第2章:見易い罠
第2章:見易い罠
タースの計画…信憑性の構築
タースは静かな夜に動き出した。完璧な"殺し屋"としての計画と、"ソルツ刑事"としての計画が重なり合う、精巧な作戦だ。
タースの心の中「まずは一つ"事件"を起こす……その現場にはわざと見つかりやすい証拠を残す。そして、その裏に"隠した証拠"を用意する…つまり…見つかりやすい証拠のせいで隠れた証拠でさえ見つけようとしないかもしれない…見つけようとしてもそう簡単には見つからない…そして…見つかったとしても…ふっ…シスリアはおそらく見つけるタイプ…だが今回はテストのようなもの…やつが本当に見つけようとするタイプなのかを確定させる…そして見つけるタイプなら…次の現場にいるタイミングで…殺す!」
タースは手袋をはめ、火薬の残り香が漂う道具をそっと仕舞う。
次の朝、事件は町の小さな廃工場で発見され、警察の動きが活発になった。
…
タース(ソルツ刑事)とマサトの接触
翌日、タースは"ソルツ刑事"として、マサトと接触した。
二人は人気の少ない公園で向かい合い、タースはわざと低いトーンで語りかける。
タース「マサト君。実は新たな証拠が見つかりそうなんだが、まだ警察内部での確認が必要でね」
マサト「え? 証拠? なんだなんだ?」
タースは警察手帳を取り出し、シリアスな雰囲気を作り出す。そして低い声で続ける。
タース「この件、君には内密にしてほしい。シスリア探偵にもだ。見つけ次第、君にだけ伝えるから……私の言うことを信じてくれ」
マサトは目を輝かせながら頷いた。
マサト「わ、わかりました!任せてください、ソルツ刑事!」
タースの心の中では冷笑が浮かぶ。
タースの心の中「これでいい……マサトは単純だ。そして"俺"を信じ込むだろう。次に俺が見つける証拠は本物だが…"見せたい利用できる証拠"だけだ」
一方、シスリア…事件現場
シスリアはマサトがソルツ刑事と会っている時間を利用し、一人で事件の現場へと向かっていた。そこは廃工場の一角で、焦げ跡や微細な痕跡が残る場所。
シスリア「……見つかりやすい証拠ですね」
シスリアは現場の中心に目を向けた。火薬の痕跡や焦げたライター、まるで"分かりやすく"配置されているかのような証拠たち。
しかし、シスリアは違和感を覚えた。
シスリアの心の中「……これほど分かりやすい証拠が残るはずがない。つまり"わざと残された"可能性が高い…でもなんで……TSはこんなに簡単じゃなかった…違う人物か…あるいは…TSの何らかの計画…」
シスリアはさらに細かく現場を調べ始めた。そして、その隠されたように見えた"一つの証拠"に手が止まる。小さな ネジの破片 が、埃に紛れるように落ちていた。
シスリア「これは……本物?」
シスリアの目が細められる。わざと隠されているようにも見えるが、微妙な不自然さを感じた。
シスリア「この証拠だけが"少し分かりにくい"。他の証拠と比べて異質……」
同時刻…タースの動き
一方で、タースは計画の通り、"ソルツ刑事"として動き出していた。彼はマサトに電話をし、意図的にこう伝える。
タース「マサト君、実は"隠されていた証拠"を見つけたんだ。ネジの破片だ。おそらく機械の部品が犯行に使われた可能性がある」
マサトは興奮して答える。
マサト「えっ、すごいじゃないですか! さすがソルツ刑事!」
タースの心の中には冷笑が広がっていた。
タースの心の中「これでいい。ネジの破片は本物だ。だが"分かりにくかった"証拠を俺が見つけたことで、信憑性は増す。マサトはいうことを聞かずにシスリアに伝えるだろう。だがそれで良い…そしてシスリアは"ソルツ刑事"の力を認めざるを得ない…」
シスリアの疑念
その後、シスリアは事務所に戻り、改めて現場で見つけた証拠…ネジの破片を手に取りながら考え込んだ。
シスリアの心の中「……あのネジの破片。確かに本物だとは思う。けれど……何かがおかしい…」
シスリアの頭の中には、わずかな違和感が渦巻いていた。
シスリアの心の中「"誰かが証拠を利用しようとしていた"……?」
探偵と殺し屋の心理戦は、より一層緊迫感を増し、互いの計画が交差し始めていた。
