せっかくの晴れの日に、一人だけ制服。
短期間連続七話投稿:一話目
八時十分に七話目投稿予定
ミーシャとの練習を重ね、ついにダンスパーティ当日となった。
足が痛いまま練習していたからか、全く治る気配はなかったけれど。
全力疾走ができない程度で、ちょっと我慢すれば踊れるし、問題はない。
ダンスの準備は万端。
一応見れるレベルには仕上がった。
素人でここまでできればとりあえずいいだろうと、ミーシャからはお墨付きも貰っている。
あとはドレスが届くのを待つだけだ。
日にちがあまりなかったからか、納入日が当日となってしまったようだが。
パーティーまでにはなんとか間に合うらしい。
ドレスを作るとなってからすぐ採寸したけど、やはり作るのが大変な代物のようで、ギリギリ間に合うくらいの、日程のタイトさだったのだと聞かされた。
……これ、自分で注文したら普通に間に合わなかったかも。
多少強引なところはあったけれど、ミリアルドには感謝だな。
どんなドレスかは知らされていないから、届くのが楽しみだ。
せっかく作ってもらったのだから、似合うと良いけれど。
無駄に乳がデカいせいで、似合う服も少ないからな。
そこが少し心配だ。
ここはもう、ミリアルドの感性に期待するしかない。
王族だし、きっとその辺は大丈夫だろうけど。
でもやっぱり、どんなドレスかは気になるんだよな。
年甲斐もなくそわそわして、ロビーで待機してしまう。
しかし……。
待てどくらせど、ドレスが来ない。
そろそろダンスパーティー始まっちゃうけど?
と思っていたら、ミリアルドが慌てたようにこちらへ駆け寄ってきた。
「大変だ、レイナ! ドレスが何者かに盗まれてしまった!」
「えっ……」
盗まれた? 誰に?
というか、ドレスがないならダンスパーティーはどうなるんだ?
一気に頭が真っ白になって、何も考えられなくなる。
先ほどまでの浮かれていた気分はどこかに行ってしまった。
気がそぞろになっていると、ミリアルドが状況を説明してくれる。
「学園には届いたようなのだが、守衛が受け取り手続きをしている間になくなっていたらしい。盗んだ者の後ろ姿は見えたそうだが、ドレスを着ていたようだ。恐らく、パーティーの参加者。レイナに恨みがある者の犯行だと思われる」
その説明で、冷静さを少し取り戻す。
パーティーは夕刻の、五時にあたる時間から始まる。
現在は三時半だ。
探す時間は、ギリギリある。
「……探しましょう。誰かが持っているなら、どこかの部屋にあるはずです」
「そうだな。俺からの贈り物だから、さすがに破ったりはしていないと思いたいな」
「そうですね……破られていたらどうしようもありませんが、だからと言って、探さない理由にはなりません」
「探すなら、手数は多い方がいい。俺はミーシャにも協力を仰ぐから、レイナも知り合いに頼むといいだろう」
「わかりました。サリアさんに頼んでみます。落ち合う場所はここでいいですか?」
「あぁ。着替える時間も考えると、四時半が限度だろう」
「はい。それではまた後で」
ミリアルドと別れたら、すぐにサリアの元へ向かう。
恐らく研究室か、自室にいるだろう。
そう思って研究室に向かうと、案の定サリアがいた。
ドレス姿なのに研究していて、つくづく研究熱心なのだと思わされる。
「よかった、見つけました!」
「どうしたの? レイナはドレスを待っていたはず」
「そのドレスが誰かに盗まれたんです! よければ探すのを手伝ってもらえませんか?」
「当然。でも、すぐ見つかる。失せ物探しの魔法がある」
「そんなのがあるんですか!?」
「そう。だからパーティーには間に合う。安心して」
「ありがとうございます! 本当に助かります!」
サリアは机の上に魔法陣を準備をしてから、尋ねてきた。
「ドレスの特徴はわかる?」
「ごめんなさい……いただきものなので、自分では確認していないのです」
「なら、分かる人を連れてきて欲しい」
「そうですよね……特徴が分からないと探せないですよね。ミリアルド殿下を連れてきます!」
「お願い。特徴が分かればすぐに見つかるから」
研究室を出て、ミリアルドを探しに行く。
四時半には待ち合わせしているけれど、それでは遅い。
なんとしてでも、時間までに見つけないと。
でも、無闇に探しても……あ。
私はすぐに研究室へ引き返した。
「サリアさん、もう一つお願いが!」
「何?」
「その魔法で、ミリアルド殿下を探すことはできますか!?」
「余裕。任せて」
すぐに机の魔法陣が光る。
やがて光が収まると、サリアは告げてきた。
「今は学園長室にいるみたい」
と、その声に遅れて、館内アナウンスが流れた。
『ミーシャ・クラリネ・ラ・アリアンハートさん。至急、学園長室まで来てください。繰り返します――』
ミリアルドも派手なことをするなぁ。
探すのが面倒だからって、呼び出しするとか。
でも、居場所は確定した。
ミーシャより早く行けば会えるはずだ。
「ありがとうございます! 行ってきます!」
研究室を飛び出して、急足で学園長室に向かう。
足が痛いから全力疾走はできないけれど、今だせる限界の速度で進んでいく。
さいわい、研究室から学園長室はそう遠くない。
はやる気持ちを抑えながら、目的地へ急いだ。
ほどなくしてたどり着き、ノックをして、返事を待つ。
『入りなさい』
「待っていたぞ、ミー……レイナ? なぜ君がここに?」
「ミリアルド様! サリアさんに協力をお願いしたところ、失せ物探しの魔法があると教えていただきました! ミリアルド様も、この魔法で探してもらったのです」
「なるほど。それならば間に合うかもしれないな。それで、俺のところに来た理由は?」
「ドレスの特徴がわからないと、探せないとのことです。そのため、知っているであろうミリアルド様をお探しいたしました」
「なるほど。それならば、ミーシャが来たらすぐ行こう」
「はい、お願いします!」
安堵のため息をついていると、今まで黙っていたご老人が、口を開いた。
「ほっほ。よかったのう。見つかりそうなら一安心というもの」
学園長だ。
やば。急ぎすぎていて挨拶も忘れてた!
