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第6章 アゲイン

タースの心の中「……シスリアが理解できない事件?」


タースの心には強烈な違和感が残っていた。


タースの心の中「いや、シスリアだけじゃない。俺もだ。犯行が"芸術的"ではない――それが逆におかしい…俺達を混乱させている」


彼の中で、一つの仮説が浮かび上がり始めた。


二人のひらめき…同時の気づき


シスリアがパンケーキを食べる姿をぼんやりと見つめていたタースだったが、ふとした瞬間、二人の目が合う。


同時に二人の頭の中にある考えが閃き。


「「……犯人の芸術は芸術とかけ離れてきている」」


その言葉が、シスリアとタースの口から同時に飛び出した。


マサトが驚いた顔をする中、二人は静かに頷き合う。


タースがグラスを回しながら静かに口を開いた。


タース「……今回の犯行、もしかしたら犯人は"芸術的に見せたい"という意図すら捨てているのかもしれない。ネタが切れた…そう考えると筋が通る」


シスリアはパンケーキをフォークで切りながら、冷静に答える。


シスリア「……私も同じ考えです。ですが、今回はただ芸術性を失っただけではありません」


二人は見つめ合いながら話を続ける。


シスリア「犯人は、今回"トリッキーな方法"を使っていた可能性が高い」


タース「目的は、ただの楽しみか…あるいは何か他の意図があったかもしれない」


二人の推理が重なる瞬間、マサトはその光景を不思議そうに眺めていた。


マサト「……なんだこの二人…まるで息ぴったりじゃないか……変なの…」


お互いの思考…違う方向の思惑


表面上、二人の推理は一致していた。だが、それぞれの心の中では違う考えが渦巻いていた。


タースの心の中:

「この事件が終わったら…シスリアをどう始末するか。そのタイミングを逃すわけにはいかない」


シスリアの心の中:

