第三話 ~あの夜~
あれから、一時間くらいだろうか。
時間間隔も備わってないのか・・この体は。
でも、あまり遠くまで来てない気がする。
それにしても、ずっと走っていたのに
まったく息切れをしていない。
これは、何かの大会に出れるのではないか・・
そんなことを考えていたら、丘の上に来ていた。
周りの景色は、すべてではないが街が一望できた。
見上げると、星空が広がっていた。
こんな場所があったのか・・。
綺麗だった。無数の星が。
ただただ・・綺麗だった。
気づいたら、シキの手は離れていた。
「ねぇ・・少し、話をしてもいい?」
突然だった。またか。
見下ろすと、丘の芝生の上に座っているシキ。
「お前はいつも突然だな」
「・・・・いい?」
「勝手にしろよ」
光は勝手にしろってばっかじゃん。って聞こえた気がした。
気のせいだろう。まだ二度目だ。
それにしても、‘いつも‘って無意識に言ったな・・俺。
「私の友達の話なんだけどね・・。」
俺は、シキの隣に座った。
夜空を眺める。
「女の子なんだけど。その子には兄がいるの。その兄妹は仲が良かった・・。
ある日ね、流星群を見に行こうとしてたの。兄妹で。
兄がバイクを運転して・・その後ろに妹が乗って。
でもね、流星群が流れる予定時刻ギリギリだった。
だから、妹は兄にもっと早くって、急がせたの。」
嫌な予感がした。
「そしたら・・衝突事故が起きた。」
的中した。
「兄妹ともに重体だったんだけど、妹の方は意識不明の状態で。
兄は、何とか歩ける状態まで治ったけど、動くのはまだ危険だった。
それでも、妹の世話をしたの。意識が戻るまで、一生懸命。」
ふと思い出した。あの女性の言葉。
‘余計なお世話・・・‘
「唯一の家族だからだろうね。この兄妹には親がいないの。
・・・本当に、疲れを知らない。意識を取り戻してもらいたくて。」
‘貴方が死んじゃうんじゃない?って、思うくらいよ‘
唯一の家族・・ね。
「妹は意識を取り戻したんだけど・・。」
そこで、シキはこちらに向いた。
俺も視線を落とし、シキの方を見る
「どう思う?」
「・・どう思うって?」
「感想。」
「いや・・兄妹愛が素晴らしいなって・・思った。それと・・・」
「それと?」
「・・・唯一の家族って。うらやましいなって思った。」
「そうだ。今度は、光の話を聞かせてよ。」
「お前の話は終わりなのか?」
「ん・・終わり・・じゃないけど・・。」
「けど?」
「・・・ねぇ、いいでしょ!光の話聞かせてよ」
なぜ、話を変えた。
・・少し気になったが、シキに話してみたいと思った。
シキになら話してもいいって思ったんだ。
なにか・・答えを見つけてくれる気がして。
「面白い話でもないし・・良い話でもないぞ?」
「うん。」
風が優しく頬をなでる。
心地よい風だ。眠くなってくる。
時刻はもう、夜遅いのだろうか。
さっきより、闇が深まっている気がする。
それは、自分の心と比例していて。
人に話しても意味がないような気がして。
ずっと抱え込んでた。忘れたかった。
なんで、今の自分には過去の記憶しかないんだ。
「じゃぁ、俺の過去の話をするか。」




