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7 スサノオ三号の大気圏突入



『こんなに簡単に宇宙空間に出ちゃっていいのかな?』


 バイアクヘーは大気圏を突破して宇宙空間に出た。スサノオ三号は目視できるほど近い。


「なに言ってんだ、簡単にじゃないぞ。バイアクヘーにはすごい技術が使われているんだ」

『でもこんな小さな飛行機がさ――』

「うるさい。飛行機とか言うな。ほら、着艦だぞ」

『バイアクヘー、お願い』

『了解』


 バイアクヘーはゆっくり加速した。




 そんなこんなでもう一度別のシュドメルを惑星におろした。直滑降はしなかった。あまり時間を稼げなかったからだ。

 スサノオ三号に着いてもう一度、と思った時、


『隼人? 戻ったのかい?』


 とマモルから通信が入った。


「ああ。もう一度行く」

『いや、この船はもうすぐ大気圏に突入する。今からシュドメルを出すのは無理だ』


 積み込みの終わっているシュドメルはあるが、射出レーンまで行くまでの時間もないということか。マモルの言葉を聞いた日菜子がバイアクヘーへ走ったが、追いかけて捕まえた。


『は、隼人くん?』

「もう無理だ」


 言った瞬間に衝撃がきた。このでかい船が揺れるなんてことは普通あり得ない。大気圏に突入したのだ。転倒こそしなかったが、どこかに亀裂が入ったとしてもおかしくない。俺は日菜子を捕まえたまま衝撃に備えたがそれはこなかった。

 安堵の息を吐いて日菜子を離した。


「マモル、どこだ?」

『管制室だよ』


 スサノオ三号のど真ん中。ここからそう遠くない。


「日菜子、行こう」

『脱出しないの?』


 はて、どうなんだろう?


「マモル?」

『大気圏内での発進はちょっと危ないかもね』


 スサノオ三号の内部だからかあまり感じないが、かなりの速度で落下中だろう。そこにバイアクヘーやシュドメルで飛び出したとしてどうなるかは予想もできない。


『日菜子、試してみるか?』


 日菜子は首を振った。


「じゃ管制室へ行こう」


 パワーアシストの力を借りて管制室へ向かった。




 管制室は白を基調とした小ぎれいででかい空間だった。正面にある大きなスクリーンには惑星が映っている。ときおり赤い光が素早く下から上に通り過ぎるのは炎だろう。マモルはひと際高い艦長席にいた。


『どこでもいいから席に着いて』


 俺と日菜子に気づいたマモルが言った。俺たちはマモルより一段低い席に着いた。管制室にはマモルだけのようだ。他はみな惑星に降りたのだろうがスサノオ三号が無事に着陸できなければ俺たちは終わりだ。この惑星にはなにもない。


『減速するよ。フーユ、やんわり減速』

『了解』


 ずしりと体が重くなった。かすかに船体が震える。俺は緊張して体に力を込めた。しかし船の異常はそれだけだ。


『バランスも崩れていないね。よし、徐々に制動を大きくするんだ。慎重にね』

『了解』


 さらに体が重くなる。


『うう』


 日菜子が呻いた。手を握ろうとしたが、動かない。


「日菜子、頑張れ」


 声だけで励ました。


『うん』


 日菜子の声は小さかった。

 ふっと体が軽くなった。制動を解いたのだ。なぜ? と思う間もなく重くなる。次の瞬間にはまた軽くなった。それを何度か繰り返す。ポンピング制動。なにか異常を検知した場合にやる動作だ。なにか起こったのか? 不安になると同時に長い制動がかかった。体は苦しいが不安は解消された。うまく姿勢を制御出来ている。

 目の端に映るサブスクリーンには地表とスサノオ三号を横から見たような画像が表示されていた。画面下のラインに二重丸が近づいていく。縮尺からみて早すぎると思った。これではスサノオ三号は大破する。

 体の重みが増した。強くブレーキをかけたのだ。意識が朦朧としてきた。血液が頭に、いかない。


『早すぎます。減速が間に合いません』

『重力反転!』


 マモルがそう叫んだ瞬間に、俺の意識は途絶えた。

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