not alone but three,from now on
―どうも、自己中が服着て成長しただけの男こと仲秋常義です。
―前回は自分のせいでメンバーと内部分裂起こして、親友と新しくできた友達に見限られ、そのあげく小さな女の子一人巻き込んでしまったとです…です、です…。―
このままだといけないとは頭でもわかってはいるものの、自己非難のスパイラルからはそう簡単に逃げられない。
嗚呼、もう少しよく考えていたら、こんなことにはならなかったのに、
◆
あの後どうなったかと言えば、勇敢そうな青年の宣言通り、彼等は空いているだろう宿を探して連れだってどこかへと行ってしまった。
その時、マサトやルーがどんな顔をしていたかは覚えていない、というよりは気まずくて怖くて彼らの顔を見ることができなかったというのが正しいか。
隣でメイナは納得のいかなさそうなの顔で彼らを強く睨み付けている。と言っても怨嗟のこもった顔ではなく、あくまで自分は間違っていないと示すような子供が意地を張ったような顔だった。
彼らが去った後も気まずい雰囲気は残り、結局何も言えずにそれぞれ自らの部屋へと戻り就寝。
起きたらいつもの日常に、なんてことはなく現代家屋には珍しい木目が目立つ天井が最初に目に入り、すぐにまだこの世界から出ることができなかったと悟る。
自らの予感があたったことに、絶望とも何とも形容しがたい気持ちがこみ上げるが、それを呑みこみ朝の支度を済ませる。
それはおそらく、早ければ今日のうちに元、攻略組のヒノから何かしらの連絡があるだろうと見越してのことだったが、それ以外にも仕事に遅れてはならないという強迫観念も混じっているだろうとも察することができた。
こんな状況に陥っても自らのペースを崩れないように自己管理できていることに、つくづく自分はバイト三昧の日々になれてしまったんだなとあきれに近い嘆息をこぼした。
ずっと同じ服では職場の衛生上悪いということで昨日、店長から二人分の服をもらったので、それに袖を通す。
急遽用意した割には、サイズは申し分なくさすが仮想現実、こういったときには便利だな、とつぶやきながらもその他の用意も済ませる。
どこか、中世欧州然とした服装に身を包み、食堂へと降りる。
自らよりも早く起きたのか、店長がすでに厨房の中で開店準備を始めていた。
「店長、お早うございます、お早いですね。」
「おう!おはよう。自分一人で切り盛りしてきたからな、これくらいは日常茶飯事だ!」
豪快に、眠気が吹き飛ぶような大声で店長は挨拶を返す。
その声は周りの人間も陽気にしてしまうような、そんな活気を持った声だった。
「てんちょ~!?」
ふと、二階の個室から困ったような、伸びた声が聞こえる。おそらくメイナも起きてきたのだろう、しかしどうしたのだろうか?
