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今回は少し短いです。

そして迎えたテスト最終日、最後の教科も終了し、クラス内は緩んだ空気に包まれていた。


「晴海ちゃんどうだった?僕古文全然ダメっぽい~。」

「私は科学の方が今回は危ない感じです。美月さんは?」

「結季はそんなこと言って毎回30位以内には乗せてくるじゃない。私は今回は平均ギリってところだわ。」


今日は放課後、繭子と待ち合わせをしている。場所はいつも心霊相談に使っているカフェだ。春希にはメールで今回のことをざっくりと伝えてある。

『仕事が終わったらすぐに行く、無茶はするな。』という返信が来ていた。


「まあでも、テストが終わったら後はもう夏休みよ!結季、海に行く前に水着買いに行きましょう!」

「僕も一緒に行っていい?」

「各務はだめよ。女の子のお買いものなんだから。」

「荷物持ちでもいいから!」

「却下。だいたい、水着買いに行くのに彼氏でもない男同伴はないから。」

「彼氏いないんだからまだセーフでしょ!」


各務が必死で言い募るので、なんだか可哀そうにはなったが、結季も水着の買い物に各務と一緒は恥ずかしいな、と思ったので、奈美が断るのに同調することにした。


「佐原君、私も恥ずかしいので…。」

「ほらー!各務はせいぜい当日を楽しみにしてなさい!」

「ちぇ~。」


各務は悔しそうにしていたが、話はすぐに海へ行く当日の話に切り替わった。

結季は毎年、奈美や各務とともに海へ行く。中学時代に仲の良かった友人の親戚がやっている海の家で、他にも昔からの友人が集まって数日を過ごすのだ。


「高校入ってからはなかなか会う機会が減っちゃったから楽しみね~。」


そうやって、おしゃべりをしているところへ、クラスメートが慌ただしく教室へと飛び込んできた。


「おい!2年の教室の窓から人が落ちたって!!!」


その言葉の意味を噛み砕くよりも先に結季は教室を飛び出していた。




病院の廊下は静かで、2年の学年主任、2年3組の担任が落ちつか無げにうろうろしている。

結季は無理を言ってついてきた手前、大人しく椅子に座って待っているしかない。その肩にぽんと手が乗せられた。


「…先輩。治療終わったんですか?」


青褪めた結季を傷ましげに撫でた藤堂祐也は落ちた時に植え込みであちこちひっかけたらしく包帯だらけだった。それでも2階の窓から落ちた割には軽症だ。


「繭子は?」

「頭を打ってるみたいで、今、集中治療室に…。」

「そっか。結季ちゃん、つきっきりで疲れただろ。ちょっとあっちの飲み物のコーナーに行こう。」


祐也に促され、結季はフロアの隅の自動販売機のコーナーへ向かう。先に着いていた祐也がカフェオレの缶を2本買って片方を結季に渡してきた。


「…先輩。何があったんですか?」


結季は手の中で缶を転がしながら祐也に尋ねた。教師の話ではテスト終了後窓際にいた祐也が突然窓の外へ向かって倒れ、その腕をつかんだ繭子もろとも落ちたということだった。


「俺の席、窓際なんだけど、テスト終わって、立ち上がった瞬間、視えない誰かに突き飛ばされた。」

「……。」

「そしたら、繭子が飛びついてきて、一緒に落ちた。」

「不破先輩は、藤堂先輩が突き飛ばされる瞬間を見ていたんでしょうか?」

「…突き飛ばされる瞬間、あいつが『やめて!』って叫んで、そっちを見たら空気の塊みたいなのに突き飛ばされたんだ。あいつにはアレが見えてたみたいだった。」


祐也の手の中でスチール缶がべコリとへこんだ。


「アレが…あいつが言ってた呪いだって言うのか…?」


缶を握り締めた手が震えている。『呪われたかも』と相談を持ちかけてきた時はただの体調不良かもしれないと冗談めかしていたが、今回は一歩間違えれば死んでいた。

青褪めている祐也に、それでも結季は言わずにはおれなかった。


「…不破先輩は、本気で人を呪うような人には見えません。」

「繭子じゃないとしたら他に誰がこんなことできるって言うんだ?!」


祐也が空になった缶を床に叩きつける。硬質な音が静かな廊下に反響した。


「……ごめん。結季ちゃんに当たってもしょうがないのに…。」


結季は、黙って立ち上がると、転がった缶を拾ってゴミ箱へと捨てた。


「……先輩。前に話した、呪いを解く専門の方、呼んできます。」

「え?今から??」

「はい。待ってて下さい。」


結季はそういうと病院を飛び出した。


走りながら春希の携帯に電話をかける。


『晴海か?遅れるなら連絡を…。』

「鷹見さん!お願いがあります!!」

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