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私だけ……なんだか良い響きだ。

 サリアとの買い物は少し楽しみだが、その翌日の予定を考えると、心が重い。

 おかげで授業に身が入らなかった。


 今日はミーシャからの視線もよく感じたし。

 ミリアルドが手料理のことを話したかは知らないが、ずっと見られ続けていた気がする。

 

 特に、ミリアルドと話している時は。

 しばらくは奴と一緒にいると約束してしまったから、離れられないのだ。

 そのせいでミーシャから熱烈な視線をいただいている。


 普通なら喜ばしいことなのだけど、品定めされているようで落ち着かなかった。

 そんなわけだから、放課後の時間がとても開放的だ。


 今日は金曜日にあたる日だから、図書委員があるのだけど。

 面倒臭いが、これもお仕事。

 ゲームの世界とはいえ、頑張るしかない。


 

 ということで、お仕事しながらサリアとお勉強タイムだ。

 ゲームでは知り得なかったことを学べるので、少し楽しい。

 魔法や歴史、詳細な地理など、初めて知ることが沢山ある。


 ゲームだったら別にどうでもいいが、今は自分が生きる世界だ。

 きちんと学ばねば、痛い目を見るだろう。


 特に、魔族という存在は、よく知っておかなければならないはずだ。


 ゲームでもちょこちょこ名前が出ていたが、ついぞ詳しく説明されることなく終わった。


 が、何か事件が起こると、大体裏で関わっているようなのだ。


 そのせいか、ゲームユーザーの間では、バグが起こった時などに『それは魔族のせいだね』なんて言い合う遊びがはやった。


 でも、詳細は皆知らない。

 ユーザーにとってはブラックボックスの存在だったのだ。


 だから、興味がある。

 そう思って魔族の本を読んでいたら、サリアが嫌そうな顔をして呟いた。


「悪趣味な本読んでるね」

「悪趣味とは?」

「魔族について知りすぎた人は、邪教に入りやすいから。でも、聖女なら知っておくべきか」

「あはは。聖女の私が邪教に入るなんてなったら、面白いですね」


 冗談で言ってみたのだが、サリアは物凄い真剣な顔で、詰めて来た。


「笑い事じゃない。もしそんなことになったら、国が総出で討伐しにくる」

「そんなに」


 魔族のことを全然知らないから、そこまでされることなんだ、という実感が薄い。

 ゲームのイベントでは関わっていたみたいだが、そんなに悪い奴らなのか?


「本当に気をつけて。聖女なんだから。魔族に対抗できるのは、貴方だけ」

「私だけ?」

「正確には、あなたも含めた聖女だけ。でも、現聖女はもう老婆。これから頼りになるのは、貴方しかいない」

 

 私だけ……なんだか良い響きだ。

 でもなぁ。


「私、全然魔族について知りませんが?」

「これから知ればいい。そのうち特別授業がある」


 へー。そんなのがあるんだ。

 まぁ、職業のために学びに来ているからな。

 特殊な職業ならそういうこともあるか。


「そういうことなら、今学んでも意味ないですかね?」

「予習になるからいいと思う。私も貴族が知っている範囲の常識的なことなら教えられる」

「それはありがたいです。サリアさんは勉強だと頼りになりますね」

「それほどでもある」


 それから、貸出業務の合間に、魔族について教えて貰った。

 曰く、魔族は心が弱っている人の前に現れやすいのだと。

 甘言でたぶらかし、人類に被害を与えるようなことへ手を貸させる。


 普通に考えたらそんなことするはずがないのだが、その人が願うことに絶妙にマッチした破壊工作をさせるようだ。


 だからか、魔族に願いを叶えてもらうことを目的とした邪教ができたらしい。


 そこからも何人か魔族の犠牲者がでているから、本当に叶うと信ぴょう性が増しているみたいだ。


 そして、聖女たる私は、魔族を滅することができる唯一と言っていいほどの存在。

 基本は不死身だから、普通に殺しても蘇るらしいのだが、私が殺すと、その個体は二度と生き返らないらしい。


 結構重要な役割だなと実感すると共に、厄介だなと思う。


 ゲームだった時は全然気にしていなかったけれど、改めて聞くと、結構迷惑な奴らなんだな。


 と、ここまで知って、ふと思ったことがある。


 ゲームのルートを辿ると、聖女たる私は大体酷い目にあうのだが、それって魔族にとって都合が良すぎるのではないか、と。


 聖女が死亡、あるいは無力化されるなんて、魔族にとっては良いことしかない。

 エンディングのあとがどうなるかは描かれないが、悪い想像ばかりが浮かぶ。


 ……もしかして、王家は魔族に牛耳られている?


 そんなこと言ったら死罪になるかもだが、ゲームのことを考えると、高位貴族か王族と手を結んでいなければ不可能に感じるようなこともあった。


 あぁ。なんか急に王子に会うのが怖くなって来た。

 王城におもむいたら魔族と接触するなんて、あり得ないよな?


 不安は募れど、こんなことサリアには相談できない。

 まずゲームの話から言わなきゃならないし。


 頭のおかしい人だと思われる。


 ……まぁ、とにかく、魔族には十分気をつけよう。

 弱気な者の前に現れるらしいからな。


 気を強く持っていないと、私も危なそうだ。

 心を律して、生きるとしよう。


 まぁ、それはぼちぼち意識しておくとして。

 今は、王家への訪問を上手くこなすプランを考えることが優先だ。

 その前にまず、サリアとの買い物だけど。


 この世界で家族以外とショッピングなんて初めてだから、少し楽しみだ。


 

 

 

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