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「一人で頑張ろうとしなくていいんですよ。私たちがついていますから」

連続二話投稿二話目

 リリアナの様子がおかしい。


 週末に集まったとき、一番に思ったのがそれだった。


 いつもはしない濃い化粧をして、空元気を振りまいている。

 絶対になにかあっただろ。


 心配になって、本人に聞いてみたけれど――。


「何もないですよ! 寝不足でクマができたのを隠したかっただけです!」


 なんてごまかしてきた。

 明らかに嘘だ。


 なにか隠している。

 そう思ったけれど、本人が言わないんじゃ分からない。


 言わなくても勘付けるような仲だったらよかったけれど、今はそこまで仲がいいわけじゃ無いし。


 ミーシャやサリアが相手ならまだしも、リリアナの様子から原因を察するのは無理だ。


 それはミーシャも同じだったようで。

 

 リリアナがおかしいことに気づいているのかいないのか、心配そうに、少しずれたことを聞いていた。


「きちんと眠れていないのですか? これから大事な時期ですから、体を壊さないようにするべきだと思いますわ」

「そうですね。ちゃんと眠れるように気をつけます!」


 そう言ったリリアナの顔に、かげりはなくて。

 本当にただの寝不足だったのではないかという気さえしてくる。

 ……私の思い過ごしか?


 探るのは諦めようかと思ったその時、ふと違和感を覚えた。

 なんだ?

 いつものリリアナと違うところがあるような気がする。


 最初は化粧が濃いことかと思ったけれど、もっと大きな、分かりやすいところで違う気がする。


 でも、さっぱり分からない。

 なにかが違う気はするんだけど……。


 考えても分からなくて、そのまま皆で喫茶店に移動することになった。


 席に座ろうと身を屈めたとき、無駄にでかい胸に押されて、サリアから貰ったペンダントの先がこぼれ落ちた。

 それが視界に入った瞬間、ふと閃いた。


「……リリアナさん。ペンダントはどうしたのですか?」


 ここ最近はいつも身につけていたはず。

 それなのに、彼女の胸元は寂しげだ。


 問うた途端、リリアナの顔色が、ほんの一瞬だけ曇った。


 けれど、すぐに気を取り直したように、言い訳を吐いてくる。


「あ、今日はつけ忘れちゃったんです。寝坊しそうになって、置いて来ちゃいました」


 嘘。絶対嘘。

 それなら他の身だしなみが整っているのはおかしい。


「濃い化粧をする時間はあったのに、寝坊ですか?」

「そんなに濃いでしょうか? 失敗しちゃったかな」


 論点ずらしが余計に怪しい。

 リリアナのことを訝しんでいると、横で話を聞いていたサリアがぶっこんだ。


「売った?」


 これはさすがに心外だったのだろう。

 ぼっ、と火が燃え上がるように、リリアナが瞬時に反論した。

 

「売るわけないじゃないですか! すごく大切なものなんですから!」

「あれを売れば、そこらの貴族よりお金持ち。加えて、今回の実績があれば貴族に戻るのもたやすい。それで晴れて結婚のハッピーエンド。違う?」

「そんなことしません! 例えそれでニール様と結婚できたとしても、後悔しかしませんよ! 皆さんと仲良くなりたいのに、その気持ちを台無しにするようなこと、する訳ないじゃないですか!」

「じゃあ、なんでつけてないの?」

「それ、は……」


 一気に勢いがなくなるリリアナ。

 本当に忘れたのなら、それを主張すればいいだけだ。


 そんな言い訳が出てこないほど、心が囚われているのだろう。

 売ったわけでもなく、忘れてもいないなら――。


「――盗まれたんですか?」


 びくりと、リリアナの身体が硬直する。

 図星だな。

 誰かが無理矢理奪ったんだ。


「誰に奪われたんですか? 教えてください」

「……言えません」


 分からないではなく、言えない、か。

 

 犯人は分かっているのに言おうとしないなんて。

 この期に及んで強情だな。

 何がそんなにリリアナを頑なにさせるんだろう。


「私たちが一緒なら、取り返すことができます。例え、どんな相手だろうとしても」

「でも……」


 渋るリリアナに、サリアは無情なことを言った。


「また作ろうか? 私たちとお揃いじゃない、新しいやつ」

「それは嫌です……」

「なら言えば? ここまで来て、言わない理由ってなに?」


 サリアが理詰めをしても、黙ったままだ。

 言いたくないというよりかは、言うのを迷ってる?


 口が開きかけてるから、あと少しな気がする。

 それなら、アプローチを変えてみよう。


「一人で頑張ろうとしなくていいんですよ。私たちがついていますから」


 リリアナの手を握ってそう伝えると、彼女は瞳を潤ませながら、小さく呟いた。

 

「……きっと、すごく迷惑かけちゃいますよ?」

「構いませんよ」

「……皆さんに、嫌な思いをさせるだけかもしれません」

「嫌かどうかは、私たちが決めることです」

「……もう手遅れの可能性があるとしてもいいんですか?」

 

 揺れてる。ここは少し切り口を変えてみよう。

 

「私たちでは頼りないですか?」

「そんなことないです! 頼れるなら頼りたいですよ! でも……」

 

 あと一押し。だからこそ、あえて引く。

 

「でも、頼れないのですよね? 余計なお世話でしたら、やめておきますが」


 ここで断ったら二度と手を差し伸べて貰えないと悟ったのか、リリアナはようやく気持ちを吐露した。

 

「……本当は助けて欲しいです! けれど、家の事情に巻き込むなんて、申し訳なくて……優しさにつけこむみたいで、嫌だったんです」

「家の事情だったのですね。何かあったんですか?」


 つっかえていた言葉がこぼれたからか、リリアナは堰を切ったように話し始めた。


「それが……魔道具の売上金と、大切なペンダントを奪われて……ついでに家を追い出されました。だから今は、帰る家がありません」

「それは、家族のどなたがやったのです?」

「父がお金を持っていって、母にペンダントを奪われました」


 なるほど。両親に取られたのか。


「ちなみに、ご兄弟は?」

「いません。だから他に頼れる人もいないのです」


 貴族の家庭で女の子一人か。後継どうするつもりだったんだろう?

 子供ができにくかったか、高齢出産だったか。あるいは、亡くなったか。

 

 ニールの家は結構家格が高いから、嫁がせて取り入るつもりだったのかな?


 ……まぁいい。すでに没落している家だ。

 今重要なのはそこじゃない。


「そうですね。帰る家がないのでしたら、学園の寮を借りるのが手っ取り早いかもしれません」

「……でも私、そんなお金ないですよ。だから王都に引っ越して、自宅から通っていたのですから」


 そういえば、没落したのに貴族の通う学園にいるんだな。

 普通に考えたら変だけど……ゲームの都合上なのか?


 でも、ここは現実だ。何もかもがゲーム通りというのも、おかしな話だ。

 現実では、どういう理由でこの学園にいるのだろう?

 

「失礼ですが、没落したのに貴族が通う学校にいた理由をお聞きしても?」

「……父の見栄です。それから、学園で支援者を見つけてこいとも言われていました」


 ……なるほどね。

 それなら、一つ策が浮かぶな。


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