「おう、どうしたちみっこ?何があった。」
「ちみっこいうな!それよりも服がダボダボすぎるよー!」
その声を聴いた店長は額に手を当て、「あれでも駄目だったか」とぼやいていた。
「え?店長サイズあわなかったんですか?」
「一番小さいのを渡したんだが、それでもダメだったらしい。まあなんとなく分かってはいたんだがなあ。」
ちょっと待ってろ、と店長はいい残して物置にもぐっていく。
―自分のは単純に運が良かっただけか、変なところリアルだなこのゲーム―
そんなことを誰もいなくなった厨房でしみじみと考えるのだった。
「ガハハ、すまんなぁちみっこ。あとは子供用のしかなかったわい、それで許せ!」
「うう、女としての尊厳を踏みにじられた気分だよ…」
そうは言いつつもサイズはバッチリ、ついでに容姿も相まってずいぶんと可愛く溶け込んでいる。なんというか、強く生きろとしか言えない、言えもしないが。
「まあそれは置いといて、お早う店長、ツナ兄!」
目の前の子供服を着ている年齢不詳の少女は、昨日と変わらない元気な様子で挨拶をしてくる
それを直視するのができなくて、つい目をそらして挨拶を返す。
「むー、挨拶するときは人の目をみて元気にって言われなかったのかな?ほらもう一回!」
しかし彼女はそれが気に入らない様子でしつこくやり直しを要求してくる。
「あー、わかった、わかったから!んん、お早うメイナ。」
「ん、それでよろしい。一日の元気は挨拶からってね!」
言い直してようやく、気を良くしたメイナは言葉の通りの元気いっぱいな顔をこちらに向けてくるのだった。
幾分か気が紛れたのもあって、今のうちに済ませておきたいことがあったのを思い出す。
早めに済ませたほうが、それでどう関係が変わるかは別として後腐れはないだろう、そう自分に言い聞かせながら、本心ではただ楽になりたい一心で謝罪の言葉を述べる。
「その、さ。悪かったな。勝手に巻き込んじゃって。」
その言葉に、彼女はきょとんと意味が分からないような顔を向け、一呼吸おいてようやく理解したのか「ああ」と納得して言葉を発した。
「昨日のことなら別にいいよ、私たち悪くないもん!」
「いやでも、俺が余計なことしなきゃ、孤立することはなかったんだ。しかも巻き込む形でお前まで一緒にな。」
そう、自分が余計なことに手を回さなければ、今頃苦労することにはなっても彼らに混じってマサトやルーといっしょにいられただろう。
メイナに関しては完全にとばっちりであることは明白だった。本当に自らの浅慮さが恨めしくて仕方なかった。
メイナはそんな俺の姿を見て尚も憤慨したように言い放つ。
「ああもう、うじうじしないの!別にツナ兄は一人でできることをしただけで、それ以外のことはしてないしできなかったんだから!」
それは言外に、自分はできることの少ない役立たずって言ってませんかね…?
いやその通りなんですけど。
「それにツナ兄は何もできないなりに私を助けようと頑張ったじゃん!それがケンカの原因になったとしてもさ!」
彼女なりに元気づけようとしているのはわかる。分かるのだが、言葉の端々にわざわざマイナス要素、しかも気にしているところを付け足されるおかげで、心にダメージを受けていくのだった
◆
そして、冒頭に話は戻る。
と言っても開店して客がまばらの中、負のスパイラルに陥っているだけなのだが。
「邪魔する…大丈夫か?」
「あ、はい大丈夫、ってヒノか。いらっしゃい」
声がしたほうへと振り向くと、フードを被った少し暗い雰囲気を醸し出している青年―ヒノがそこにはいた。
「何か、あったのか…?」
「はは、ハァ…そうなんだ。」
「…話を、聞かせてほしい。店主。」
それだけ言って伝わったのか、店長は二つ返事で了承する。
今度はそこまで機密な話し合いではなかったので、食堂の席を一つ使い、メイナも合流して一寸した会談に近いものが行われた。
「…どうしたんだ?」
単刀直入に今回の異変について聞いてくるヒノ。彼はどこか言葉足りずというか、口が達者ではないところはあるのだが、それでも自分のいいたいことをはっきりと言うその姿が好ましいと思う。
それはさておき何があったか、か…
「その、なヒノ。申し訳ない!」
徹頭徹尾、低身低頭で平にヒノに頭を下げる。
彼もメイナも、まるで意味が分からず時が止まったように静止しているがそんなものは構わない。いわばこれは、謝罪であって自分への慰めでもあるのだから。
