【3】 ギルド
森を進んでいき国まであと三十キロのところまできた。
徐々に山が消えていき平坦な森が続いている。
ベキベキベキベキベキッ!
とさとさと歩く音と木をなぎ倒す音が耳につく。
「魔物か・・・」
千里眼で視ればそこにいたのはマスペーダーと言う蜘蛛の魔物。
生憎、こちらには気がついてない。
このまままっすぐ進めば私が行こうとしている国についてしまう。
『戦神の軍服』により気配を完全に遮断し木の上を走りマスペーダーの上に出る。
火魔法、フレイムランスを応用し釘状に形を変えマスペーダーに足に一本づつ胴体に五本ほど打ち込む。
「キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!?」
マスペーダーから緑色の血が噴き出すがすぐに傷口が焼かれ血は止まる。
地面ごと打ち込まれたマスペーダーは動けずもがくがフレイムランスが焼き切っていく。
マスペーダーはブシューと何かを吐き出すと周りにある草木を腐らせていった。
「毒ガスか」
毒ガスはフレイムランスに当たると一瞬だが燃えた。
だがそれは最後の抵抗だったのだろう、キチキチと口を鳴らすとドサッと崩れ落ちた。
毒ガスは広がろうとしている。
そのため空間魔法で毒ガスとマスペーダーを囲む。
フレイムランスに魔力を過剰に流し大爆発を起こした。
マスペーダーと毒ガスは跡形もなく消し飛んだ。
国まであと十キロを切った時、結界の中に入る感覚が私を襲った。
「これは・・・魔物避けか?」
まぁ当然言えば当然なのだろう。
どれだけこの世界の人たちは魔物と闘えるか知らないが危険は回避できたほうがいい。
徐々に人の気配が強くなると私の脚も軽やかになって行く。
実質、何年振りかの人との出会いだ。
千里眼で視たこの国の概要は山に似ていると思う。
一番高いところにはこの国の城が立っておりそこを中心に城下町が広がっている。
私がいる向こう側には大きな湖があり漁をしている人たちが視えた。
ただ城下町の道が入り組んでおり、道を覚えるのは一苦労だろう。
城壁の門の前に立つとガラガラと音をたて門が開いた。
私は中に入ると門が勢いよく閉じた。
中に広がっていた光景は心を振るわせるには十分だと言えた。
人工的に作られた城下町の風景は温かみをだし、そこに溶け込む人々の民族的な衣装は背景の一つとして絵になっていて綺麗だ。
ところどころにいる武器を持った人たちは大声で笑い合っている。
「あんた、今外から来た奴だよな身分証を持ってるか?」
ぼーっと立っていると声をかけられた。
どうやら門番らしい。
「いや、魔物に襲われてな金や身分証の入れた袋を落としてしまったんだ。何とか食料だけは持って逃げたのでここにたどり着けたのだが・・・」
「おぉ、そうか。あんちゃん、魔物に襲われて逃げてこれるなんてすげぇな。じゃぁ、この国に来たのも初めてか」
「あぁ、身分証はどこで作ったらいいのだろうか」
「なら冒険者ギルドでいいんじゃねぇか?いろいろとルールはあるが基本的緩い。魔物と闘えるまで訓練を受ける必要があるが、まぁ大丈夫だ。魔法士ギルドだけはやめておけよ。あそこはルールも厳しく裏切ると殺される上に身内にまで被害が出る。プライドも高く自分のことしか考えてねぇ」
「心得た。冒険者ギルドにはどう行ったらいいのだろう?」
「あそこの五番街に続く道をまっすぐ進めばでっかい扉がある建物がある。そこが冒険者ギルドだ」
私は門番にお礼を言い五番街に向かった。
冒険者ギルド通じていると言われた道は武器や露店で魔法薬を売っている店が多く見受けられる。
でかい扉と言われたがこれはデカすぎだろう・・・。
まるで巨人を入れる気かと思われる大きさである。
だいたい横五メートル縦七メートルほどである。
扉は空いていたので入っていくが私が弱弱しそうに見えたのだろうガラの悪い連中に前を塞がれてしまう。
「どいてもらえるだろうか」
「いやぁ、あんた金もってそうだからさぁ。俺たちに恵んでくれねぇかなぁ」
血の気の多い連中はやはりどこにでもいるのだろう。
「私はあんたに構ってるほど暇ではない。私に声を掛けるより女性に声をかけたほうがいいのではないか?私に男色の気は無いぞ」
「・・・・・はぁ、あんた自分が俺達よりつえぇと勘違いしてるんじゃぇのか?」
「理性的な考えができているだけマシか・・・。あいにく私は一文無しだ。ほかをあたってくれ」
「いや、気が変わった」
冒険者二人組は拳を握りしめ私に殴りかかる。
私は周りを見るとまた始まったみたいな顔をしているやつと助けようかと動き出そうとしているやつ、われ関せずのように無慈悲な奴がいる。
私は魔眼の『懐眼』を使い冒険者二人に目を合わせる。
「え・・・・」
「な・・・・」
冒険者二人は体の力が抜け落ち私の両脇に転がった。
立とうとしているが体に力が入らないようだ。
私は一つため息をつき受付に着いた。
「冒険者登録を頼めるか」
「はい、大丈夫ですよ」
なんともまぁはっきりとした営業スマイルを浮かべる。
「名前と得意武器、前衛か後衛か、討伐系、採取系、運搬系を最低一つは選択してください」
名前を正直に書き、武器は剣、どちらかと言えば前衛、討伐、採取・・・こんなものか。
「書けたぞ」
「では簡単にギルドのルールをお教えします。
まず一つ、貴方のすべての問題は自己責任でお願いします。
二つ目、ギルドからの招集は必ず守ってください。
三つ目、魔法士ギルドとの問題は起こさないようお願いします」
「三つ目はどんな意味が?守らないとどうなるんだ?」
「死んでください」
物騒な発言が聞こえた。
「そ、そうか。了解した」
もう何も言うまい。
「ではこれがギルドカードになります」
「魔物の換金はできるのか?」
「こちらで承ってますが」
私はコールチを出す。
「コールチですか。失礼ですがこれをどこで?」
「森を通ってきたのだが襲われたのだ。仲間を呼ばれてすべて駆除したが」
どさどさとすべてのコールチを出す。
「コールチ一体につき銀貨二枚で、五十二体ですので金貨一枚と銀貨四枚です」
「ありがとう。では失礼する」
「あ、もう一度名前を伺っても?」
「パーミス・リーヴィヒアだ」
「ではパーミス様今後とも当ギルドをよろしくお願いします」
受付嬢は微笑んだ。