「犯人が芸術を捨てた理由……その背後にある動機を解き明かさなければならない」


奇妙な空気…マサトの視点


カフェの席で向かい合うタースとシスリア。天才同士の推理は鋭く交わり、互いの言葉が噛み合っていた。

だが、マサトにとって、その光景はどこか奇妙に映った。


マサトの心の中「……なんか、二人とも怪しくないか?」


マサトはフォークを手に取りながら、何か言い出そうとして結局黙り込んだ。


マサトの心の中「まあ、俺にはわからないけど……この二人、同じくらい怖いよな」



基地に戻ったタースは、椅子に深く腰掛けながら考え込んでいた。

タースの心の中「……後の始末なんて考えたらもっと先延ばしになる…」


これ以上、シスリアを翻弄し続けても彼女を始末するタイミングを逃すだけだと気づいた。


タースの心の中「ここは完全にシスリアに協力する方面に舵を切るしかない……」


タースは冷静に自分の計画を修正し始めた。


タースの心の中「シスリアの推理に全力で協力して、犯人を明後日までには捕まえる。それが俺の我慢の限界だ……!」


シスリアの苦戦――小説との繋がり


一方、シスリアは事務所で考えを巡らせていた。

今回の事件があまりに普通すぎることに、彼女は珍しく苦戦していた。


シスリアの心の中「これじゃあ普通すぎる……」


そのモヤモヤ感が、普段はどんな難事件でも瞬時に解決してきたシスリアにとって大きな違和感だった。


「……マサト君?」


一瞬、普通の推理レベルを持つマサトの存在が頭に浮かぶ。しかし、彼の奇妙な推理――「転けた事故」との発言を思い出し、シスリアは即座に考えを否定する。


「……マサト君は無理」


彼女は疲れた頭を休めるため、小説 『無限の迷宮』 を開き、過去にメモしておいた一節を読み返す。


「夜の愉快な痕跡は遺体すらも寝に見える」


「四角に死角」


「溜める……見えなくなる」



ふとした瞬間、シスリアの目が止まった。


「……夜の愉快な痕跡」



---


小説との一致――犯行の明白化


シスリアの頭の中で、小説の一節とこれまでの犯行が結びついていく。


1. 一つ目の事件――枕投げの演出と窒息死

→ 「夜の愉快な痕跡は遺体すらも寝に見える」:被害者は枕投げを装い…夜の愉快な痕跡、そして窒息死…寝ているように見える。


2. 二つ目の事件――ミニマリストの部屋、背後からの刺殺

→ 「四角に死角」:四角い部屋と、ドアから死角になる背後。


3. 三つ目の事件――ホテルのバスルーム

→ 「溜める……見えなくなる」:浴槽にお湯を溜め、蒸気で鏡が曇り、視界が遮られる。


シスリアの心の中「犯人は芸術に固執してたのでなく…この本の内容に固執していた…」


さらなる一節…「見えない存在するものを求める者」


小説のもう一つの言葉に辿り着く。


シスリア「見えない……存在するもの……?」


彼女の頭の中に浮かんだのは「透明」「水」というキーワードだった。


シスリア「求める……水……?」


シスリアはその言葉から導き出した結論に息を呑む。


シスリアの心の中「被害者は、どこかに捕まっている……! 水を与えられず、このままだと命の危険がある……!」


時刻は夜の11時。外に出ることはできないが、シスリアは朝まで事件と小説の繋がりを何度も復唱し、整理を続けた。


翌朝…推理の展開


翌朝、シスリアはマサトとソルツ刑事タースを事務所に呼び出した。


三人が揃うと、シスリアはノートを広げ、冷静に話し始めた。


シスリア「皆さん、今回の事件について整理した結果、これまでの犯行が 『無限の迷宮』 に基づいていることが明白になりました」


彼女は一節ずつ説明し、過去の事件と小説の一致点を挙げていく。


夜の愉快な痕跡 → 枕投げを装い窒息死。


四角に死角 → 部屋と背後からの刺殺。


溜める……見えなくなる → バスルームの湯気で視界が遮られる。


マサトは驚きながら口を挟む。


マサト「すごい! 小説と事件がこんなに繋がってるなんて! でもさ、それがどう犯人に繋がるんだ?」


シスリアは冷静に続ける。


「それは分かりません…が…今は小説の最後の一節『見えない存在するものを求める者』…これがポイントです」


タースは静かに問いかけた。


タース「……それは何を意味する?」


シスリアは少し間を置いて答えた。


シスリア「透明……つまり 『水』 です。そして……『求める者』とは 被害者 を指しています」


彼女の声に冷静な緊張感が漂う。


シスリア「……つまり、被害者はまだどこかにいる可能性が高い。そして、水を与えられていない…時間がないかもしれません」


タースの目が鋭く光った。


タース「……なるほど。なら、次に取るべき行動は?」


シスリアは冷静に答えた。


シスリア「次の手掛かりを掴むために、小説と同じような場所を捜索します。犯人が意図的に小説を模倣しているのなら、その次の一手も小説に隠されているはずです」


シスリアが『無限の迷宮』を読み込んでいる隙を見て、タースは話を切り出した。


タース「シスリア……実は『無限の迷宮』には続編があるのを知ってるか?」


シスリアは本から視線を外さずに冷静に答える。


シスリア「はい……把握しています」


タースは続けた。


タース「二作目は駄作と言われている。それが何故か考えてみた。一作目は今回のような犯行を基に書かれた…実際の出来事をリアルに描写したから、読者を惹きつけた。だが……二作目は違う。思い付きで書かれたから浅く、リアルさに欠けていたんだ」


シスリアは無表情ながら軽く頷く。


シスリア「……それには納得します。では、三作目の目的は?」


タースは少し間を置いて答えた。


タース「三作目を出すために、今回の犯行を行った…そう考えられないか?」


シスリアは短く答える。


シスリア「それでは、一作目と同じ書き方になるはずです」


タースの目が光る。


タース「そこがポイントだ…一作目の主人公には熱狂的なファンが多い。作者がそのキャラクターに執着し、自分の作品を再現した可能性がある…そして三作目は自身がもう一度体験してリブート…2000の作品ならば今もう一回だすのも悪くない…一作目に書いてあるのは言葉と少しの詳細…だし…犯行が違う」


