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彼と彼女の恋空模様 中

突発的人物紹介

主人公 仲秋君

 顔は悪くはない、むしろイケメンなのだがお家事情と、とある噂が重なり、最近まで彼女どころか友達もいなかった一寸残念系イケメンもちろんDT

 そのため恋愛といったものには疎く、その割には恋に忙しい19歳大学生活をエンジョイ中

 狙ったかのように地雷を踏み抜くが本人に悪気はない。


先生

 主人公の師匠的存在。DT。

 今まで惚れた腫れただの話には縁のない生活(本人談)をしてきたためそういったものには疎い。

 今なお海外で連絡のつかない友人の心配をしている。

 ときどき「なんでこんな奴と友達になったんだろう」と愚痴をつぶやく姿が垣間見れるがすぐに頭からなくなる。


福井さん

 主人公が働いているバイトの先輩、sy(ここからは血でよく見えない)

 とにかく人の話を聞くのがうまくていろんな人から相談を持ち掛けられる。

 ときどき自らの過去の過ち()を思い出しては壁に頭をこすっている。

 妹がいるらしいがその子には、自らの失敗談からよくアドバイスをしている

 その日、どうやって帰ったかは記憶にはない。

 ただいつの間にか家についていたらしく、いつまでも反応が鈍い俺をルーエが心配そうに見つめていたところからようやく頭が回転し始めたのだから情けない。

 タクミの言っていたことが本当なのか喉から手が出るほど欲しい情報ではあるのだが聞くに聞けない、本当に、情けない…。

 どうもぎこちない感じが彼女にも伝わったのか、気を使った結果なのだろう彼女のほうから話が出た。


「そう言えば、ツナギさん」

「お、おう!?なんだどうしたなにか用事でも思い出したか」

「用事…そうですね実は、一人で外出する機会ができると思うんです。」

「ひひ一人!?…それはさすがに危ないんじゃないかなぁ…ウン」

「ツナギさん、さすがにひどいです、いくら私でもいろいろと覚えてきてますから!」


 彼女の負けず嫌いの精神に火が付いたのかこちらに詰め寄り言葉を撤回させようとしてきた。

 その前に


「近い近い、落ち着けって俺が悪かったから」


 それだけで満足してすぐに定位置に戻る。

 本当に心臓に悪い。


「それに本当に一人、というわけではないんです。ただツナギさんとはいけないというだけでちゃんと他の方が迎えに来てくれますし。」


 その言葉が、今の俺のガラスの心臓に突き刺さる。ガラス云年は比喩だがそれに近いダメージを受けたといってもいい。

 何とか取り繕いながら、彼女にその相手を尋ねようとしたのだが―


「そ、そうか、ところでそのあい、愛、相…は」

「え、すいません。よく聞こえなかったんですけど…」

「…何でもない」


 結局は踏ん切りがつかなくてその場を濁して終わったのだった。



「お願い助けてmy teacher!」

「なんかいろいろと混ざってないかい仲秋君?」


 その宣言通り彼女はその翌日には一人で、正確に、具体的に言うと…!あのコンチクショウのヘチャムクレ…ゲフンゲフン、タクミに連れられて朝早くに外出してしまった。

 一人寂しく学校に通いそして早めに家に帰ったものの彼女の姿はどこにもなく、いろいろと不安になったものの彼らがどこに行ったのか皆目見当がつかなかったので最後の頼みの綱として親愛なる我が師匠に啓示を賜りに彼の城である小さな病院の院長室まで来たのだ。


「いやあの、仲秋君、僕だって万能じゃないからわかる事とわからない事だってあるんだよ?」

「神は死んだ!」

「あまりに焦燥に駆られて人としての軸がぶれまくってるよ、一旦落ち着こうか。」


 先生の懸命な説得により落ち着きとキャラは取り戻したものの、結局のところ何も進展がないのはつらいところだ。


「そもそもなんで僕のところに来たんだい?他に僕より詳しい知り合いはいなかったの?」

「それは―」


 一応先にヒノには電話で聞いたのだ。しかし彼でもどこに行ったのかはわからなかったそうで、次に大学に通っているはずのクーさん、と最悪木之元さんに話が聞けるかもしれないと探したのだが結局スケジュールが合わなかったのか出くわすことはなかった。