さすがに頭を下げてからの―土下座一歩手前で慌てた二人に止められたのだが。まあ最後は悪ノリのようなものっだたから正直助かった。
「本当に、どうした!?何があった!?」
「ツナ兄!まだ引きずってんの!?」
―嗚呼、やさしさが身に染みるとともに、心にぐさりと入り込んでくる。ヒノ、本当にすまない。それとメイナ、俺結構引きずるほうなんだ―
ようやく、心も体も落ち着き先程の自分の痴態に感慨にふける余裕もできたころ、本題に移ることに成功した。
いくら時間がかかったかはまあ、自分が再起動するのにかかる時間を考えていただきたい。
そして昨日あったことを赤裸々に、事細かにヒノに説明する運びとなった。
ところどころ、メイナが相槌を入れたり、茶々をいれたりしたものの、ちゃんと伝わっているようだ。
「…つまり、待機組は、空中分散したわけか」
「いや、たぶんまだ団体行動しているんじゃないかな?リーダーがすごいカリスマ持ってたみたいだし。」
彼らはおそらく、今なおみんなで力を合わせて苦難を乗り切っているころだろう。
自分がその場に入れず、友人二人はきっとそこで偶像の如き扱いを受けているかもしれない。真相は定かではないが、きっと悪い扱いはされてないのは確かだ。
―そんな彼らに、俺は無様にも、醜くも嫉妬と羨望を禁じ得ないのが、情けない―
「ツナギ、一だけ、言っておきたい。」
「な、なんだ…」
重々しく、口を開きながら目の前の彼は言う。
つい、生唾を呑み込んでしまうほどの、緊迫した空気がその場にはあった。
あるいは、自分だけがそう錯覚していただけかもしれない。
そして、彼の口から声が零れ落ちる。
「…すまなかった。」
「…え?」
「俺たちが、いや俺が、あんな情報を教えたばかりに、お前たちを、孤立させてしまった。」
今度は、彼のほうが深く頭を下げてきたのだ。
「よ、よせよ。大体これぐらいはある程度予想はできていたはずなんだ。それを考えなかった俺が悪い」
「それでも、謝っておきたい、お前のためだけじゃない、俺たちのためにもだ」
言外に、お前もそうだろう?と言われているような気がした。
「なーんで二人して謝りあってんのさ!そんなことより、今からどうするかのほうが大事でしょうが!」
メイナが突然話に割り込み、断言するように言い放った。その顔は自分が話に入りこめないことに対しての怒りをたたえているようにも思える。
確かに、彼女の言う通りだ。こんなところで不毛な言い合いをするよりは、これからのことを考えていたほうがいい。
時間は限りがないように見えて、小さい区切りがたくさんついているかのように有限なのだから。
ただ、一番の年少に見えてしまう彼女が言っても、どこか無理をして背伸びをする小学生のように見えてしまい、それが微笑いを禁じ得ない。
目の前のヒノも同じことを思ったのか優しい目で少女を見ていた。
「何かなその目は!私は子供じゃないよ!」
「そうだなー子供じゃないなー、さてそれよりも、これからどうする、ヒノ?」
「流された!?」
隣でショックを受ける年齢不詳の少女を横目に、ヒノに問いかける。
正直、自分で何か考えるべきだとは思うが、そう簡単に思いつかないのがこの世の常だ。
せっかく境遇が違う学生が3人も集まっているんだ。『3人寄れば文殊の知恵』というぐらいだ。何か打開策も思いつくはず。
「まずは、情報が欲しい、なにか気づいいたか?」
「そうだな…一つだけ、言ってなかったことがあるんだ」
そうして今までのあらすじを彼に話す。
ヒノはその話を聞いた途端目を丸め、驚愕の色に染めることになった。
「まさか、経験数値化が、されていないなんて、そんなことがあるのか?」
「ステータス化?」
「あ、ああ、なんとなくだ、名前があったほうが、わかりやすいから」
「そうなんだよ、一人、いや二人だけ補正もかかってないもんだから最初に途方に暮れちゃって、…結局役立たずは俺だけだったわけですが」
あ、いけない。涙が出そう、そう思っていたらいつの間にか目の前にハンカチ、そして後ろから優しく肩を叩かれた。あまりのやさしさに余計に涙が出そうになったのは蛇足である。
途中グダりはしたもののはしたものの、その後の話し合いの末にもう少し情報を集めることと、元攻略組との会合をすることが決定したのだった。
サブタイの英語はあってそうな単語を使っている、だけです。
つまり文法がたがた