タースの言葉を遮るように、マサトが口を挟む。


マサト「そんなヤバい人、本当にいるんですか!?」


シスリアは過去の事件を思い返しながら、冷静に答えた。


シスリア「正直、否定はできません。これまでにも事件を模倣した犯人は存在しました…ただ……作者自身がそれを行うケースは今回が初めてです」


タースは小説の一節に戻り、再び言葉を紡ぐ。


タース「……問題は現在の犯人の行動だ。"見えない存在するものを求める者"これはおそらく、水を求めている被害者のことを指している…シスリアは正しい…。だが……肝心の場所が分からない…こいつが小説に書いていない…それに…解決するし…重要なのが最後の事だから事件の事を詳しく書いていない…」


タースの心の中「まさか…もう一度やることを想定して場所がバレたらまずいこの事件だけ場所の詳細を書かなかったのか…」


マサトは焦った様子で言う。


シスリア「そうなんですよ! 確定はしたけど、結局どこを探せばいいか分からないじゃないですか!」


タース「その通りだ。ヒントがない限り、俺たちは動けない……」


しかし、その時シスリアが静かに言った。


シスリア「ヒントならあります」


タースの目が鋭く動いた。


タース「本当か?」


シスリアはスマホの画面をタースとマサトに見せる。


シスリア「これを見てください…今日の12時、『無限の迷宮』作者の握手会があります」


タース心の中「場所バレてはまずいが…アリバイを優先した…ということか…」


握手会…犯人のアリバイ作り


シスリアの推測は鋭かった。


シスリア「おそらく犯人は、この握手会でアリバイを作ろうとしている。握手会中に、どこかに拘束した被害者が水なしで放置されている可能性があり…時間がたったら死亡…」


タースは冷静を装いつつも、内心でその推理の正確さに驚いていた。


タースの心の中「……シスリア、やはりお前は天才だ」


マサトが不安そうに言う。


マサト「でもさ、俺たち握手会のチケットなんて持ってないっすよ!」


タースは無表情で簡単に答えた。


タース「警察として行けばいい」


マサト「……あ、確かに!」


シスリアは立ち上がり、冷静に宣言する。


シスリア「時間はありません。おそらくタイムリミットはすぐです。行きましょう!」


タイムリミットまでのカウントダウン


三人は握手会の会場に向かう準備を整えた。

時刻は午前10時…握手会が始まるまであと2時間。


11時50分、握手会会場に到着したシスリア、タース、そしてマサト。

既に会場には多くの人々が詰めかけており、舞台上には小説の作者――ネイバーが座っていた。


タースは内心でその名を噛み締めた。


タースの心の中「ネイバー……」


シスリアはすぐに話しかけた。


シスリア「ネイバーさん、少し話を伺いたいのですが……」


だが、ネイバーはそれに応じるどころか、余裕の笑みを浮かべながら意味不明な言葉をつらつらと並べるだけだった。

時間が過ぎ、握手会の開始まで残り5分――会場にはさらに人が詰めかけていた。


その時、ネイバーが突然立ち上がり、大勢の人々に向かって声を張り上げた。


ネイバー「……会場の戸締まりが終了しました!」


シスリアは眉をひそめる。


シスリア「……戸締まり?」


ネイバーはその言葉に続けて勢いよくジャケットを広げた。そこには… 大きな爆弾 が装着されていた。


「爆弾!」タースが低く呟き、マサトが驚愕の声を上げる。


マサト「な……なんでだよ!?」


ネイバーは中央に歩み寄り、周囲の人々を睨みつけた。


