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極度な感情

 中学校での生活。みんなそれぞれ想いを寄せている中で、僕も例外ではなくそれはいた。一目惚れというやつをしたのだ。その子は僕のクラスのマドンナ的存在であり、僕以外にも彼女が好きな男子は多くいただろう。競争率がとても高いだけに、焦りを感じた僕は近々、その気持ちを彼女に伝えようと決意していた。しかし、そう決意一つで告白などできるものではなく、決意から数ヶ月間はなやんでいた。おそらく優柔不断というものなのだろうな僕は。

 そんな結果を出す事の無いある日、僕のもとに一通のメールが届いた。それは僕の心臓を高鳴りさせた。

 彼女からの告白のメールであったのだ。

僕は、自分の体が震え、心の奥から湧き上がる喜びのその上の感情が込みあがってくるのを感じた。返事は憧れの人からの告白であるから無論、『ありがとう。よろしく』であった。僕は、まともな恋を今まで経験していなかったためどのような文面にすれば良いか分からず単純極まる返事しかできなかったのだ。

 そして、僕の幸せは始まった。学校でこの事をあらわにすると、ひかやしの言葉と妬みの目が飛んでくるだろうと学校生活は特に変化はなかったが、代わりに何百ものメールを交わした。その文面は自分で朝改めてみると、赤面になるほどのものだった。第三者の目線からすると「それだけ?」と思われるかもしれなかったが、それだけで僕は彼女と繋がっているようで幸せだった。

 しかし、さすがにメールだけだとお互いの気持ちが薄れていくのも必然。月日が流れるごとに僕らのメールの回数は減っていった。それに反比例して学校での会話の回数が増えたとはいかず、学年が上がり学級が別になったためもあり、言葉は一切交わすことはなかった。これではまずいと感じ、彼女が所属する部活に入ったものの、文化系のものであったため、女子が多く入りづらい空気をかもし出していて部室にはいることは困難だった。

 一度、「学校でも普通に話そう」と提案したが、結局は初期設定とは変わることはなく「恥ずかしい」ということでまとまってしまった。

 それからは、僕らは「恥ずかしいから」という理由づけで、どんどんすれ違って行った。「恥ずかしい」から学校では会わない、「恥ずかしいから」学校では話さない、「恥ずかしいから」目を合わさない......。こんな悲惨な状況で一年が過ぎ、2年の冬が終わるころ、別れようかという話が浮上してしまった。表面上は、受験が控えているからというものであったが、おそらくそれは違うであろう。しかたなしにと、僕らは中途半端な気持ちで別れ、関係を一切断ち切った。

 しばらく落ち込み、すべてが手に付かなかったが、何回もデートをし、キスまでするようなドラマじみた熱い恋ではなかったため、僕の心は案外、はやく回復をとげた。

 

 だが、これからどんなにやさしくとも、どんなに美人でも、どんなに金持ちでも僕はしばらく人を好きになることは出来なさそうだ。

「恥ずかしいから」

                            -極度な感情

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