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これからどうしたらいいんだろう。

 カフェで沢山おしゃべりした後は、聖女教会に赴いた。


 今回のことを聖女様にご相談するためだ。


 約束していないから難しいかと思ったけれど、すんなり通して貰うことができた。


「聖女様。この度は面会に応じていただき、ありがとうございます」

「構いませんよ。私が歳だからと、あまり仕事をさせてくれなくなりましてね。暇を持て余していることが多いのです。ですから、こうして顔を出してくださるのは、とても嬉しいのですよ」

「そうおっしゃっていただけるなら光栄です」

「さて。挨拶はこれくらいにして、今日はどのようなご用件ですか?」


 ここからが大事なところだ。

 魔石の問題と、次期聖女の名を振るう許可。

 これらをどうにかしないと、事態が解決しないから。

 隠し事をして不信感を持たせたくないので、駆け引きなしで素直に言うことにした。


「実は、リリアナさんが行っている魔道具事業が、危機に陥っているのです」

「危機ですか? 聖女教会は商売人ではないので、手助けはできませんが……」

「いえ、もっと根本的なところでの問題なのです」

「どのような問題が起こったのですか?」

「魔道具製作の資金が、リリアナさんのご両親に接収されてしまったようなのです」


 それを聞いた聖女様は、眉をかすかにつりあげ、柔らかく問うて来た。


「となると、今後は魔道具の入荷がされないのでしょうか?」

「資金がないので魔石が買えないため、そうなりますね。魔道具工房の方では自主的に制作するかもしれませんが、聖女教会に直接おろすことはできなくなります」

「……困りましたね。あの魔道具はこちらでも評判がよくて、一人一つは配備しようということになっていたのですが……民に回る分を掠め取るわけにもいきませんし……」


 聖女様も重宝してくれていたのか。

 それなら話が早い。


「私たちは明日にリリアナさんのご両親に直談判しに行きます。その時に、次期聖女の名を振りかざすことをお許しいただきたく、こちらに参りました」

「次期聖女の名を、ですか……」


 聖女様の顔が、明らかにかげった。

 けれど、ここで引くわけにはいかない。

 明日が上手くいかなければ、何も繋がらないのだから。

 

「どうしても明日はうまく運ばなければならないのです。どうかお許しくださいませんか?」

「なぜそこまで、そのお金にこだわるのですか? なにか特別な理由があるのですか?」

「皆で稼いだ特別なお金だというのもありますが、実はお金だけではなく、リリアナさんが身につけていた魔道具も取られたようなのです。更に、家も追い出されてしまい……それらの事態を収集するためにも、次期聖女の名が必要なのです」


 聖女様はしばらく黙り込んだ後、おごそかに口を開いた。


「……理由はわかりました。しかし、次期聖女の名を使うことは許しません」

「なぜですか!?」

「以前に許可したことで勘違いをさせてしまったかもしれませんが、聖女とは、魔族から民を守る国の盾です。その名は軽々しいものではなく、一国の意と遜色のない力が伴います。ただの便利な道具ではなく、ましてや民をおびやかすための武器でもありません。それを分かっていない者に、聖女の名を振るう資格はありません」


 そんなに重いなんて、一言もいってなかったのに!

 なんでいきなりそんなこと言うんだ!

 計算外のことに、思わず口答えしてしまった。

 

「でも……! 同じリリアナさんを助ける為ですよ! 以前に名を使うことを許してくださったのと、何が違うのですか!?」


 しかし、そんな私の抵抗も織り込み済みだったようで。

 あっさりと、説き伏せるように、正論でもって切りふせてきた。

 

「前回は、民の為になると思ったから許可致しました。次期聖女が認める防御の魔道具。それは民に安心を与え、心の支えとなり得るからです。聖女教会への信奉も増し、世に良い影響が与えられると思ったので、許可したのです。ですが、今回はごく個人的なことです。そんなことに、次期聖女の名を使うことはあってはなりません」

「そんな……」


 予定が狂った。こんなはずじゃなかったのに。

 これからどうしたらいいんだろう。

 頭の中でぐるぐる思考が回っている中、聖女様は、追撃の言葉を投げて来た。


「ただのレイナとして、リリアナさんのご実家に向かうことは許可致しましょう。ただし、次期聖女であると振りかざしてはいけません。いいですね?」


 それは、念押しというにはあまりにも残酷で。

 立場が上である聖女様に逆らえるはずもなく、しぶしぶ従うしかなかった。

 

「…………わかりました」


 今回の沙汰に納得がいかずに俯いていると、聖女様は、なにごともなかったかのように話を変えて来た。


「ところで、そちらのお友達の、サリアさんは高位貴族でしたね」

「……それがどうかしましたか?」


 なに? まさかサリアの名も使うなって言いたいの?

 そんなやさぐれた気持ちで構えていると、告げられたのは意外な言葉だった。

 

「次期聖女たる身の上を明かすことは許しませんが、素晴らしいお友達がいることは、ご紹介してあげてもいいと思いますよ。リリアナさんの親御さんも、家から追い出したとしても、娘の交友関係くらいは知りたいと思いますからね」


 要は、サリアの身分を使って脅すなら構わないってこと?

 あるいは、サリアみたいな身分の人間が慕ってる相手を普通だと思うなよ、って示すなら大丈夫ってことかな。

 

 ……うん。この人も食えない人だな。

 正直、話すのが怖くなったよ。


「……わかりました。こんなに素晴らしい友達がいますと、存分に自慢することにします」

「それがいいでしょう。……あぁ、それから、魔石のことですが。聖女教会では、魔石に魔力を込めるのを、修練の一環としています。あなたたちもやってみませんか?」


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