ネイバー「動いたら爆発だ! 止まれ!」


タースの心には混乱が渦巻いていた。


タースの心の中「……どうなってるんだ……?いや…まさか…」


ネイバーは狂ったような笑みを浮かべながら続ける。


ネイバー「この会場には周囲にも爆弾が仕掛けられている……おい、刑事に探偵ども、終わる前に推理でも聞いてやろう。お前ら、何故ここに来た?」


その挑発に、マサトが真っ先に口を開いた。


マサト「それはお前が被害者をどこかに閉じ込めて水を与えず始末するため! 握手会はアリバイ作りだろ!」


その言葉にネイバーは笑い出した。


ネイバー「ふはは……確かに! 当初の話はそうだった……いや、違うな。"見えない存在するものを求める者"…これは俺のことだ…それは…」


マサトが動揺して言葉を失う中、シスリアが冷静に口を挟む。


シスリア「……あなたは魂を求めた」


その言葉にネイバーは一瞬動揺しながらも頷く。


ネイバー「そ……そういうことだ!」


マサトは混乱した表情で叫んだ。


マサト「ど、どういうことですか!?」


タースは冷静に推理を展開した。


タース「先ほどのネイバーの発言通りだ。水のトリックは当初の小説の言葉の答え…現実では"魂"という非現実的なものを使って疑いを逸らしたんだ…それは物語で唯一非現実的な物…現実的な物語で書かれていた無限の迷宮では想定も出来ない…そして今回…やつは自分もろともここに集まった人々の魂を巻き込むつもりだ…小説家には変人が多いとは思っていたが、これほど狂ったやつがいるとはな…」


シスリアも淡々と続けた。


シスリア「……『無限の迷宮』の最後、主人公は捕まり、一人で生涯を終える……ネイバーさん、あなたはそれに自分を重ね、"一人では終えない"方法を考えた……それがこの爆弾騒ぎです」


ネイバーは狂気的な笑みを浮かべた。


ネイバー「ご名答! だが遅い……5分後には会場もろとも吹き飛ぶのさ!」


ネイバーのジャケットから繋がる線を追ったシスリアは、建物に向かって伸びるその線を見つけた。

タースもそれに気づき、同じ結論に至った。


タースの心の中「……握手会のマイクの線に紛らわせていたのか…だが……使える!」


シスリアはタースに向かって冷静に指示を出した。


シスリア「ソルツさん、ブレーカーのある部屋に行けますか?」


タースは一瞬だけ考え、短く答える。


タース「……会場は施錠されている…だが、こじ開けるしかない……時間が間に合うかは分からないがな…」


シスリア「お願いします」


タースは即座に動き出した。

その背中を見送りながら、シスリアは冷静に会場全体を観察し、ネイバーの動きを注視した。


タースの行動――ブレーカー室への突破


タースは鍵のかかったドアに到達すると、体の力を全て使ってドアを押し開けようとした。


タースの心の中「5分以内に全て終わらせる……そうすれば俺はまだシスリアを始末する計画に戻れる」


その一方で、時間のプレッシャーが彼の中に重くのしかかる。


タースの心の中「ここで失敗したら全て終わる…いや、終わらせない!」


タースはドアを開けることに成功した。


爆弾ベルトを身にまとい、不敵な笑みを浮かべるネイバー。

だが、その笑みはシスリアの冷静な言葉によって砕かれた。


シスリア「ネイバーさん、あなたを逮捕します」


ネイバーは嘲笑を浮かべた。


ネイバー「まだそんな戯れ言を……!」


その瞬間、彼が爆弾のボタンを押した。だが…


会場全体が真っ暗になり、電気が一気に落ちた。


ネイバーの心の中:

「……しまった! まさか! 施錠したはずなのに……!」


タースがブレーカーを落とすまでのわずかな時間で、シスリアは的確に動いた。


シスリア「今です!」


シスリアの指示で、会場にいた大勢の人々が一斉にネイバーを取り押さえた。

ネイバーの体から爆弾ベルトが取り外され、彼の動きは完全に封じられた。


タースの行動…殺し屋の技術


タースはブレーカー室で、施錠されたドアをわずか数秒で突破した。

もし彼がただの刑事だったならば、間に合うことはなかっただろう。

だが、タースは殺し屋としての技能を駆使して、それを可能にした。


タースの心の中「……ふん、あんな簡単な施錠ごときなら…全然良い…しかし…終わりじゃない…シスリア…」


一件落着…警察の到着


会場が落ち着きを取り戻した頃、警察と爆弾処理班が到着した。

ネイバーは完全に拘束され、爆弾も安全に処理された。


事務所での余韻


事件が解決したその夜、シスリア、タース、そしてマサトは事務所で一息ついていた。

シスリアは静かに言葉を紡ぐ。


シスリア「……終わりましたね、ソルツさん」


タースは肩をすくめながら答える。


タース「あぁ……そうだなぁ。今回はパンケーキを奢ってやろう」


だが、その言葉の裏には冷たい殺意が隠れていた。


タースの心の中「次はお前だからな、シスリア」


一方で、マサトが緊張感を和らげるように話し出した。


マサト「ほんと、危なかったっすよねぇ! あの爆弾……電気で止められなかったら終わりでしたもんね」


タースは冷静に答えた。


タース「……そうだな。もしあれが電気を使わないタイプだったら、全員ここにはいなかっただろう」


シスリアはそんな二人の会話を聞きながら、ふと目を閉じて事件を思い返していた。


カフェに行く前…タースは念のためトイレ借りたい…などといい…先に行かせといてUSBメモリを盗っておく…


カフェへの帰路


三人はカフェへ向かう途中、静かな夜道を歩いていた。

その空気の中で、シスリアとタースの間には言葉にできない緊張感が漂っていた。


シスリアは何かに気付いているのか、いないのか。

タースの心の奥底には、冷静なまま燃える次の計画が刻まれていた。


タースの心の中「この事件は終わった……だが、俺にとっての最後のターゲットはまだここにいる」


次の物語は、新たな局面に突入しようとしていた。


第4章:アゲイン


タースの決意…勝負再開


タースは基地に戻り、椅子に深く腰掛けた。机の上には今回の事件に関する資料が散らばっていたが、彼はそれらには目もくれず、静かに目を閉じた。


タースの心の中「……シスリア、あの時間は実に興味深かった」


彼女と共に捜査した数々の瞬間…その推理の優先順位、考え方、そしてその行動パターン…タースはその全てを頭の中に刻み込んでいた。


タースの心の中「一緒に捜査していた間にも"事故"は起き続けていた……」


それが意味するもの…周囲には依然として TSタース が活動していると思わせる。これによって、シスリアが ソルツ刑事が本当はタースである と結論付ける可能性は皆無だ。