「申し訳ありません、学園長様。ご挨拶もせず、話し込んでしまって……」
「よいよい。それだけ焦っておったのじゃろう?」
「お気遣い痛み入ります」
「そこまで畏まらなくてもよい」
なんて返そうか迷っていると、扉がノックされた。
よかった。助かった。
学園長が入室を促すと、ミーシャが入ってくる。
「お呼ばれして参上致しましたが……この集まりはいかがしたのでしょう?」
集まっているメンバーを見て、ミーシャは不思議そうにしていた。
すかさず、ミリアルドが簡潔な説明をする。
「どうやらレイナのドレスが盗まれたそうだ。それで、探すのを手伝ってもらおうと思っていたのだが、どうやらグランツ家のご令嬢が、失せ物探しの魔法を使えるらしい。無駄に呼んでしまったみたいですまないな」
それを聞いていたミーシャの表情が、一瞬暗くなる。
そうだよな。急いで来たのに無駄足踏まされたと分かれば、そんな顔にもなるよな。
彼女は少し迷ったようにしてから、口を開いた。
「そうですか。では、私は必要ありませんわね?」
「……そうなるな。本当に申し訳ない」
「いえ。見つかりそうなら一安心です。それでは、失礼いたします」
ミーシャを見送って、すぐにサリアの元へ向かった。
時刻は四時過ぎ頃。
今から見つかればちょうどパーティーには間に合うくらいだ。
研究室に向かうと、サリアが準備を完了して待っていた。
「おかえり。すぐに探せる」
「ありがとうございます! ミリアルド様、特徴をお願いします」
ミリアルドの口からどんなドレスか語られ、サリアが探し始める。
ここでドレスがわかってしまうのは楽しみが減ってしまうけれど、そんなこと言っていられる状況じゃない。
とにかく、これで見つかるのだ。
安心して待っていると、サリアが焦ったように言った。
「おかしい……ドレスがこの世に存在していないことになっている」
「ど、どういうことですか?」
「破り捨てられたか、あるいは妨害魔法を使われているか。いずれによ、今の私には見つけることができない」
「そんな……」
なまじ希望があっただけにショックが大きい。
せっかく見つかると思ったのに。一体どうしたら……。
サリアもこちらの心中を察したのか、謝ってきた。
「……ごめん。力になれなかった」
「サリアさんは悪くありません! 悪いのは盗んだ人ですから」
「そう。でも、ごめん」
打つ手なし。
もう時間がない。
今から探し回っても、見つかった頃にはパーティーが始まっているだろう。
沈む空気の中、ミリアルドが言った。
「……仕方ない。制服で出るしかないだろうな。こんなことになるなら、ミーシャを帰さなければよかった。それなら、せめて予備のドレスを借りれたはずなのに」
後悔してももう遅い。
今からミーシャのところにいっても、着替える時間があるかは怪しいところだ。
それに、彼女には申し訳ないけれど、たぶん胸がキツくて着れない。
それくらい、私の胸は邪魔な育ち方をしているのだ。
本当、栄養があまりない食事をしていはずなのに、なんでこんな育ち方をするのか。
……なんて、今考えるべきでないことを考えていないと、正気を保っていられる気がしなかった。
せっかくの晴れの日に、一人だけ制服。
疎外感は凄いだろう。
それでも、探すのを手伝ってくれた人たちがいた。
その人たちには、きちんと感謝しなければならない。
「……結果は残念でしたが、お手伝いありがとうございました。とても心強かったです。間に合わなくってもいけないですし、そろそろ行きましょう」
こうして、私はダンスパーティーに、一人だけ制服で出ることになった。




