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27.久しぶりの写真部

 夏休みも後半に差し掛かり、朝の光が窓から差し込む部屋の中で、蓮は布団の中でぼんやりと目を開けた。

 特に何か予定があるわけでもないこの日、唯一気になっていたのは、ずっと足が遠のいていた写真部のことだった。


 入学当初、部長に熱心に勧誘され、「楽そうだし」と軽い気持ちで入部した写真部。週に一度、なんとなく顔を出す程度だったが、夏休み中は一度も部室に行っていない幽霊部員状態だった。


 スマホが震え、部のLINEグループを開くと、三年女子の部長からのメッセージが目に飛び込んできた。


「蓮くん、最近来てないよ?大丈夫?夏の写真コンテストも近いし、一緒に頑張ろうよ!」


 続いて、同じ二年の男子二人からも、


「たまには顔見せろよ〜」

「お前、幽霊部員すぎて心配されてるぞ?」


 と軽口が飛んできた。


 「明日、行くよ」と返信したものの、少し気まずく、しかしどこかやる気も湧いてきた。


 翌日、久しぶりに学校の部室へ向かう。扉を開けると、部長が明るく迎えてくれた。


「おかえり、蓮くん!この夏はみんなで思い出の一枚を撮るコンテストをするんだ。楽しみだよね!」


 隣にいる同級生の友達二人も、相変わらずの軽いノリで「おう、久しぶり!」と声をかけてくれ、緊張が和らぐ。


 一年生の男女部員もちらっと顔を出し、初々しい空気が漂う。


 部室を出て、みんなで近所の公園や街角に撮影に出かける。久しぶりのシャッター音が心地よく、蓮は自然と笑顔になっていた。


 そんな時、ふと視線を感じて振り返ると、公園の前を三好が通りかかり、声をかけてきた。


「風間さん、こんなところで!写真部の活動してるんですね」


 三好は写真に詳しくないが、蓮の様子を気にかけているようだ。


 「久しぶりだからまだぎこちないけど、楽しいよ」


 そう答えると、三好は少しうれしそうに微笑んだ。


 撮影を終え家に帰ると、紗耶と芽衣が迎えてくれた。


 「今日、久しぶりに部活行ってきた」


 蓮は撮ったばかりの写真を見せながら、部活の楽しさや仲間たちとのやりとりを話した。


 自分の居場所が少しずつ広がっていることを実感しながら、夏休みの残りも大切に過ごそうと思った。


 夜、蒸し暑さが少し落ち着いた時間。蓮は家でゴロゴロしながら、ふとコーラが飲みたくなった。冷蔵庫は空だった気がする。軽く上着を羽織り、財布をポケットに突っ込んで、コンビニへと向かった。


 夜道は静かで、蝉の声もようやく弱まり始めていた。

 小さな交差点を曲がると、ちょうどコンビニの自動ドアが開いた。

 出てきたのは、まさかの人物だった。


「……あれ? 蓮くん?」


 部長だった。今日、部室で元気に話しかけてきた、三年の先輩。

 私服の彼女は、いつもより大人びて見えた。白のカーディガンに、淡い花柄のワンピース。蓮は思わず視線をそらした。


「あ、どうも……」


「ふふ、敬語いらないって言ってるのに。偶然だね。甘いものが欲しくて来ちゃった」


 彼女の手には、レジ袋。中にはアイスとジュースがいくつか見える。

 蓮も目的を思い出し、「じゃ、俺も」とだけ言って店内に入った。


 買い物を済ませて外に出ると、部長はまだその場にいた。


「せっかくだし、ちょっとだけ話そっか? 蓮くん、最近来なかったから」


 近くの公園のベンチに腰を下ろし、二人でジュースを開ける。夜風が心地よかった。


「夏休み、いろいろあってさ。家のこととか……。でも今日、ちょっと楽しかったです」


 蓮が素直にそう言うと、部長はうれしそうに微笑んだ。


「そっか、よかった。……蓮くんが部活やめちゃったら、私、ちょっと寂しいから」


 ぽつりと、そんなことを言う彼女に、蓮は少し戸惑う。


「……あの、なんでそんなに俺のこと気にかけてくれるんですか?」


 言葉にしてみて、ちょっと図々しかったかな、と蓮は思ったが、部長はすぐに答えてくれた。


「んー、なんでだろうね。最初に声かけたときから、なんか気になったんだよね。写真のセンスとかそういうのもあるけど……、多分、放っておけないタイプ?」


「それって、褒めてます?」


「うん。褒めてる。ちゃんと続けてくれてうれしいよ。……あ、でも変な意味じゃないからね?」


 慌てて付け加える部長に、蓮は少しだけ笑った。


「変な意味って?」


「なっ……もう。そういうとこ!」


 そんな会話が続いて、いつの間にか時間が過ぎていた。蓮はそろそろ帰らないとと思い立ち、立ち上がる。


「じゃあ、俺、帰ります。先輩も気をつけて」


「うん。……明日も来れたら、来てね?」


 手を振る彼女の姿に、蓮は背を向けながら小さく頷いた。


 なんだか今日は、いろんな意味で“部活に来てよかった”と思えた夜だった。

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