タースの心の中「全て計画の内……」


彼は軽く笑みを浮かべ、立ち上がった。


タースの心の中「次はタースとしての俺がどんどん仕掛けていく…勝負再開だ、シスリア!」


シスリア…束の間の休息


一方、シスリアは長期間続いた事件捜査の疲労がピークに達していた。

彼女は事務所のソファに倒れ込むようにして寝ており、その腕には小さな熊のぬいぐるみが抱きしめられていた。


普段は冷静で完璧な探偵である彼女の、その無防備な姿を見て、マサトは思わず足を止めた。


マサト「……シスリアさん…こんなふうに寝るんだ…」


彼は驚きながらも、声を掛けることはせず、そっと部屋を後にした。


マサト「…ゆっくり休んでくださいね…シスリアさん…」


次のステージへ…再び始まる攻防


タースは基地で新たな計画を練り始め、シスリアは短い眠りの中で次なる事件に備えている。

二人の攻防は、さらに激化していく兆しを見せていた。


次の日、シスリアは再び TSタース に関する捜査に戻った。

事故に見える計画的な犯行…それが彼女の調査の焦点であり、解明すべき謎だった。


しかし、今度の捜査がタースにとって ピンチ をもたらすことは間違いなかった。


朝のルーティンとして、シスリアはいつものカフェに向かった。

だが、今回は以前にも増して、大量のシロップをパンケーキにかけていた。

その様子にマサトも驚愕する。


マサト「シスリアさん、それ……どんだけシロップかけてるんですか!? いつもの倍どころじゃないっすよ!」


シスリアは特に動じることもなく、冷静に答える。


シスリア「……これが私の"回復"方法です。問題ありません」


マサトはその言葉に何も言えなくなり、黙ってパンケーキを食べる彼女を見守るだけだった。


事故現場…シスリアの直感


シスリアはその後、次々と事故現場を訪れた。だが、どの現場を調べても、そこには計画性を示す証拠は一切見当たらなかった。

全てが ただの事故 に見えたのだ。


シスリアの心の中「……これは本当に事故? それとも100%事故に見えるように計画されたもの…」


シスリアは冷静に考え込む。どちらにせよ、確たる証拠がなければ先に進むことはできない。


シスリアの疑念――ソルツ刑事タースへの不信感


何件もの事故現場を訪れ、調査を進める中で、シスリアの頭にある一つの疑念が浮かび上がってきた―― ソルツ刑事タース への疑いだ。


シスリアの心の中「……なぜ彼は捜査協力をした?」

シスリアの心の中で、その行動が引っ掛かっていた。


もしソルツ刑事が本当にTSであれば、あの時なぜ捜査に協力し、何もせずに事件を解決させたのか。

矛盾しているように思えたが、それでも彼女の直感はソルツ刑事への疑いを完全には捨てられなかった。



その頃、タースは基地で今回のシスリアの動きについて考えを巡らせていた。


タースの心の中「……シスリアが再び俺の捜査に戻った。これは厄介だ」


彼が事故に見せかけて計画を実行している間、シスリアはその完璧な演出に疑いを抱きつつも、決定的な証拠を見つけられないでいる。

だが――。


タースの心の中「もし彼女が俺をソルツ刑事として疑い続けるならば、計画に穴が生まれる可能性がある……」


タースは冷静にそのリスクを分析し、次の一手を練り始めた。


緊張が高まる…シスリアとタースの攻防


シスリアは冷静にTSの足跡を追い続け、タースはその裏で次の計画を進めていた。

二人の駆け引きは、さらに緊迫した展開へと突入しようとしていた――。


タース「シスリア……お前がどこまで来れるか見ものだ。だが、勝つのは俺だ」


シスリア「ソルツ刑事……あなたが何を隠しているのか、見極めてみせます」


基地で一息つくタースは、自分の計画に新たな選択肢を加えるべきか考えていた。


タースの心の中「……いっそのこと、シスリアの命を狙うか?」


彼女が ソルツ刑事タース を慎重派として見ていることは明らかだ。

もしここで大胆な動きを見せれば、逆に彼女を混乱させ、TSとしての自分から疑いをそらすことも可能だった。


タースの心の中「……もし失敗しても、それはTSの仕業ではないと考えるだろう。大胆に動く価値はあるかもしれない」


タースは深く考え込みながらも、心の中で決断し始めていた。



一方その頃、シスリアはスマホに保存した数々の事故現場の写真を確認していた。

その中には、彼女が仕掛けた"罠"が功を奏した証拠も含まれていた。


シスリア「……これで確実です」


彼女がカメラを設置していたのは、統計的に事故が最も多い場所だった。

