20 新しい仲間
「誰かの陰謀?」
たき火を囲み、ゴライアスを遠くに離してから、この星に降りたことに対する疑いを俺はみんなに話した。
彩香は続けた。
「偶然じゃないってこと?」
「こんな偶然なんてあるもんか」
「おかしいとは思ってたんだよね」
小松が言った。
「そ、そいつは俺たちをここに連れてきて、どうするつもりなんだ?」
辻村の声は震えていた。
「それはわからない。正体を突き止めて聞きただすしかない。あれ? 入江は?」
「ここにいるよ」
「おおう、隣にいたか」
「ふむ、そうなると仲間が欲しいね」
小松が顎に手をやった。
「仲間? クラスメイトの?」
若菜が言った。
「いや、それだけじゃなく」
小松はディープワンの出入り口付近に佇む、通常仕様のゴライアスに眼を向けた。
「ゴライアス? あいつは無線通信でAIと繋がってるから、こっちの行動は筒抜けだぞ」
だから遠ざけているのだ。
「だったらその機能を外しちゃおう」
小松はディープワンに入ると、船外作業用の胴装備を持って出てきた。ゴライアスに声をかけると、小さなキャタピラ駆動のロボットはついてくる。
「ちょっと眠ってもらうよ」
小松はゴライアスの背中のカバーを開けると、電源ボタンを長押しした。ゴライアスがなんとなく脱力したようになって、電源が落ちた。
「えーと、どこだっけ?」
「二か所あるはずだよ」
みんなでわいわいやりながら、ゴライアスから無線通信機能を外した。
「初期化しなくちゃ」
電源ボタンを長押しして起動すると、小さな穴にピンを差し込んでゴライアスを初期化した。今までの記憶や便利アプリも消えてしまうが、基本的な機能は使えるはずだ。いつかオフラインでインストールしよう。
ゴライアスはきょろきょろと辺りを見回す。
「君の通信機能は必要があって取り去ったからね、メンテナンスで付けたりしちゃいけないよ」
小松がそう言うと、ゴライアスは二回うなずいた。
「わたしは榊彩香。よろしくね」
「お、俺は辻村猛晴」
などと自己紹介していく。俺たちのことも忘れているからだ。
「この子は特別だからね、名前を付けようよ」
愛梨がそう言って、みんなで考える。ややあって決まった。
「じゃあキミの名前はショゴス。特別なんだよ」
愛梨がそう言うと、ゴライアス、いや、ショゴスはうなずいた。
「見分けがつくようにしよう」
若菜がディープワンに走り、戻って来た。手には超高性能ペイントペン。
「んーと」
後部のダイヤルを回して色を選ぶ。ショゴスの頭に一本、キュッと緑色の線を引いた。やや曲がっている。
「これでオッケー。ショゴス、カッコいいよ」
ショゴスは首をかしげた。
「惑星の テラフォーミング いとおかし」
「季語がない!」
「ハイキングって俳句を詠むことじゃないよ!」
そういう訳で、ちょっと歩くことになった。川沿いに上流へ行くことにした。
「スーツ着ないの?」
若菜が言った。
「スーツを着たらハイキングじゃないだろう」
「そうなの?」
「どうだろうな」
ショゴスと護衛用ゴライアスが、藪を切り開く。登りばかりで息が上がったが、楽しかった。




