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第五話③ 「魔女と、恋愛脳ツンデレ使い魔」

 

「ちょっと魔女様、なんですか、そいつは。また新しい使い魔ですか」


 ルイくんが怪訝そうに発言していた。


 私とゴウト、召喚の間から二人で連れ立って出てきた途端。

 さっそく、ルイくんに見つかってしまった。


「あ、あの、彼の名前はゴウトよ、よろしくね」

「まったくもう、また召喚したんですか。次から次へとボクの対抗馬を増やして。ちょっとひどくないですか?あなた、ボク一人じゃ満足できないんですか?これが一妻多夫制、オープンマリッジ複数恋愛ポリアモリーというやつですか」

「そ、そんな、そういうことじゃないのよ、ルイくん」


 独占欲が強く嫉妬深いルイくん。

 彼は、他の使い魔たちに対して、常にピリピリとしていて攻撃的である。


「おい小僧、ゴウトって言ったな?」


 コワモテ大男のゴウトを前にしても、けっして怯むことなく、血気盛んに喧嘩を売っていく始末。


「ボクはルイ。ルイ先輩って呼べよ、いいか?わかったな?ここじゃボクが最古参なんだからな、敬えよ?おい、ゴウト、わかったんなら返事しろ」

「ああ?なんだと?やんのか?誰が小僧だよコラ。異世界に来てまで年功序列だの縦社会だの上下関係だのウンザリなんだよ。わかりやすく実力主義で決着着けてやろうか。オモテに出ろよ、ホラ」


 わ、わああ。

 ケンカだわ、ケンカ。

 ど、どうしよう。オロオロ。


 また使い魔が増えたら、ルイくんが反発するだろうなぁとは覚悟していたけど……。まさかここまで拗らせていて敵対心をあらわにするとは……。

 こんなに怒るなんて、ちょっと想定外だったわ、どうしよう。


 一触即発。

 ルイくんとゴウトの不穏な関係性。

 私がハラハラして、どう対処しようか考えあぐねていると。


「まあまあ、みんな仲良く〜」


 突然、とぼけた声が混ざり込む。

 いつのまにか私たちの背後に立っていた、嘉紋の声だった。


「ねっ、ルイ先輩、ゴウトくんも。落ち着いてよ。俺、嘉紋。はじめまして、よろしく〜。ほら、向こう行こ、ゴウトくん。俺、案内してあげるよ」


 なんと、嘉紋が二人の中へ分け入って、とりなしたのだった。

 

 え、嘉紋、おまえ戦闘狂でバトルマニアで狂戦士のくせに。平和主義の仲良し推進派って、どういうこと。

 ほんと謎だわ、こいつ。

 何考えてるのかさっぱりわからない。

 狂戦士が喧嘩の仲裁をする、とか。不思議な光景だわ。


 ともあれ、嘉紋のおかげで助かった。

 無事、館内の大波乱を免れた。



 嘉紋は、ルイくんからうまくゴウトの存在を引き離し、中庭まで連れ出すことに成功する。

 私は当然、気になってしまい、さりげなく彼らのあとを追う。しばらく木陰から二人の姿を見守ることになるのだった。


「あ〜危なかったぁ〜。気をつけないとダメだぜ、ゴウトくんよぉ。ルイ先輩って、ヤバい怖いんだから」

「あぁ?マジかよ?」

「ヌッコロされるとこだったってば」

「おもしれぇ、返り討ちにしてやるよ」

「えー、どうやって、どうやって?何するの?愛用武器は?」

「んなもんねぇよ、ステゴロで十分なんだよ」


 二人はすぐに打ち解けていた。

 前衛タイプの腕自慢。戦闘好きでバトル担当希望。というような共通項があるからだろうか。

 早くも意気投合して、やがては各々の戦術談義を披露するまでになっていた。

 自然の流れのように、ついにはスパーリングや組み手が始まり、二人は余興試合を愉しむのだった。


 中庭には、陽光が降り注ぐ。

 明るい昼日中。木々や草花といった自然を背景に、生き生きと身体を動かす、二人の若者。

 その姿はとても健全で、活力や生命力にも満ち溢れていた。

 意外にも、明るくて賑やかな時間が流れていった。

 だが。

 それも長くは続かなかった。

 

 すぐに雲間が遮り、しだいに天候は荒れていく。

 ついには雨が降り出してきて、屋外の活動を中断させられてしまう。そして私たちは在宅を余儀なくされるのだった。

 私たちのこれからの暮らしや、人間関係の暗雲を暗示するかのような。展望を阻むような、空模様。


 私は、つい、一抹の不安を覚えてしまった。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 

 悪天候が続いた。

 土砂崩れや水害が、各地で発生していた。

 結界のいくつかは、ちょうど堤防上や河川のあたりに位置している。封印石の状態が不安定になっているかもしれないのだった。


「あれ、魔女さん、結界行くの?」

 旅支度をする私の姿を見て、察したようだ。

 嘉紋は嬉々として話しかけてくる。


「うーん、ちょっと心配だしね……。見回り任務にはまだ早い時期だけど、行っておきましょう」

「俺も行くよ〜。やったね。異形討伐バトルだ、バトル」

「ボクは戦闘は勘弁願います、魔女様。留守居を申し出ます」

「結界?戦闘ってなんだよ、暴れていいならオレも連れて行けよ、魔女」


 三人の使い魔たちは、それぞれの反応を見せる。


 前回同様に、ルイくんを一人、館の留守番に残していくしかない。

 嘉紋と、そしてゴウト。この二人を旅の同行者として選ぶことになった。

 今回臨む旅路には、人間関係の修復というテーマも兼ねることになりそうだ。


 新しい使い魔、ゴウト。

 しばらく外の世界を観光して旅行気分を楽しんだら、すっかり満足してくれるかもしれない。もとの世界に帰る気になってくれるかもしれない。

 そうなったら、そこでお別れだ。

 すぐに帰還用魔法陣を踏ませて、もとの世界へ帰してやると決めている。


 そうならなかったとしても。

 とりあえずの措置である。

 新しい使い魔ゴウトを、犬猿の仲である先住使い魔ルイくんとは一時的にでも離す必要があった。


 ルイくんは、ゴウトを召喚して以来、ずっと機嫌が悪い。

 表情は不満げであからさまに拗ねて見せていて、私を相手にしても他人行儀でよそよそしく振る舞うのだ。

 

 はぁ……。

 困った。

 ここまでこじれてしまうなんて……。



 

「じゃあ行ってくるわね、ルイくん。お留守番、お願いね」

「はい、魔女様」 


 出発の朝。

 留守居を申し出たルイくんが、門扉のところで私たち三人を見送ってくれた。

 ルイくんは私の真正面に立つと、ゆっくり掌を差し出した。


「魔女様、地図を見せてください」

「……地図?」

「どのあたりに向かうのか教えてください」


 私は、言われるままに地図を手渡す。

 それでも、ルイくんはやはり、目を合わせてくれなかった。

 距離も遠い。

 いつものベタベタとした甘え上手が嘘のように。他人行儀でよそよそしく振る舞い続けるのだった。


「ああ、一箇所目、このあたりなら近いですね。二箇所目は、川上にあたる滝上ですか。ずいぶんと山深い」

「あ、あの、なるべく早く帰るからね、ルイくん……」

「くれぐれも気をつけて。行ってらっしゃい、魔女様」

「……う、うん」



 こうして。

 私、嘉紋、ゴウトの三人は、結界へと出向く。

 そして前回同様、残ったルイくんは一人、館で留守居を務めることになったのだった。




━━━━━━━━━━━━つづく!!

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