 当の本人達には話は聞けなかったしで、それはもう藁にも縋る勢いでここを頼ることにしたのだ。

 その旨をぼかして先生に伝えると一つ大きなため息をついた。


「関係者でも知らないのに僕が知るわけないじゃないか。…一応聞くけど誘拐とか物騒な話じゃないんだよね?」

「あ、はい。そういった話ではないはずです。」

「そうかい…ならそのままでもいいんじゃないか?」


 それはもうあっさりきっぱりと両断した。

 そんなご無体な先生に何とか縋り付いてあくまで離さないように懇願する、ここ以外頼れる場所が無いのだ。


「いやでも、もしかしたら騙されているかもしれないじゃないですか!そこを何とか何か助言を!?先生探偵も兼業してるんですよね!?」

「だから僕に言われてもどうしようもないってば、探偵と言ってもただの真似事だし、それにそんなことしそうな人だったら何も言わずにあわせようとすらしないだろう、君の場合!」


 二人とも、此処が病院、しかも一人は自分で建てたというのに騒がしく言い合っていた。

 幸い、此処にはいま、患者どころか務めるナースさんさえいないので誰の迷惑にもならなかったのだが…病院としてはどうなのだろうか、とは誰もあえて突っ込まなかった。

 いやけが人がいないのはいいことなんだけどね。

 

「それなら、女性の付き合い方というものを伝授していただきたく存じます!何卒、なにとぞ!」


 その一言の後、一気にあたりが静かになった。

 というのも、今まで話に付き合いきれないといった逃れようと暴れていた先生が突如止まったからだ。

 何か不穏な空気を感じ取り自然と距離をとる。

 先生は、ただただ無表情で院長室にある自分の席にまで戻り、静かに座った。


「それを、女性の付き合い方について、僕に聞くのかい…?」


 先生は眼鏡を右手で定位置に戻すように持ち上げながら、いつにもまして強い威圧感をもってこちらを見つめ返してきた。

 これは久しく見ることのなかった、いや見たことないほどの大きな地雷だと瞬時に理解できた。

 早く撤回しなければ、巻き込まれる…!


「…と思ったんですけど、こういうのは人に聞くものじゃないんですよね。それj」

「まあ待ちたまえよ、ゆっくり話をしようじゃないか。」


 …どうやら地雷の撤去に失敗したようです。



 それから延々と、というわけではないがそこそこ長い時間を浪費して先生の語りに耳を傾けることになった。

 消費ではなく浪費と表現したのは、手掛かりがないにせよ探し回ったほうが効率が良かったかもしれないと思っただけである。すぐにそんな考えは切って捨てた。

 ちなみに内容としてはこんなものだった。

 ・高校の時に知り合った友達が何かとちょっかいをかけてきて、失敗することがざらだった。

 ・そのことを問いただそうとすると雲でもつかむかのように飄々と逃げ回り結局いつもうやむやにされる

 ・以下エンドレス

 これが今の今まで続いているのにもかかわらずその友達と縁を切らないのはひとえにその友達の人柄ゆえかそれとも先生の人徳か、そこはまたややこしくなるので聞きはしない。

 そして今は―


「ホントにアイツと来たらまともに連絡をよこさないでこっちからしようにもつながりもしないんだ。こっちがどれだけ心配しているか知っているくせに」

「先生落ち着いてください。話が明後日のほうへと飛んで行ってます」

「え、ああすまない、一寸熱く語りすぎたようだ」

「…ぶっちゃけそこまで身になる話はなかったですけど」

「何か言ったかい?」

「イエナンデモ」


 やっと先生の意識が現世に戻り話が終わったところである。

 …一徹してほとんどが愚痴だった気がするが先生もまた溜まっているのだろう。

 心の中で同情の涙を流しながらそっとその場を後にする、これ以上は長居はできないという判断からだ。


「仲秋君、最後にいいかい?」


 先生は去り際に声をかけてきた。

 その様子が先程とは違ってとても真剣なものだったためその場で立ち止まり話を聞くことにした。


「あの、なにか?」

「僕個人の意見を言ってしまうと、このまま、君とルーエちゃんの関係が終わるのは一番いいと思っている。なんだかんだで後腐れがなくなるし。」

「先生、まだその話を引っ張るんですか?それだけなら―」

「けれども」


 -帰らせていただきます、と言い切れず先に言葉を被された。


「確かにそのほうが君は普通の人生を送れる、気づいているかもしれないけどその目だってそろそろ再発しかねないんだ。でも君が最後まで関わるというなら止めはしない。ただし、その最後、何があっても胸を張って後悔ばかりをしないと誓えるならね」