翌朝、事務所でシスリアはマサトから証拠のことを聞いていた。
マサト「シスリア! ソルツ刑事が言ってた証拠って、ネジだったよな? 写真も見せてもらったんだけどさ、シスリアが見つけたやつとまったく同じだよ!」
シスリアは静かにマサトの話を聞きながら、その裏に潜む違和感を整理していた。
シスリア「……同じ証拠……」
彼女の頭には、昨夜見つけたネジとその場所、ソルツ刑事の動きが浮かび上がっていた。
シスリア「マサトさん、その時のソルツ刑事の様子を詳しく教えてください」
マサトは首を傾げながら答える。
マサト「えっと……なんかすごく手際よくてさ、"これが犯行に使われたものだ"ってすぐに言い切った感じ? なんか探偵みたいだったぜ!」
その言葉にシスリアの表情が僅かに硬くなる。
シスリア「……探偵、のように……?言い切った…」
シスリアは一度目を閉じ、長考する。やがて、彼女はゆっくりと立ち上がった。
シスリアの心の中「もしマサトくんの言ってる事が正しいのならば…ソルツは本当に犯人に近しいか…捜査の能力が高いかの二択…絞れてきてる…」
シスリア「再び現場に行きます。今度は時間をかけて、全てを見て来ます」
廃工場――シスリアの再調査
シスリアは一人、再び廃工場へと向かった。これまでよりもさらに慎重に、ゆっくりとした足取りで調査を開始する。
彼女は工場内の隅々まで目を通し、ネジに合致する道具や置物、機械の部品を全て確認した。だが…
シスリア「……ない」
ネジに合致するものは何一つとして見当たらなかった。
シスリアは立ち止まり、その冷静な目でネジを見つめる。
シスリアの心の中「つまり、このネジは"別の場所"から持ち込まれたもの…あるいは移動された…」
彼女はさらに思考を巡らせる。
シスリアの心の中「事故に見せかけるのなら、普通はネジに合った何かをその場に残しておくはず…だけどそれがない……」
そう…事故に見せかけるならまず移動させるなんて事する必要もないのだ
だが、彼女は同時に感じていた。
シスリア「それでも…このネジのついていた物は本当に使われた"気がしてしまう"。撹乱ではない、そう思わせる"確かさ"がある……」
シスリアはゆっくりと視線を上げた。
「……この証拠には、"意図"が隠されている…」
一方、タース――完璧な安全作の布石
同じ頃、タースは基地で冷静に動いていた。彼はシスリアの行動パターンを探るために、ある一手を仕込んでいた。
タースは手に持つ"ネジに合致する証拠"を慎重に運び込んでいた。シスリアが捜査中の南工場に、その証拠をわざと残すためだ。
タースの心の中「シスリアの動き方を探る…そのために、"撒き餌"を仕掛ける」
この地域には、シスリアが調査している工場を中心に、東西南北に一つずつ工場が存在する。
タースの考えはこうだ。
タースの心の中「もしシスリアが西の工場(左)へ動いたならば、次は北(上)か南(下)へ向かう可能性が高い」
北
西 東
南
そして…もし北(上)に行ったとする…
シスリアの捜索パターンが "時計回り" ならば、その次は東(右)で待ち伏せができる。いや…"反時計回り" でも東で待ち伏せることになる…証拠が先に見つかってもやつの事だ…全て捜査するだろう…つまり…場合によるが例だと東にさえいれば…俺は奴が一人の状況を作れる…
タースの心の中「他にも様々なパターン…最初から上下パターンもあるが…二番目に行った工場さえ理解できれば待ち伏せ場所…三択目のトラップは確定する…ふん……シスリア、お前がどう動くか。どちらにしても俺には"手が読める"」
タースは証拠を静かに設置しながら、冷たく笑った。
タースの心の中「お前の行動パターンさえ掴めば、次は"先回り"できる。そして…罠に嵌めるだけだ」
タースの心の中「どこをいつ調査してるかは移動時間を考慮する必要があるが…監視カメラを仕掛けてある…カメラがバレる前に…俺が始末する…まぁ…見つかることはないだろう…なんせ…手間暇かけて一つずつ見ずらい天井近くにつけたんだ…」
完璧な作戦。シスリアの行動を手に取るように予測し、完全に支配するための布石だった。
そしてシスリアは南から西へと行った
タース「よし…北だ…」
シスリアの気づき
