霧の星
広大な宇宙を漂いながら目をつけた星を丸焼きにして、その地にある鉱山資源を根こそぎ採り、売りさばきその金で悠々と暮らす荒くれ者たちがいた。
目を付けられた星は自らが狙われたとも知る余地も無く、空からの灼熱の光により絶滅してゆくのである。
いまや、宇宙の放火魔として多くの星の住民が恐怖心を抱いている。
ある時、彼らはある惑星に目をつけた。黄金の輝きを放ち、見る物を魅了する言葉に出来ぬ美しさを持つ星だ。
彼らは美しさに興奮し、
「攻めよ。攻めよ」
船の中では大歓声が巻き起こっていた。
船長も反対する理由も無く攻めの命令を出した。彼らの働きは実にすばらしいものであり、通常の1/3の時間で用意が完了した。
船長がその知らせを聞くと、「放火!」と高らかに声を上げる。その瞬間巨大なホースから噴き出した灼熱の炎が、黄金の星を襲った。炎の放つ赤い光を黄金の星が反射させ、その様子は大変美しく、常に目を充血させ、憤怒の表情を浮べる彼らが不意に微笑を浮べるほどのものであった。
そして、三日三晩の放火が終わり、地表の水が蒸発したのであろうか大量の雲と霧で覆いつくされたその星に彼らは浮かれ調子で降り立った。
船には降り立った者たちの浮かれた声が響きわたっている、だがやがて彼らの声が不安からのものへと変わっていった。そしてついには悲鳴に近い叫び声を上げ、通信が途絶えてしまったのだ。
船に残っていた残り少ない者達はざわめき始め、船長が悔しくも撤退の命令を出した。仕方なしとだらだら撤退準備を始めるが、そのうちの一人が異変に気付いた。
船内に霧が立ち込めているのだ。その霧は高濃度の酸性であった。扉に取り付けられているメーターがそれを知らせてくれた。今まで無かった現象に慌てふためきざわついていたが、そのざわめきも数分のものであった。彼らが冷たくなると、霧は船に穴を空け、そこから抜けていき、なおも黄金に輝き続けるあの星へと帰っていった。
それからは、魅力に誘われ降り立った者は帰ってこなくなり、誰もが恐れ、近づくことは無くなった。
その液体の体をしていた住民が住んでいるその星には。