五話 程度の低い神VSよそこら辺にいるパン屋のおっちゃん
「警戒心うっすいな。」
ギドが言った。
この夜の街で屋根伝いにこそこそしているのは不審者以外の何でもない。不審者たちは、パン屋を狙おうとしていた。
「行くぞ。〇ャドウガーデン。」
「あれ、〇ソカ的な立ち位置じゃなかったのか?」
二人は息をひそめる。店の中の店主は警戒をしていない。二人は息を吐き出す。それが合図であった。
「盗賊だ!五日分のパンを出せ。」
しかし、ナイフがないときに言っても大して恐ろしさがない。
「なんだと!」
店主は自分の腕に自信があるのか、激高した。机に置いてある麺麭切り包丁を右手に持つ。
「神ノ眼」
店主がリオスの咽喉元に包丁を突きつけようとする。傍目には細長いパン。
(これだ!)
リオスはパンを人掴みし、喉元をガードした。すると・・・麺麭が切れた。考えたら当たり前のことだが、リオスにとっては麺麭切り包丁で真剣を切られたようなものだった。このままでは喉元に突き刺さる。
「いけー!〇ンパーンチ!」
ギドの投げたアンパンが店主の顔にクリーンヒットした。なぜ中世の世界にアンパンがあるのかはこの際気にしない。
「今だ!」
「賭博黙示録ギド」
ギドが能力を発動した。
「な!」
余裕は驚愕へと変化した。
(この店主・・・心のスキがない!)
心のスキがないというのは一般人であるととても珍しい。特殊な精神訓練を受けるか、生まれつき強靭な精神力かの二択である。それをいとも簡単に(?)防いだのだ。どこかの軍にいても不思議ではない。
「ずらかるぞ!」
漫画とかでよく出てくる女狙いの盗賊、親分(頭)にぺこぺこしている男の風上にも置けない情けない手下Aの親分Aが異世界ボーナスNPCの標準語を発した。
「逃がすか!」
今まで寡黙だった店主が言った。そんなのお構いなしに出口に向かう二人。
「神之怒麺麭」
「死ね!神の怒りに焼き貫かれて!」
この店主も結構口が悪く某アニメのファンであるに違いない。だが、それよりも能力の話である。
「はー!何であんな能力なんだよ!」
ギドが叫んだ途端にアンパンがギドの後頭部に直撃した。ギドは倒れる。
「おのれ!」
自分のことを棚に上げ激怒するリオス。
「創造主・模倣」
「なっ!」
模倣、できなかった。つまり、この能力はエキゾチック以上!後ろを振り向くと、硬そうなパンが!そこで意識は途切れた。
「どうしました?」
善良なパン屋の元に王国騎士が参った。重厚な装備はその強さを醸し出している。
「パン泥棒が。」
「パンに化けたネズミに盗られましたか?」
「いいえ。こいつら・・・」
うつぶせになっている二人を仰向けにさせた騎士と店主は絶句した。この場合不細工だったらなんてこともないのだが、美少女と美青年となると話は別である。何故罪を犯したのか。そう疑問におもいながらも二人を留置場へと放り込んだ。
「こりゃもうだめだな。」
リオスが無心にも灰色の天井を見つめながら言った。
「どうする?というか、さっきからお前なにかいてんの?」
リオスが机(?)向かっている神に話しかけた。しかし、応答はない。リオスはギドの後ろに立った。すると、羊皮紙に文字をつづらせているのが見えた。
「遺書 ギド
私が犯した過ちは認め、死を潔くあーだらこーだら
だがしかし、私を捕まえたところで神へダメージが出るわけではない。
故に私を捕まえても捕まえても意味がない。
だから、助けてください。
すべては白髪鬼の仕業なのです。
私は奴に脅されただけなのです。あやつを殺してください。
私を助けてください。あいつなんてどうでもいいので殺してください。
この不肖ギドの願いを何卒受け入れてはもらえないでしょうか。
愛する・・・」
「お前マジ死ね。」
振り向いたギドの頬に冷や汗が伝っていた。
「やあやあ、リオス殿。俺は君のことをものすご~く心配したんだよ。どうしたのねえ?」
リオスはギドの憎たらしい顔に一発入れた。
「突っ込みどころが多いな。童磨もどき。お前、潔くって言葉知ってるか?中二のポエムみたいなニヒルなヒーロー気取りで言うんだよ。お前の場合は途中から俺に積み擦り付けるし、口調変わってるし、挙句は俺を偉大なる安西先生様にしてるし後、愛してるってなんだよ。」
「はい、えー、愛してるというのは俺が愛しているものがいてその者のために生きているっていうのを騎士に訴えかけ、涙を誘い情状酌量させようという寸法です。」
「お前はボッチだから愛するものなんてできやしない。精々指くわえて夢の国で幸せそうにしてるカップル呪いな。クソ童貞。」
「いいや、俺はヘーラとかアプロディーテやヘスティーアと面識あるから。」
「は?もしかして、お前ってディオニュソース?」
「よく知ってんな。一般的には酒の神らしいけど俺はギャンブル派だから。」
驚愕の事実。そこら辺の底辺神様ではなかったようで。
「それよりもだ。脱獄、始めるぞ!」




