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婚約破棄をされるのなら抵抗しないでそのまま王子と結婚させればいいじゃないか?を浮気女の婚約者から見た話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/05/04

「クラウス長官の身内を名乗る女性が訪ねてきました・・・赤子を連れております」


「おう、通せ」


 義姉上か?第三子を出産したと聞いた。頭が上がらない。すぐに通せと部下に命じた。


 俺はクラウス、王国警備隊の長官だ。陛下直属の衛兵隊だ。領地の垣根を越えて捜査できる。身分は低いが大きな権限がある。重要なポストだ。


「クラウス、久しぶりね。元気していた?」


 しかし、長官室に来たのは、知らない女だ。

 茶髪で顔はやつれている。栄養状態が良くないな。


 赤子はメイドと言うには若すぎる。農家の子守奉公みたいなニキビだらけの子が抱いている。辛うじて貴族階級だと判別できた。


「ねえ。この子にお給金を払ってよ。お金にうるさい子なの。新居はどこ?クラウスなら豪邸でしょう?楽しみだわ」


「いや、お前、誰だ?」


「ヒドいわ。私よ。私!カロリーネよ!貴方の婚約者よ」


「ハアアーーー!」


 腹の底から驚きの声が出た。俺、こいつとは婚約を解消したのではなかったか?金髪ではなかったのか?