その読みが的中し、TSがその場所を利用して車の事故を演出する様子が記録されていたのだ。


シスリアの心の中「……この映像があれば、TSの正体に一歩近づけます」


シスリアの心は冷静だった。だが、その内側には明確な勝利への確信が芽生えていた。


シスリアは映像を繰り返し確認した。そこには、TSが車の事故を演出している様子が鮮明に映し出されていた。


だが、あるポイントで映像に写り込んだTSの姿が、カメラに正面から映り込んでいることに気付く。


シスリアの心の中「……この姿、どこかで見たことがある?」


彼女の脳裏に浮かぶのは、これまでの捜査中に接触してきた人物たちだった。


二人の攻防が交錯する――タースの動き


タースは基地を後にし、次の行動を決めていた。


タースの心の中「シスリア、お前の命を奪うかどうか……その決断を下すのは今だ」


一方、シスリアは手にした証拠を整理し、次の行動を計画していた。


シスリアの心の中「……この証拠をソルツ刑事にも見せるべきでしょうか?」


彼女は迷いながらも、タースの動きに気を配り続ける。

二人の攻防は、さらに激しい局面を迎えようとしていた。


タースへのメール――計画変更の必要性


タースが計画を実行しようとしていた矢先、スマホに通知が届いた。

差出人は――マサト。


メールの内容を確認すると、そこには TSとして動いている自分の姿が映った写真 が添付されていた。


タースの心の中「まさか……隠しカメラで撮られていたのか? くそ……シスリアがあてずっぽうで動いたにしては、的確すぎる」


タースは計画を一旦停止し、新たな案を練り始めた。


タースの心の中「だが、今こそ奴らの先を行くチャンスだ。……良いことを思いついた」


タースの新たな計画――録音と事故


計画はこうだった。


1. ソルツ刑事としての声を録音 しておく。


2. 録音した音声を使い、電話をかける。


3. シスリアが電話に出た瞬間、録音された声を使うことで、電話越しの音声が本物だと信じ込ませる。


4. シスリアが電話を持ちながら油断しているタイミングで、事故を起こしてスマホを奪う。


5. 可能であれば、シスリアをその場で始末する。


タースはすでに車を手配済みだった。


タースの心の中「……完璧だ。これでやつのデータを奪い、完全に俺の計画を続行する」


シスリアの行動――データのバックアップ


一方その頃、シスリアは事務所でデータのバックアップを取ろうとしていた。

だが、USBメモリを探しても見つからない。


シスリア「……確かにここにあったはずなのに」


その時、彼女はハッと気付いた。


シスリアの心の中「……まさか、ソルツ刑事が…?事務所に入れたのはここ最近でソルツ刑事のみ…」


冷静に考えながらも、今はデータの保管が優先だと判断し、急遽USBメモリを購入しに外に出ることにした。

ただし、その前にマサトのスマホから送った写真のデータを削除しておくことを忘れなかった。


計画開始――シスリアの外出


シスリアがUSBメモリを購入するため事務所を出た瞬間、タースはその姿を目撃した。


タースの心の中「……よし、計画を始める!」


彼は冷静にスマホを操作し、録音したソルツ刑事の音声を再生させながらシスリアに電話をかけた。


電話のトラップ――事故計画の発動


シスリアのスマホが鳴る。

画面には ソルツ刑事 の名前が表示されていた。


シスリアは冷静に電話を取る。


シスリア「はい、シスリアです――」


電話越しにはソルツ刑事タースの声が聞こえる。


タース音声「シスリアさん、すぐにお伝えしたいことがあります。捜査の新しい情報です……」


だがその瞬間――タースの車が勢いよくシスリアに向かって突っ込んできた。


シスリアの危機――冷静な対応


シスリアは咄嗟の判断でスマホを手から離し、車の動きを見て一瞬で状況を把握した

シスリアの観察力…タースは私服とは違うタースでさえも見抜いた…シスリアはタース…ソルツ刑事に送迎してもらってる時の運転を観察をしていたのだ…


シスリアの心の中「……これがソルツ刑事の仕業だと?」


彼女は素早く道の端に避け、なんとか車との接触を避けたが、その衝撃でスマホは地面に落ちた。

タースはその隙を突き、車を止めると同時にスマホを奪い取ろうとした。


だが――。


シスリアの逆転の一手


シスリアは素早く動き、タースがスマホに手を伸ばした瞬間に足をかけて転ばせた。


シスリア「……ソルツ刑事、随分と大胆ですね」


タースは冷静を装いながら、即座に立ち上がり言い訳を口にする。