 昔、後悔のない生き方なんて出来ない、重要なのはどれだけ後悔してもそれでも前を向いて歩むことだと、以前にも何度か先生に聞かされたことの一つだった。

 この話を今持ってくるということは、それだけ真剣に問いかけているのだろう。

 だから俺は、誠心誠意を彼にぶつけるように答える。


「もちろん。誓います」


 そう答えた時、先生はどこか諦めた様子でけれども、旅立つ我が子を見送るような優しい笑顔を作る。


「そうかい、なら心配はないさ。大事なものっていうのは手放そうと思わない限りずっと離れないから。それだけ言っておきたかったんだ。」


 それだけ話して、先生は自らの仕事に戻る。

 俺は軽く会釈して、小さく「ありがとうございます」とだけつぶやいてその場を立ち去った、

 その言葉が先生に届いたかどうかは、わからないまま。

 



 時間は移ろい、また別の日、ユニクロの夕方バイトのに行った時の事、この日も彼女はどこかに例のやつと出かけてしまい一人寂しく大学生活を送った後のこと、周りの医大生からよくよく話しかけられ具合が悪いのかと心配されたのは正直嬉しかった。

 今度は自分から話しかけようと奮起した今日この頃。

 まあ例のごとくバイト先の先輩である福井さんにも心配されて休憩時間に相談に乗ってもらったのだ。

 周りの人達がいい人たちばかりでホントに恵まれているということを実感したのもまた別の話。


「ふんふんなるほどなるほど、せっかく彼女とラブラブ同居生活をしていたところにライバルが現れて大ピンチ!て感じなのね?」

「言い方が若干あれなのと少し誇大妄想しすぎなところを除けばそれであってます。」


 こちらが肯定したところで福井さんはうんうんとうなりながら何か考え事をしている。

 それがまとまったのか、突然目を見開いて口を開いた。


「とりあえず先に言っときたいのは、いったいどこのラノベ、いや乙女ゲーの話かな?」

「真面目な話、現実に起きた話ですよ福井さん」


 ゴメンゴメン、とすぐに謝罪の言葉帰ってきたことからちょっとした場を和ます洒落のつもりだったのだろう。

 それとは別に、そう言いたくなるのもわかる気がした。どこの時代外れのラノベだよ、と明らかな天丼なのでここまでにさせてもらおう。


「それにしても、ホントに君の話を聞くと妄想がとまらnゲフンゲフン、もとい話が面白いよ」


 なんかまた心の言葉がこぼれていた気がするがあえて無視する。それが大人の心得の一つだと最近思うの。

 どうせだから、彼女にも聞いてみようかとあの話を振ってみることにした。


「ところで福井さん、出来れば女性との付き合い方を、女性視点からご教授してほしいんですが」


 また、この場の時が止まった錯覚を覚える。

 また、また地雷ふんぢゃったんですか(震え声)

 がっしと両肩をつかまれ、逃げ場さえ失った俺には、そのまま彼女の言葉を待つことしかできない。

 そして言葉が紡がれる。


「仲秋君、…いい?世の中に正解なんてあったとしても、有ったとしても!それは終わるまで、終わった後も最悪わからないんだよ…?」

「は、はい!ですから悔いの無いように馬鹿をしろってことですよね!!」

「それも、それも大事なんだ…。でもね時には人に合わせることも重要なの。締めるとこは締めて、ゆるめるところは緩める、それが一番大事。もし、あの時もっと区別ができていれば、アアアァァ嗚呼嗚…」

「福井さん落ち着いて!戻ってきてぇ!?」


 福井さんが闇堕ちしてしまった時間はあえてカットさせていただいて、ようやく正気に戻ったところからスタートさせていただこう。


「ゴメンね、わたしほかの女性と比べて、一寸、ほんのちょっとだけ変わっててさ。そういうのは相談に乗れそうにないわ」

「は、はぁ、わかりましたそれなら、仕方ないデスネ…」


 疲れた、それが第一声に出そうになるほど彼女のご機嫌取りは難しかった。

 普段、元気にふるまっている人ほど鬱に入ると壮絶なのだろうか。

 ふと、福井さんは

「まあ、一つだけ言うのなら、」

「はい?」

「男の子ならどっしりと構えていなさい。それだけで女の子は安心できるものだから、少なくとも私はね」

「どっしりって、何もしなくてそれで取られたら本末転倒ですよ」

「もちろん手は打ってから、それで今みたいに動向を気にするんじゃなくてゆったりと構えるの、もしそれでだめだったら」

「駄目だったら?」

「すっぱり諦めるのも男の甲斐性よ。次の恋でも探しなさい」

「そんな殺生な!?」

「その時は精一杯慰めてあげるわよ、私だけじゃない、君のことを大事にしているみんなが立ち直らせてくれる。だから、失敗を恐れないで彼女のこともできれば温かく見守ってあげなさい、それだけできっと伝わるから」


 そう言って、福井さんもこちらにやさしく笑いかけてくるのだった。

おそらく次で閑話が終わる、はずです

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