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見下ろす神

 私の目の前にある青い美しい星、地球。私のいるこの宇宙からは見ることは出来ないが、あちらこちらで善悪のない何十年にも及ぶ戦争が起こっている。そんな世界に絶望した私は、巨大な会社の会長の息子であるため莫大な金を費やし、家族も親も仲間も信頼していた何もかもを置いて一人、宇宙に出てきたのだ。人間社会の追随を侵入させないためだ。

だが、月に一度、食料やその他生活に必要な物資を仕入れに行くのだ。その度に忘れかけている人類の愚かさをかいま見ることになる。まことに馬鹿げたものだと深く落胆する。

 私はこの人類の醜さから逃げた生活を始めてもう何年にもなる。私はその長いこの生活からある錯覚が起きた。それは、自分が『神』に思えてきたのだ。普段は空高くの安息の地で見下ろしているが、たまに地上に降りてその現状を見て嘆く。どうだろう。神に真に類似していないだろうか。

 私はこの幸せな現状に気付いてからは、毎日がより一層楽しい物となった。自分だけが味わえる安心、快感。そういう他人とは違う部分がある幸せが今の私に満ち溢れている。優越感なんて比ではない。

 だが、人は欲深いもの。ある時私は人類にとっての本当の神になろうとふと思った。そこで私は神の神々しさを表す光るような白い服を着て、上品な髭も蓄え、昔のSF映画でよく目にしたUFOの光を出して宇宙人を吸い上げる装置を地球から最高の科学者を少し拝借し作り上げ、私はついに地上に降臨するのだった。

 戦争をしている国々に降り立ち、宇宙で過ごした長い年月を使い、答えを出した幸せになる方法を説いて周った。大抵の人々は空から降り立ったそんな私を神だと信用したが、勿論、中には「堕天使だ。」などと信用しない奴らもいた。そんな奴らは銃口を私に向け、発砲してくるのだがあいにくあの装置の光の中に物質が侵入することは叶わないため、その玉は私の前で消え失せた。その時点で奴らもやっと神だと信用し始めるが、馬鹿もいるものだ。私に向かい、おたげびを上げ拳を掲げながら私に突進してくる奴もいるのだ。もっとも、無力にも私の前で消え失せるのだが。

 こうして、私のお陰で人々は戦争を放棄し、世界は人種を超え、手と手を繋ぐこととなった。人類に幸せが訪れたのだ。

 しばらく、その平和ぶりを眺めていたが、役目を終えた私は静かに宇宙へと上がっていった。

また私の幸せな毎日が始まるかと思っていた。が、しかし、人々が幸せになっただけに私とそう大した差が無くなってしまったのだ。もう、優越感も糞も無い。これでは、私の幸せは何処へ行ってしまったのだ。私が幸せが失われてしまった……。私は嘆きに嘆き、ある名案を考案するに至った。

 

しかたがない。もう一度降臨して助言する必要がありそうだ。人々が不幸になるような。

 

                               ―見下ろす神


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