その夜、シスリアは事務所に戻り、ネジのことを改めて考えていた。
シスリアの心の中「……このネジは確かに"意図的に"持ち込まれた。けれど…それでも、何かが引っかかる…」
シスリアの瞳には静かな光が宿っていた。彼女は何かを掴みかけているが、まだ答えには届かない。
一方で、タースは静かに次の罠を仕掛けるための準備を進めていた――。
探偵と殺し屋の心理戦は、互いに一歩先を読む緊迫した展開を迎えつつある。
シスリアは真実に近づけるのか? それともタースが先に彼女の動きを封じるのか――。
シスリアの直感――東西南北の違和感
夜、シスリアは事務所で一人、地図に目を落としていた。現場となった廃工場の位置を中心に、東西南北それぞれに工場が存在することに気づく。
シスリア「……なるほど…」
シスリアは地図に静かに指を這わせながら、冷静に思考を巡らせた。
シスリアの心の中「東西南北に工場が存在し、そこを利用して犯人は"事故死"を仕組んだ……さらに証拠を隠し、私たちを捜索させてる…だけど…」
彼女の目が鋭く光る。
シスリアの心の中「これは"陽動"?」
シスリアの頭には、犯人が高度な策を練っていることがはっきりと見えていた。
シスリアの心の中「もしTSだった場合…確実に今までのデータにないような行動をしてる…証拠を移動させるなんてありえない…つまり確実に罠…違ったとしても…その場にネジに合うものがないのはおかしい…証拠隠滅のため…?違う…」
シスリアの心の中「犯人は賢い。ならば必ず私を始末する策を考えてくる…なら…現時点で出来る事…最も疑わしい人物…"ソルツ刑事"。彼を誘い込んでみる……」
シスリアの策――ソルツ刑事を誘う
シスリアの考えはこうだ。ソルツ刑事に対し、こう伝える。
「"何かが分かった"。一緒に捜査を進めたいです…」と…
もしこの誘いが断られたなら
それ以上の捜査をやめ、次の事件が起こるまで待つ。そしてソルツ刑事への疑惑をさらに高め、より危険視する事になる
探偵として、シスリアは一度に全てを暴くつもりはない。相手が"賢い"ならば、それを利用し慎重に罠を仕掛けていく。
シスリアの心の中「……犯人は必ずミスをする…それが"焦り"の瞬間…」
シスリアはゆっくりと立ち上がり、机の上の地図を折り畳んだ。
シスリア「ソルツ刑事に連絡を入れましょう」
マサト「え…はいっ…」
一方、タース…仕掛けられる罠
その頃、タースは基地でシスリアの行動を予測し、計画の次の一手を考えていた。
タースの心の中「シスリアは間違いなく俺の証拠に疑念を持ったはずだ。だが、それでも証拠を手にしている以上、奴は動く」
タースの目が冷たく光る。
「だがその動きは俺の手のひらの上だ――東西南北、奴がどの方向へ進んでも次は"待ち伏せ"ができる」
彼の計画は完璧だった。
タースの心の中「シスリア、どう動く? その先に待っているのは…お前の"終わり"だ」
そこにシスリアからの連絡が届く。
シスリア「ソルツ刑事。お伝えしたいことがあります、一緒に次の捜査を進めませんか?」
タースは表面上、穏やかな笑みを浮かべる。
タースの心の中「……なるほど。シスリア、貴様も動く気か…」
だが内心、タースは僅かな警戒を強めた。
タースの心の中「勘づいたか…簡単じゃない…か…いや…逆の探偵の罠か? いや……この誘いは俺にとってもチャンスだ」
彼は電話に静かに答えた。
タース「分かりました。では、明日、現場で合流しましょう」
…
夜…シスリアの確信
シスリアは電話を終え、静かに息を吐いた。
シスリア「……来る、か」
もし彼が犯人ならば、明日こそ必ず何かの"隙"が見えるはず。そしてその一瞬の隙を、シスリアは決して逃さない。
探偵と殺し屋の心理戦は、互いに次の手を読み合いながら、より複雑に絡み合っていく
タースの完璧な準備
タースは夜の基地で静かに策を練り、最終的な計画を組み立てていた。
タースの心の中「奴らと現場で待ち合わせする…だが、何も用意していないわけがない」
彼の狙いはシンプルだ。 "現場に先に到着し、完全に主導権を握る" ことだ。そのために、彼は慎重に"妨害"を仕込んだ。
