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19 危険な森の中


 俺たちはスーツを脱ぎ、大昔の服に着替えていた。Tシャツというものや、ショートパンツ、ボタンというもので留めるシャツやカーゴパンツ、紐で留めるという靴はややこしかった。そんな服に着替えて草地に座って風を楽しむ。


「お待たせ」


 声に顔を向けると、愛梨が白い筒状のふんわりした服を着て立っていた。腰の辺りの布を寄せてしわしわにしたような、贅沢な布の使い方で、あちこちに同じ布の装飾がある。そちらに布を使ったためか、袖はなかった。

 愛梨はディープワン内で、くしゃみが出ない薬を投与されてきたのだ。


「どう? ワンピースっていうんだって」


 愛梨はくるりと回ってみせた。ふわりと布が広がった。


「贅沢な服だな。でもいい感じだ」

「ふふ」


 俺は立ち上がった。


「よし、たき火というものをやってみよう! 森に行って折れた木の枝を集めるんだ!」


 俺はみんなに言った。原始的な火の使い方だが楽しいそうだ。


「危なくねえのかよ?」

「ゴライアスがいるから平気だって」

「行こ行こ!」


 ぞろぞろと森へ向かった。


「木の枝、木の枝」

「拾わなきゃダメなのか? 木を切り倒せばいいのに」

「ダメダメ、拾ってこそのたき火だよ」

「そうかなあ」


 などと言いながら枝を集める。しばらくして、


「痛い!」


 彩香の声がした。急いで駆けつける。


「どうした?」

「この草、葉っぱがノコギリみたいになってる。足切った」


 見ると彩香のショートパンツの脚の脛が数センチ切れて、赤い血が出ている。赤い血が。

 指で血に触って舐めた。血の味だ。


「ちょ、隼人くん?」

「毒はないようだ」


 傷スプレーを彩香の傷に吹き付けた。これですぐに治るはずだ。


「ありがと。用意がいいね」

「こんなこともあろうかと思って」


 そう、森に入れば怪我をするんじゃないかと思っていた。切り傷なら血が出るだろう。赤か、白の。


「あいた!」

「どうした!」

「トゲが」

「毒はないようだ」


 ぷしゅ


「いててて」

「大丈夫か!」


 そうやって怪我の手当てをしていった。怪我をしないやつにはわざとぶつかって草むらにぶっ飛ばしたりした。全員、シロだ。血が赤かったからシロ。ややこしい。




「火がつかない」

「小さな枝からつけるらしいよ」

「そうなんだ」


 そこそこ枝が集まったので、たき火をすることにした。まだ昼ごろだから必要ないが、雰囲気作りだ。雑に石を置いてやっている。


「うわ、煙が」

「モテる人のところに行くらしいよ?」

「科学的根拠がない!」


 などとやっていると、


「ご飯にしよう!」


 と若菜が言った。


「もうお昼か」

「なんにしようかなー」

「こういうところではカレーライスって決まってるらしいよ」

「へー」


 そういうわけで、フードマシンからカレーライスを持ってきて、たき火の周りでみんなで食べることにした。


「あっ、ホントだ! いつもよりおいしい!」

「なんでだろうな?」

「うまーい!」


 不思議な現象だが、きっと科学的根拠がある。

 カレーライスはうまかった。

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