 記憶の扉を開けた。







 ☆☆☆回想



 俺は見た目がゴツい。

 カロリーネと婚約を結ぶ事が親同士で決まった。初めての顔合わせの時、彼女は目を細めた。さらりとした金髪からのぞく顔はそっぽを向いているので横顔だった。


「ぃゃ」


 小声で聞こえた。そりゃ、湯浴みもしている。清潔に保っているが。決してハンサムではない。

 カロリーネは俺を嫌ったよ。


 俺は身長180㎝、体重80キロ、顔はゴツい。そりゃ仕方ない次男である俺は家を出なければならない。

 体は鍛えた。騎士になると決めたのだ。


 会話もスマートじゃない。これは俺のせいだ。


「カロリーネ、休日何をしている?俺は父上と兄上と一緒に領地で盗賊を討伐したよ。大変だった」

「・・・・・・・」


 カロリーネは無言でお茶を一杯飲んで席を立つ。



 学園に入ってからは公然と浮気を始めやがった。

 カロリーネは特別美人ではない。輝く金髪が武器だ。しかし、王子の前では笑顔になる。愛想が良い。側近達に近づいた。


 王子の周りをこまごまと世話を焼く係になったようだ。俺は寝取られ騎士のクラウスという二つ名を頂戴した。


 しかし、噂を流されているのは俺だけではなかった。王子にも婚約者がいたのだ。


 俺は謝罪をした。




 ・・・・・・・・・・



「何故、謝罪をなさるの?」

「いや、申訳ないと思いまして、婚約者として手綱をしっかり握っていないかというか・・・」



 彼女は木陰で泣いていた。王子殿下の婚約者だ。公爵令嬢アスタリテ様、目がキリッとして見た目がキツそうだが。


「それは貴方の関係することではございませんわ。気になさらないで」


 とても優しそうな声だ。

 側近候補もカロリーネに夢中だ。阻害されているらしい。



「出来れば一人にして頂ければありがたいのですが・・」

「これは失礼しました」



 その後、ちょくちょくアスタリテ様と学園で行き交う。意識するようになった。

 ご学友は寄子のご令嬢が数人か。公爵令嬢にしては寂しい。

 だが、ぴったりくっついている。人望はあるようだ。


 微笑ましいな



 と思って見ていたら、近衛騎士団長の息子がアスタリテ様に近づいて来た。



「アスタリテ様、カロリーネ嬢を身分の高さを笠に着て虐めたと言うが?学園風紀委員会として諮問します」


「まあ、ロイヤル様、婚約者のいる殿方に近すぎと意見しましたわ」

「カロリーネ嬢が嘘をついたというのか?」


 険悪になったので俺はアスタリテ様の背後に黙って立った。


「おい、お前はクラウス、何か言いたいことがあるのか?」

「・・・・・・」


 無言だ。これはカロリーネから学んだ。無言は人を威圧する。拒否の手段だ。


「おい、何か言えよ!」


 人が集まって来たな。


 あ、ロイヤル、剣に手をかけやがった。本来ならこいつはアスタリテ様の護衛騎士も兼ねているから帯刀を許されていた。


 俺は剣を持っていない。

 もう、どうでも良いわ。

 一歩、踏み出した。


「なっ。斬れないと思っているのか?殿下に言えば正当防衛が認められるぞ」


 こいつは人を斬ったことがないな。

 領地で盗賊と戦った時を思い出した。

 なんて言うか、人を斬ろうとするとき特有の気配を感じる。


 人を斬ろうとする奴はフェンリルが付いたような顔になる。キツネの化け物だ。

 自然体で人を斬れる奴は化け物だろう。


「うわ!」


 また、一歩近づいたら。

 ロイヤルは尻餅をついた。


「覚えていろ。殿下に報告するぞ!」


 捨て台詞を吐き。そのまま去った。


「あの、クラウス様・・・・お礼を言って良いのですか?」

「いや、自分のためにやりました。カロリーネを注意して頂きありがとうございました」



 それから、俺はちょくちょくアスタリテ様の護衛を買って出た。

 人を守るのは気持ちいい。



 だが、噂を流された。


「クラウスは乱暴者だ。婚約者のカロリーネ嬢に手をあげた」

「やっぱり・・・」

「だから、殿下と側近達が守っているのだ」

「アスタリテ様の側近を気取っている。二人で虐めるようだ」



 孤立した。


 兄嫁も心配してくれる。


「ちょっと、クラウス、良くない噂が流れているわ。社交界で否定したけども。婚約解消した方がいいわ。私の親戚の子、探してあげようかしら?」

「義姉上、申訳ないです・・・まだ、いいです」


 父上、母上からも不穏な情報を得る。


「カロリーネ嬢の親に問いただしたが、どうも、王子の子を孕むことを期待している節がある」

「王子妃は無理でも王家は口止めも兼ねて莫大な慰謝料と養育費を出すでしょうね。それを期待しているようね」



 これはアスタリテ様から離れた方が良いか?