タースの心の中「しかし…次やつが行くと確定していた所のトラップは排除するしかない…怪しまれる他に…誘導してるとバレ…トラップがあったら俺と確実になってしまう」
タースの行動:タイタンとしての接触
タースはシスリアの足を遅らせるため、早朝にマサトへ連絡を入れた。もちろん、"ソルツ刑事の部下"である タイタン としてだ…ソルツとして送ってしまうと怪しまれてしまう…タイタンという名前が使いにくくなるが仕方がない
メールをする…
「マサト君、シスリア探偵に色々と聞いておいてほしいことがあるんだ。次の捜査に役立つかもしれないからね」
内容は極めて単純な質問――。
「前回の現場で見つけたライターって、どの部分が焦げてたの?」
「工場のネジの写真、もう一回詳しく説明してもらえる?」
「なんで事故に見えるのか考えたことある?」
どれも"簡単すぎる"ものばかり。しかし、それでいい。シスリアが冷静に答えるには無駄な時間がかかる。タースはそれを利用し、シスリアを遅らせるつもりだった。
タースの心の中「……これなら奴らは、確実に遅れる」
早朝…現場への到着
タースは約束の時間通りに現場へと到着した。目の前には数人の警察官がすでに到着している。
タースの心の中で冷静な計算が始まる。
タースの心の中「やはり、警察を呼んだか…一人…奴がいたら二人…それは極めて危ないと考えたか…俺の変装がバレる可能性も考慮していたが…これも計画の内だ」
タースは迷いなく警察官に向かい、堂々と口を開いた。
タース「私、探偵のソルツと申します。捜査の協力を依頼されています」
警察官は一瞬驚いた顔を見せるが、タースの冷静な態度と完璧な振る舞いにすぐに納得する。
警察官「探偵の方ですか? ご苦労様です」
タースはさらに続ける。
タース「私たち探偵は独自の視点で捜査を行いますので、警察の皆さんは"別々に"捜査を進めていただけますか?」
警察官たちは頷き、それぞれ動き始めた。タースは内心ほくそ笑む。
タースの心の中「これでいい。俺が警察に"探偵"だと認識されていれば、シスリア達の前で"刑事"として振る舞っても矛盾はない」
それに…別々と言ったんだ…関わってこない…つまり…警察官が"探偵"だったんじゃ?"と…シスリア達の前でボロを出すことはない。完璧だ……
一方、シスリアとマサト
その頃、シスリアは事務所を出る前にマサトから"質問攻め"にあっていた。
マサト「ねえシスリア! 前のネジの焦げ跡って、どんな形だったっけ?」
マサト「それとさ、ライターの写真、あれ焦げ方どうなってたんすか?」
シスリアは冷静に答えながらも、微かに眉をひそめた。
シスリア「……マサトさん、何故急にそんなことを聞くんですか?」
マサト「え、いや……タイタンって人が聞いてほしいって…」
シスリアは無言でマサトを見つめる。
シスリアの心の中「……タイタン。"ソルツ刑事の部下"が?」
彼女の中に小さな疑念が芽生えつつも、質問に丁寧に答え続けることで時間が過ぎてしまった。結果として、シスリアとマサトは 予定より遅れて 現場に到着することとなった。
現場…タースの完全な演技
タースは現場でシスリアたちを迎える形になった。警察はすでに動き出しており、彼は"刑事"として堂々と振る舞う。
タース「シスリア探偵、お待ちしていました。先ほどから警察にも協力してもらっています」
シスリアはタース…"ソルツ刑事"を静かに見つめる。
シスリアの直感
シスリアは遅れながらも、冷静に現場を見渡しながら考えていた。
シスリアの心の中「……何かがおかしい。だが、ソルツ刑事の行動には"矛盾"がない」
彼女の直感は、まだ完全にはタースの正体を掴めていなかった。しかし、わずかな違和感が彼女の中で確実に積み上がっている。
シスリアの心の中「この男、どこまで信用していいのか…」
探偵と殺し屋の心理戦は、シスリアの疑念とタースの冷徹な計画が交錯し、より一層緊迫していく。
シスリアは真実を暴くことができるのか? それともタースが先に罠を完成させるのか…
シスリア、マサト、そして"ソルツ刑事"としてのタースは、現場の捜査を続けていた。そして、ついにタースの仕掛けた"答え"に辿り着く。
シスリア「……これは金床ですね」