タース「申し訳ない! あなたを避けようとして……事故を起こすつもりはなかった!」


だが、シスリアの目は冷徹だった。


シスリア「……あなたが事故を演出しようとしたのは明らかです。さあ…そのスマホを置いていただけますか?」


タースの心の中――さらなる策を練る


タースは内心で焦りを感じながらも、冷静を保っていた。


タースの心の中「……この女、一筋縄ではいかない。だが、これで終わりじゃない。俺にはまだ手がある」


彼はスマホを地面に置くふりをしながら、新たな策を頭の中で練り始めた。


シスリアに冷徹な目で詰め寄られたタースは、静かに言葉を発した。


タース「そういうわけにもいかない……」


シスリアは一瞬、眉をひそめる。


シスリア「……?」


だが、その疑問が解消される前に、タースは密かに用意していた 最後の一手 を実行に移した。


タースの心の中「車を現物にぶつけた理由…それは爆発を計画に含めていたからだ…衝突した後なら誰が目撃しようと爆発したのは衝突したから…というように見える…」


タースは懐からリモコンを取り出し、ボタンを押す。


ドン――!!


仕掛けられていた爆弾が起爆し、車は大きな爆発を起こした。

タースは爆風が起きる瞬間に安全な距離へと飛び退いていたが、シスリアは対応が間に合わず、その場で爆風に巻き込まれた。


シスリア「きゃっ!?」


爆風で吹き飛ばされたシスリアは地面に叩きつけられ、うめき声を上げた。

その隙を見て、タースは冷静かつ迅速に近づき、倒れたシスリアの脚を全力で蹴りつけた。


ゴッ――!!


シスリア「ぅっ…!?」


シスリアの顔が一瞬苦痛に歪む。追撃の可能性を完全に断つため、タースは的確に行動していた。


タース「……これでお前は追ってこれない」


タースはそのまま素早く現場から姿を消した。


地面に横たわりながらも

シスリアの目は冷静だった。

激痛を感じながらも、彼女は爆発の状況とタースの動きを分析していた。


シスリアの心の中「……車に爆弾を仕掛けていた……これは計画的……」


彼女はスマホを探そうと手を伸ばしたが、落下した際の衝撃でスマホは壊れており、中のチップも使用不能になっていた。


シスリアの心の中「まずは……事務所に戻る必要がありますね……」


彼女は痛む脚を引きずりながら、なんとか立ち上がろうとした。


タースは遠くのビルの影からシスリアの動きを見ていた。


タースの心の中「……やはり簡単にはくたばらないか。だが、これでしばらくは追ってこれないだろう」


タースは基地に戻り、冷静に次の一手を考えていた。


タースの心の中「……ソルツ刑事としてはもう現れることはできない。あいつにはもう騙せない」


しかし、変装の可能性を完全に失ったわけではない。


タースの心の中「ナンパ男としての変装ならまだ使える。だが、捜査に紛れるなんて不可能…接触のみ…それは最終手段だ……」


彼はさらに深く考えた。


タースの心の中「……そうだ。別の刑事を利用すればいい」


計画はこうだった。


1. 別の刑事に近づき、その信頼を得る。


2. 刑事にシスリアを紹介させることで、シスリアの警戒心を逸らす。


3. シスリアがその刑事を疑い始めるよう誘導する。


タースの心の中「…シスリアは次接触してきた刑事を疑うだろう…もしこれが成功すれば、シスリアの注意を完全に逸らすことができる……」


一方その頃、シスリアはようやく事務所に戻ってきた。

脚を引きずりながらも椅子に座り、深く息を吐いた。


マサトが慌てて駆け寄る。


マサト「シスリアさん、大丈夫ですか!? 一体何が……」


シスリア「…はぁ…はぁ…マサトさん…よく聞いてください…」


シスリアは冷静に状況を説明した。

だが、以前のスマホが爆発で破損し、データが全て失われたことについては触れずにいた…マサトに教えてろくなことはない…


新しいスマホとシスリアの推理


次の日、治療を受けた後、シスリアは新しいスマホを手に入れた。

だが、以前のデータが失われたことが彼女にとって大きな痛手だった。


シスリアの心の中「……これまでの証拠が全てなくなった…だけど…これで捜査を諦めるわけにはいかない…」


シスリアは頭を整理しながら、ふと自問する。


シスリアの心の中「もしソルツ刑事が本当にTSだった場合……次に彼が取る行動は何…?」


彼女の推理は徐々に形を成していく。


続く

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