 だが、アスタリテ様からエスコートを頼まれた。


「アスタリテ様、殿下がいるでしょう」

「カロリーネ様にドレスを贈りエスコートをしております。もう、女としての勝負は決しましたわ」

「なら、俺も同じです」

「クスッ、負けた者同士ですわ」


 何だか、嬉しそうだ。エスコート、アスタリテ様の黒髪が俺の肩にかかる。良い匂いだ。ドキドキする。


「敗将は語らずですわ。殿下が何を言っても沈黙をして下さいませ」

「はい・・わかりました」


 その日のパーティーで断罪をされた。



「アスタリテ、身分を嵩に懸かけてやりたい放題!断罪する」

「そうだ。学園は身分の垣根を越えて友愛を育むのに!」


「しかも、パーティーに殿下以外の殿方にエスコートを頼んでいる」


 どの口が言うかと思ったが。

 これも沈黙をした。


 アスタリテ様も沈黙だ。


「「・・・・・・・・・」」


「おい、何か言え!」

「そ、そうよ。私、一言謝罪をして頂ければいいのだから!」


「謝罪をしないと婚約は破棄だ!」


 王子は婚約を破棄といった。

 その時、アスタリテ様は俺を促しカーテシーもしないで会場を去った。



 それからは噂が広まった。

 婚約は破棄されたと。

 カロリーネが王子妃になる・・・


 更に、アスタリテ様が噂を流した。


「フフフ、皆様、お願いしますわ」

「「「はい」」」


 学友に頼んで自らも婚約を破棄されてカロリーネが婚約者になると公爵令嬢が流したのだ。信憑性が増す。


 どういうつもりだ。まさか、俺に恋をして?そんな事はあり得ない。



「クラウス様、ぞうきんを侮辱するにはどうすれば宜しいかしら」

「え、分かりかねます」


「綺麗に飾ってあげれば良いのよ。飾りは王子ですけどね。殿下はとても綺麗な飾りですわ」


 女は怖いわ。殿下の頭は空っぽでぞうきんはカロリーネか。


 カロリーネが王子妃になる噂が流れてから

 学園では有頂天だ。


「私、豪邸に住めるわ」


 向こうから、俺との婚約を解消する話が出てきた。



 向こうの親からは。

『違約金は王家から出る』


 との事だ。


 それから俺はアスタリテ様とちょくちょく領地経営の話をするようになった。


「盗賊はすぐに逃げます。領地を越えれば他の貴族の領地になりますから捕まえにくいです」


「・・・そうね。社交界で情報交換するべきだわ。そのために社交界があるのよ」


 無粋な盗賊討伐の話も真剣に聞いてくれた。



 アスタリテ様の新婚約者は決まっていない。

 卒業後、俺は新設の衛兵隊に内定が決まった。

 アスタリテ様の父上が進言して創設された役所のようだ。


「王命で領地を越えて捜査できるのよ。クラウス様、励んで下さいませ」

「アスタリテ様、有難うございます」


 この役職がどの程度の権限があるのか分からない。


 しかし、卒業後、実戦経験のある俺はすぐに将校から長官になった。

 陛下に直接意見できるから助かる。風通しが良い。


 俺は多忙を極めた。



 そんな時、一人の女が訪ねて来た。



「クラウス、久しぶりね。元気していた?」


 それがカロリーネだった。




 ・・・・・・・・・・・・






「早く新居に案内しなさいよ」



 化け物じみた存在になっていやがった。

 金髪は魔道で染めていたな。その金もない状態だと無粋な俺でも分かった。



「その子は誰の子か?」

「ロイヤルの子よ。好きな女が産んだ子も育てるべきよ。それが紳士よ」


 この理屈は分からない。

 赤子はやや白銀の毛が生えている。ロイヤルの髪だ。殿下は金髪だったな。



「ロイヤルは・・・」

「騎士になったけど、ヒドいのよ。化粧代も出せないのよ。別れたわ」


 初任給の騎士の給料ならそうだろうな。


「殿下に頼めばいいじゃないか?」

「それが辺境の男爵家に婿入りよ。嫌になっちゃう」



「そうか・・・・」


 としか言えない。このような化け物はどうしたら良いだろうか?



「それよりも婚約解消の違約金まだなのだが・・・」

「え、私は女よ。払わないわ。本当は貴方が払うべきなのにもらわなかったのよ」


 ダメだ。話会いができない。よく見るとカロリーネの顔が化け物のようになっていた。見覚えがある。盗賊が人を斬る時の顔だ。

 その時。


 トントンとノックをする音がして間髪入れずに秘書官が入って来た。


「あら、長官室に不審者がいるわね。長官、規則に準じて追い出すべきだわ」

「アスタリテ様・・・」

「何?この女、浮気?」


 アスタリテ様は秘書官筆頭になった。この人、事務能力はすごい。本来なら王子を補佐する役目だったのだ。


「泥棒猫!?クラウスは私の物だわ!」

「・・・・・・」


 アスタリテ様はジィとカロリーネを見る。


「メイドの子は雑用で雇うわ。今までの給金は払えないけど、うちに来る?」

「はい・・・」

「ちょっと、不忠者!」

「だって、お給金三ヶ月頂いておりません・・・」


 アスタリテ様はカロリーネを無視して次々と決める。


「妻売り市場に出すわ。赤ちゃんと一緒に引き取ってくれる老齢の紳士がいればいいわね」


「そんな、ヒドいわ!」

「大丈夫よ。身売り金はクラウス長官に対する慰謝料にあてるから。良かったわね。債務が減るわ」

「この強欲女!」


 妻売り市場、パワーワードだが、長官になって始めて知った。王都ではこびっている悪習だ。


 妻をいらなくなった旦那が売る。女が欲しい男が買う。

 ヒドい話だが救済にもなっている面もある。


 旦那を嫌いになった妻が間男と示し合わせて賠償金を払わせて身売りの体裁をとる。

 旦那は面子を、妻は好きな男と過ごせるメリットもある。


 夫婦喧嘩をした旦那が激高し妻を銅貨一枚で売った悲劇もある。

 しかも、聞こえも悪い。奴隷制度だ。

 原因は妻から離婚を切り出せない法律があるからだ。


 だから、今、アスタリテ様が法整備を受け持っている。

 女性から離婚を切り出しても良い法案だ。


「ヒドいわ!この子はクラウスが育てるべきよ」

「ロイヤルとの子でしょう?」

「ロイヤルからは離縁されたわ!」


「もう、いいわ。連れて行きなさい」


 まるで子牛をつれていかれるように拘束されて荷馬車に乗せられた・・・


「この王国警備隊、陛下直属だから自由が利くわ。風通りも良いわ。そうね。役所間を横断できると言うか・・・」


「アスタリテ様、助かっています」


「早く出世してね。旦那様・・」

「はい?」


 アスタリテ様には婚約者がいない。


「また、エスコートして下さる?公爵家のパーティーに招待するわ。父に会って欲しいわ」

「はい・・・」

「今度は、好きな事を話して下さいませ」


 何だか。王国警備隊の長官なのに捕らわれるような予感がするが、アスタリテ様なら良いだろうと思う俺がいた。


最後までお読み頂き有難うございました。

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アスタリテ様、つおい。
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