりそうだと心のどこかで思っていた。
「というと、アンタも巻き込まれた口なんだ」
「まあ、相談したことが原因だから自業自得なんだけどな、その点は本当にスマン。」
実質彼も俺のまいた種の被害者なので素直に謝る。
ただ、気にしていないようで逆に笑ってドンマイ、と声をかけてくれた。
どうやら、彼もあの二人にはずいぶんと煮え湯を飲まされてきたらしい、いわゆる被害者の会に近い何かがここに結成された。…別に悲しくなんかなってない
と、どうやらじゃれあっていた内に時間が過ぎていったようで、今度こそ人が集まってきた。
未だに名前も言い合ってないものの後は合コンの時にでも、ということでいったん話を切って他のメンツと合流するのだった。
…すいません思ったより長くなったので次に続きます(土下座)