シスリアが静かに呟いた。廃工場の隅に、埃をかぶった金床が鎮座している…さらに血液も…その近くには、例の ネジ が転がっていた。
タースは表面上、真剣な表情を浮かべつつ内心で微笑む。
タースの心の中「計画通りだ…この発見が、シスリアの考察を"金床"に向かわせる…つまり今は俺は怪しまれにくい…」
シスリアの推理…違和感と新たな確信
シスリアは金床とネジを見つめ、考察を始める。
シスリアの心の中「金床が使われた……? もし事故に見せかけるなら…例えば…上から吊るして落とす…という方法が考えられる…そうすれば、衝撃でネジが外れたと説明できるし、被害者の傷の理由にもなる……」
彼女は眉をひそめながら続けた。
シスリアの心の中「だけどそれでは"事故に見せかける"には不自然すぎる」
金床を使った事故のシナリオにはどこか、"強引さ"が漂っていた。そして、もう一つ
「……ライターや他の"見つかりやすい証拠"は、実際には使われていなかったことが確定しました」
マサト「確かに…使われた感じはしませんね…」
シスリアは金床を前に冷静に推理を進めながら、心の中で確信していた。
シスリアの心の中「犯人は意図的に"見つかりやすい証拠"を散らし、こちらを撹乱しようとしていた…?」
シスリアの心の中「この感じ…似てる…」
ー思い出しー
タース「実は、今回の事故現場から"ある証拠"を回収しました。おそらく、お二人の捜査にも役立つかと思いましてね」
タースはコートの内ポケットから一枚の写真を取り出し、テーブルに差し出した。それは オイルが染み込んだように見える焦げた階段 の写真だった。
ー思い出し終了ー
シスリアの心の中「まったく違った証拠があること…」
彼女の目が鋭く光る。
「ただし…金床には、別の"意図"がある……?」
一方、マサトは金床を指さしながら嬉しそうに言った。
マサト「ねえシスリア! これ、もしかして犯人が"鍛冶屋"なんじゃないか? それか、これを持ち上げて投げたとかっすよ!」
シスリアは無言でマサトに冷えた眼光を向けた。
シスリア「……それが可能ならば、犯人は"超人"でしょうね」
マサト「え? 違う?」
シスリアは静かにため息をつき、金床の細部を観察し続けた。
タース…次の一手
タースは二人の捜査の様子を少し離れた場所からじっと観察していた。シスリアが推理を続け、マサトが無邪気に振る舞う姿を見ながら、次の計画を練る。
タースの心の中「次の作戦は"二人を俺の車で送ること"だ」
タースの考えはこうだ。
タースの心の中「捜査の後、刑事として"親切心"を見せ、二人を送る。それで事務所の場所を特定する」
シスリアの居場所が分かれば、次の作戦の選択肢が広がる。事務所の出入りを把握すれば、"事故"に見せかける機会はいくらでも作れる。
タースの心の中「……この作戦が成功しなくても構わない。だが、挑戦しておく価値はある」
タースは金床を確認するシスリアとマサトにゆっくりと歩み寄り、穏やかな声で言った。
タース「お二人とも、長い捜査でお疲れでしょう。よければ、私が車でお送りしましょう」
マサトが目を輝かせる。
マサト「えっ、マジっすか? ありがとうございます、刑事さん!」
シスリアは一瞬タースを見つめ、考え込んだが、やがて静かに頷いた。
シスリアの心の中「ここで断ったら怪しんでるのがばれてしまう…そうしたら相手のミスが見にくくなる…」
シスリア「……では、お言葉に甘えましょう」
タースの心の中「来た…!」
シスリアの疑念――車内での沈黙
車の中、マサトは後部座席で居眠りをしている。タースは運転席から静かにハンドルを握り、助手席のシスリアに声をかける。
タース「今日の捜査で、何か掴めましたか?」
シスリア「……少しだけ」
シスリアは車窓の外を見つめながら、冷静に答えた。彼女の心には、わずかな違和感が消えずに残っていた。
シスリアの心の中「ソルツ刑事……あなたは"何者"ですか?」
シスリアの直感が、タースの完璧な演技に微かな疑念を抱き続けていることを示していた。
探偵と殺し屋の心理戦は、静かに、しかし確実に深まっていく。
タースの罠は完成しつつあるのか? それともシスリアが真実へと一歩近づいているのか