表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/75

「よし、いこう!」

 しばらく闇にさらされるも、サリアの防御魔法のおかげで無傷のまま。

 さっきは気にしていられなかったけど、よく見ると空中に魔法陣が一瞬で書き込まれている。

 魔力で瞬間的に書き込んでるのかなあ?

 さすが天才と言うべきか。

 ミリアルドも構築が早かったと思うけど、速度も効果も段違いだ。

 サリアの防御魔法は、何度攻撃されても全然壊れない。


 そうしているうちに、まるで飽きたとでも言うかのように、サリアは光を発する魔法を使った。

 先ほどと同じように闇が晴れると、魔族は開口一番文句を言って来た。

 

 

「ワンパターンって、あんたが何かしたわけじゃないでしょ!」


 あー、まぁそうだけど。

 ここで肯定してもいいんだが……きっとサリアが煽ってるのも意味があるんだよな。

 なら、ここは私も乗るべきだ。


「サリアの力は私の力、私の力はサリアの力です! だからあなたなんか怖くありません! 悔しかったらこの防御を突破してみなさい!」

「だからあんたがやってるわけじゃないでしょ! 殺すわよ!」

「最初から殺すつもりでしょうに。どうせやるつもりのことを改めて言うって恥ずかしくないですかー?」

「……どうやら死にたがりしかいないみたいね。安心なさい。苦痛に包んであの世に送ってあげるわ」


 いい感じにあったまっている。

 少し楽しい。

 成果を出せて満足していると、サリアが遠慮がちに申告して来た。


「煽っているところ悪いけど、これ以上出力があがると防げない」

「え、嘘だよね?」

「……」


 ちょ、無言はやめてよ! こわいよ!


「なにか言って!」


 切羽詰まって迫っても、無視される。

 サリアの言葉を信じたのか、魔族は嬉々として更に出力のあがった闇を打ち出してきた。


 さすがに死んだ?

 そう思ったけれど。


 私はまだ生きていて。

 またもや同じパターンで闇が晴れると、サリアは満足げに言った。

 

「うん。冗談。あんな雑魚には負けない」


 この……! なんで私まで騙す必要があるのさ!

 本当に死ぬかと思ってびっくりしたじゃないか!

 私はサリアありきじゃないと何もできないんだからね!?


 魔族は頭に血がのぼったのか、力技で私たちを殺そうと必死だ。

 闇は一層濃くなり、光で照らしてもすぐ飲み込まれるようになった。

 死にはしないのかもだけど、でられない。

 攻撃が激しすぎて音が聞こえずらく、外の状況も分からなかった。


 できることもないので、サリアに問う。

 

「……で。散々怒らせて攻撃させてるけど、なにか意図があるんだよね?」

「もちろん。こうして怒らせて、魔力を枯渇させようとしてる」

「枯渇するとどうなるの?」

「普通なら元の身体が死ぬ」


 こら! 今は何のために頑張ってるのさ!

 

「ちょっと! それなら王子を遠ざけた意味ないよ!」

「言ったでしょ。普通なら、って。今はあなたがいる」

「私が……?」


 私は次期聖女だけど、できることなんて何もない。

 せいぜい、ゲーム知識を利用して考えるくらいしかないと思っていた。

 けれど、サリアの意見は違うようで。


「あなたには、生き餌になって貰う」

「生き餌って……?」

「私の見立てでは、聖女が魔族に対抗できる理由は、魔力の質にあると思う。魔族は基本的に思念体で、人に憑依して実世界に影響を与えてくる」

「そうなんだ。魔族って言うから、そういう種の人間みたいな何かがいると思ってた」

「ううん。基本は寄生虫。憑依先を普通に殺すと、魔族は分離してまた依代を探しに行くけど、聖女が殺すとそのまま消滅するの」


 へー。魔族って自分じゃ姿を保てないんだ。

 じゃあ、ゲームに出てた魔族も、誰かが乗っ取られた姿ってことだったのかな。


「それで? 私は攻撃手段ないけど、どうするの? 前みたいにサリアに魔力供給して、それで攻撃する?」


 言ってから気がついたけど、それだと普通にミーシャが傷つきそうだ。

 サリアもそれは分かっているみたいで。

 

「それだと身体が傷つく。それはレイナの本意じゃない。そうでしょ?」

「うん。でも、それならどうするの?」

「供給先を、私じゃなくて、魔族にする」

「……魔族に? それやったら、パワーアップしない?」


 枯渇させたのに、魔力を渡すなんて変だ。

 でもそれは、凡人の発想だったようだ。


「あなたの魔力の質は良い。本来なら、極上の餌でしかない。けれど、魔族にとっては毒になるはず。そこで、魔力が枯渇しているあいつに、ありたっけを流してやる。そうしたら、聖女の魔力が身体に残って、魔族だけ殺すことができるかも」

 

 こいつ天才か? 天才だったわ。

 

 それが本当に成功するなら、さっきはチャンスを逃したのかもね。


「サリアが来る前、魔族にミーシャと交換で、身体の自由を明け渡すように言われたんだけど。もしかして、私が身体を魔族に渡してたら、魔族は死んだ……?」

「その可能性は高い。前例がないから、向こうも知らないんだと思う。今更取引を持ちかけるのは、たぶん怪しまれる」


 そうか。我ながら良い案かと思ったんだけどな。


「そう。他に方法はないわけね?」

「危険だけど、これしかないかも。どう? やれる?」

「当然! これでできなきゃ私が生きている意味なんてない!」

「それは言い過ぎ。何もできなくても、そのままのあなたが私は好き」


 よせやい。照れるじゃないか。

 

 でも、正直言うと怖い。

 サリアが守ってくれるだろうけど、あいつに触わりに行くってことだから。

 失敗したら、本当に死ぬだろう。


 けれど、これをやればミーシャは助かるかもしれない。

 なら、やるしかないんだろう。

 

 覚悟を決めるために、サリアを抱きしめて、勇気を貰う。

 すると、サリアも抱きしめ返して来た。


 その身体が小刻みに震えているのは、きっとサリアも怖いからだと思う。

 飄々としているけれど、やっぱり死の危険に晒されたらビビるよね。


 それでも私を手伝ってくれるのだから、本当にサリア様様だ。


 彼女には、返しきれない恩がある。

 それに報いるためにも、ここで死んでなんかいられない。


 絶対に成功させる!


 サリアの身体をゆっくり離し、彼女に向かって宣言した。


「よし、いこう!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