23 吊り橋
翌日は壁を張り、角度の急な屋根を作って板で作った瓦を葺いた。瓦には溝を掘って組み合わせ、隙間ができないようにしたし、特殊シリコンスプレーを吹き付けて、乾燥による反りやひび割れができないようにした。隙間を埋めるので雨漏りの心配もなくなる。
寝るところはロフトにした。屋根裏に二か所、フローリングの床を作ったのだ。真ん中の吹き抜けから、跳ね上げ式の梯子で登り降りする。
階段や手摺りを付け、ドアやガラス窓が入ってない状態で全体にスプレーして大枠の完成だ。
そこまでやって、今日の作業は終わりにした。
「あとはドアと窓を付けて完成ね」
「家具を木で作ろうよ」
「なにが必要かな」
川で水を浴びた水着姿のまま、たき火の周りで相談する。
「家は明日にもできるだろうから、川を渡る方法を考えよう」
スーツがあればジャンプして越えられるが、昔の服で濡れずに渡りたい。
「普通の橋じゃつまらないな」
「吊り橋でも作るか?」
「お、いいね」
カーボンナノチューブを使えば耐久性も完璧だ。
そういうことが決まって夕食にした。
「焼きそばも定番みたいよ」
若菜がそう言って、焼きそば定食をみんなで食べた。
「焼きそば定食っておかしくないか?」
誰かのその一言から少し場が荒れた。
「あいた」
ロフトの三角屋根に頭をぶつけた。平らな天井にすればこんなことはないのだが、ヘンテコな形がかえって楽しい。
マットをロフトに上げて寝る準備を整えた。
床に降りて雑談する。どんな家具を置くかという話になった。
「大きさが変わる、からくりテーブルが欲しいな」
「俺は安楽椅子を作るよ。安楽椅子探偵に憧れてたんだ」
と言ったのは小松だ。
「あたしはリクライニングする木製の椅子」
「俺は肘掛け椅子」
「普通じゃん」
「まあな」
「今からちょっと作業する!」
ビキニの彩香が立ち上がって大きな胸が揺れたが、その格好では怪我をしないかと心配になるばかりだ。
家の床下にライトをいくつも取り付けて、ディープワンで図面を引いた。作業まではいかなかった。
◇◇◇◇
翌日はドアと窓を作って家に取り付けた。
窓には強化ガラスをはめたが、割れるタイプにした。なにかの災害があった場合に、割れないと困ることがあるからだ。割れたら細かくなって怪我をしにくいやつだ。
ドアと窓はすぐできたので、カーボンナノチューブ吊り橋を作った。さすがにちょっと贅沢過ぎる。普通のテラフォーミングなら怒られるだろう。
昼には完成したのでTシャツにカーゴパンツで橋を渡り、対岸をみんなで探索した。女子はショートパンツの下に、カラフルな模様の入ったレギンスを履いた。脚を怪我することがないので安心だ。
対岸は広い草原だったが、かなりの斜面だ。
「草スキーができそうだな」
入江が言った。
「草スキー? なんだそれは?」
「段ボールで草原を滑り降りるらしいよ」
「段ボール?」
段ボール自体は俺たちが地球を発った時にも使われていたが、宇宙船には乗せていない。塵が出やすいからだ。
「滑り降りるって?」
俺たちはスマートウォッチで調べた。
「ふーむ、これは調査しないとな」
「そうだね、調査しよう」
俺たちは急いでディープワンに戻った。
ディープワンに段ボールを作らせるのだ。




