第四話 ~星明り~
シキの方から体をそらす。
そして、口を開く。
「その友達の兄妹と同じで、俺も親がいない。子供の時に事故で亡くしてる。そのあと、祖父母に引き取られた。」
また、空を見上げる。
星の位置は変わっているのだろうか。
見た目、全く変わってない。
変わらない景色だ。
俺は、この空を何回みてきたんだろう。
…初めてなような気がするよ。
「祖父母も、その一週間後に死んだ。しかも、親戚も続々と倒れて行った。」
もう、これは普通じゃない。
俺は、こういう悲しい特別な存在で。
悲しいの意味もわからなくなった。
「笑っちゃうだろ?数日後には、一緒に遊んでた友達が、俺が遠くに蹴ってしまったボールを取りに行った時、飛び出したトラックに撥ねられて死んだ。」
自分を呪ったさ、どうして。
この死神の役割は、割りと性に合ってるんだ。
きっと、俺はこれからもずっと。
誰かが死ぬのを見て行くんだ。
それが、俺のいつもの景色だから。
特別な。俺だけの。
「なんとか、引き取られ先見つかって、高校までいったら、一人暮らししたよ。もう、誰かが死ぬのは見たくないし、どうせ、誰かが死ぬ。」
そんな俺をさ。
「支えてくれるやつなんていなかったよ。ずっと同じ景色でさ。変わらない俺だけの景色でさ。」
いつのまにか、声が震えていた。
泣くものか。俺は、何度同じ特別な景色を見てきたんだ。
「なぁ、悲しいってなんだろうな。死ぬってどうなんだろうな。俺が死んでも、誰も悲しむやつなんか…いねぇんだよ。」
なんか、かっこ悪いよな。
どこのナルシストだよってさ。
でも、本当のことなんだよ。
嘘みたいな事だけどさ。
ずっと…ひとりだったんだよ。
「おわり?」
シキは、俺の事をまっすぐ見ていた。
無意識に、シキを見ていた。
その目は、何かを伝えてるようで。
何かを救ってくれるようで。
「……あぁ。なんだよ。」
「呆れた。」
「はぁ!?俺は真剣に…」
「ひとりの訳ないじゃない!」
「え…?」
「黙って聞いとけば、うじうじとさぁ…特別なんかないよ。光。」
「特別…」
それは、言っていないような…
「私もあなたも、同じ景色を見てるの。ほら、この景色も、光と私。目に映る景色が違うと思う?」
「……。」
「特別なんかじゃない。…ひとりなんかじゃない。」
優しい声色になっていた。
なんだろう。なぜこんなに。
懐かしく思うんだろう。
「泣いてくれる人だって、いる。…前を向きなよ。光。誰だって見守ってる。それに…本当にひとりなの?」
少し、心の奥で引っかかっていた事。
だけど、ずっと言えなかった。
言ったら、失ってしまう気がして。
でも…今なら。
重い口を開く。
「いたはずなんだ…俺の支えが。でも、思い出せない…いや、思い出したくないのかもしれない。」
「そう…でもね。これだけは覚えておいて。必ず誰かが、どこかで。見守っているから。」
「…シキ…」
瞬間、体の感覚がなくなる。
あぁ、末人が呼んでいる…
なんだろう。最後のような気がする。
もう、自分にあった不安とかが
スッキリなくなっていく感覚。
一体俺はいままで、何を悩んできたんだろう。
シキの少しの言葉だけで、救われた気がする。あんなに簡単な言葉で。
深く悩んでるほど、意外と単純で。
一言の言葉が、どれ程の価値があるのかわからないけど。
俺は、計り知れない価値を知った。
身体は、病院方向へ。
その時、夜空に星が流れた。
綺麗だ。
願い…叶うかな。
「私は…これで満足だよ…。」
シキがそう言ったのを、俺はなにも疑いなく聞いた。
俺は、その意味を薄々気づいていたのかもしれない。




