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プロローグ 恋愛とは理想の押しつけである(笑)

 恋愛とは、理想の押し付け合いである。


 勝手に、自分はアナタが、好きだと言い。

 告白に応じれば、応じた相手は、告白主を好きでなければ、イケないと言う。

 彼女、彼らは、ドコまでも利己的だ。


 利己的で、独善的で、あるがゆえに。

 理想を押しつけるついでに、肩書きを、相手に殴りつける。


 この世に存在しない、好きな誰か。

 勝手に思い描いた誰かを、作り出すのだ。



 この世にいないなら。

 分かりやすい、カネに置き換えることも、また、必然である。



 年収・学歴・体型・性格・言動。

 考え方に至るまで、勝手に押しつけ。


 告白した、目の前の他人に、全てを、なすりつけ。


 思い込んだ。

 イメージの固まりである相手を、好きだと言う。


 頭をピンク色に染め。

 それが当たり前だと、笑って突きつけるのだ。


 夢よりも、曖昧で。

 個人の思い込みで、塗り固められた、自己満足を。


 とことん、追求した。

 花の香りの消臭剤で、覆い隠したソレが。

 口にされる、恋なのだ。


 猫をかぶった、理想よりも、醜悪な思いを抱いて。


 仮面をつけたまま。


 恋愛という、ドコにもない、理想の沼で。


 溺死しろ!



 プリントに、書かれた、この作文。

 力強く書かれた「溺死しろ!」が、ポイントである。



 いっそ、リア充爆死しろと、書いてあった方が、健全かもしれない。


 職員室の一角で。

 中指で、めがねをあげ。

 キツイ目元を細くし、女教師は、長い髪を揺らす。


 目の前で、所帯なく立つ、男子生徒に。

 何度目に、なるか分からない、ため息を吐き出した。


「なぁ?霧斗きりと? コレは、なんだ?」


愛理あいり先生、ナニが問題なんですか?

 オレは、良く、かけたと思いますよ」


 男子ならでわの、中途半端な髪の毛の下で。

 霧斗の目は、逃げ回っていた。


「現国の教師で、君の指導係に、なってしまった、私としてはだな。

 「恋愛」が、テーマの作文でだ。

 コレが、出てくるコトを、なんとか、しなきゃならん、ワケだが?」


「先生が見るから、全力で書いちゃった」


 霧斗は、後ろで、腕を組み。

 気持ち悪く、上半身を揺らしてみせる。


黙って、その様子を見届ける、愛理教諭も、慣れたモノで。

 全てを、聞き流し、霧斗の言葉を待っていた。


「や、やらかした感が、スゴいですね」


「恥ずかしいなら、最初から書くな。

 ドウするんだ、卒業文集に、載るんだぞ?

 私は良いぞ。

 君が、行く年、来る年、さらし者になるだけだ。

 ナンの恨みを込めたんだ、橒戸うんとくん?」


「オレのことを、橒戸うんこって、言いましたね?

 今の録音したんで、教育委員会に、送りつけて良いですか?」

 

「はぁ…。分かった、分かったから、書き直せよ」


「オレは、素直な気持ちを、書いたのですが。

 どのように、ねじ曲げれば、良いですか?」


「もっと、ヒドくなるのが、目に見えるな。

 霧斗君。ワザと、やってるんじゃないかと、疑いたくなるよ」


「そんなこと、あるわけないじゃ、ないですかぁ~」


「その言葉が、本当だと分かる程度には、君を指導してきている私が、嫌になるよ」


「思えば、長いお付き合いですね。結婚は、しませんよ?」


「あ~。君に、ドロドロ豚骨ラーメンを、投げつけたい気分だよ」


「ニンニクは、疲れに効きますしね」


「私の疲れの原因が、君なんだ。いい加減、自重してくれないか、本当に」


「オレは、自然に生きているだけです。

 悪いのは、オレじゃない、社会です」


愛理教諭は、頭に手を当て、頭を振る。


「あ~。もう、分かった。

 建前を、君に説明しても、すでに、君は、建前を、立てているんもんな」


「さすが愛理先生。よくお分かりで」


「コレは、私が預かる。

 時間をやるから、もっと、まっとうなモンを、書いてこい」


「まっとうかぁ…」


「このまま、キミを帰すと、どうなるか分かるな。

 霧斗君、コレから私に、付き合いなさい」


「オレ、干支が一周以上違うどころか、それ__」

「何かね? 霧斗君」


 今日、一番の笑顔だった。

 手元で、プリントにシワが、寄っていること以外は、美しい。


 鼻先三寸で、この笑顔を作られ。

 口を開けるヤツは、そうは、いないだろう。


 霧斗は、一歩下がり。

 教師の肩書きを、すり抜けた、愛理教諭の人間性に恐怖する。


「オレ、また、イジめられたな~」

「私、霧斗君に、傷物にされたなぁ~」


「マジで、やめてくださいね、そういう返し」


「なんだ、こんなに女性として、魅力的な私に、言う言葉じゃないぞ?」

(何を言っても、地雷、だと)


「それで、また、生徒指導室ですか?

 もう、見飽きたんですけど」


「もっと良いところだよ、ついてきなさい」


 霧斗は、立ち上がる愛理の後ろを歩き。

 いつの間にか、消えてしまおうと、企むが。


「君が、前を歩くんだ」


「オレの両肩から、手を離してください。セクハラですよ」


「知ってるか、霧斗君」

「女性の方が、この場合、強いってコトぐらい、知ってますよ」


「なら、私の指示通り、歩きなさい」

「ねぇ、先生。

 真面目な話。オレ、家で、作業しなきゃ、イケないんだよ」


「どうせ、間に合わなくなると、休むんだろう? 付き合いなさい」


「まさか、長い付き合いが。

 こんな形で、脇腹に刺さるとは、思いませんでした」


 霧斗は、愛理教諭に、言われるがまま、背中を押され。

 職員室をアトにした。



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