ひなちゃんのお年寄り離れ、やっぱり若いは正義よ
おじいちゃんが好き、こどもも好き、ならばいっしょに異世界へ転移だぁ
って、勢いで、初めてみました、老いて行くじいさまの心の走馬燈なのだろうか。
磯嵐裕紀おじいちゃんの若返った様な声で、ひなを異次元に誘った。
現実では、認知症にも掛かりつつある、寝たきりのおじいちゃんが、若いひなちゃんの来所を今か今かと待ち焦がれていたが、眠気のうつらうつらの間にひなの姿がみえた、若い自分と一緒の姿が見えたような気がした、自分と一緒なら、間違いはない、なんて、思ってみたが、ぼおっと考えるに、自分は、わたしなのだ、だが、次の行動が、頭から消えた。
気が付いたはずの異質な事柄さえ、自分の頭から消えたり、どうでもよくなったりする、それが、老化性認知症の恐ろしい所なのだ、誰かが、教えてやらねば、悪化する、今までは、孫の【ひな】が、遊びに来てくれて、現実をゆっくり噛み締める様に教えてくれていたが、その孫を若い姿の自分が、連れ出してしまった、介護スタッフは、身の回りの事柄しか介護してくれない、精神面は、家族の仕事、介護事業者は、書面でのみの対応、要介助者の心のケアは、殆んど出来ていない、本当の家族の絆が、心のケアに成る事さえ、伝えられない。
周りは、見たこともない、草原、青空には雲、心地よい風が吹いてきて、大好きなおじいちゃんの声が、また、ひなを呼ぶ、『こっちだよ、ひな、こっちにおいで』呼ばれて、急いで、背丈ほどの草原を掛ける、大好きなおじいちゃんが、元気に成って、わたしを呼んでいる、息を切らして、走っていく、おじいちゃんの声が聞こえた位置に来て、そこには、見た事が、有る様な感じのする、若い青年が、大きな石に座って、佇んでいた。
「おじいちゃん何処っ」叫んでみても、応答は無い。
その青年が、【ひな】って、呼んで、やさしい微笑みをくれた。
「おじいちゃんは、どこなの」
ひなちゃんは、石の上によじ登って、辺りを見る、見渡すばかりの青々とした草原、遠くの方にゆらゆらと蜃気楼の様な天地が分かれて居る様な建物の姿が見える。
『ぼくのなまえは、磯嵐裕紀だよ』
青年が、ほほえみながら答える。
ひなちゃんは、じっと青年の顔を見て、即座に反撃の一声。
「違うもん、おじいちゃんは、もっと彫りが深くって、味のある顔だもん、お兄ちゃんじゃないもん」
『ひどいなぁ、本人だって、言ってるのに、ひなちゃんに合わせて、色々な所に出かけて行ける様に若い肉体にしたのになぁ、たぶん自分は、忘れているだろうけど、昨日の夜、「明日は、お孫さんのひなさんが、来所します」って、スタッフさんから連絡が来たのだ、その時、空に大きな流れ星が見えたような気がしたので、ひなと遊べる、何処にでも行ける身体が欲しいと、3回祈った、まぁ、そうしたら、今日の朝、身体がもう一つ出来ていた、意識の一部は、共有できている、したがって、これは自分自身であると確信した』と、若い姿のおじいちゃんは、言った。
「確かに、おじいちゃんの言い回しそっくり、お兄さんに成ってしまったのね、でもひなは、おじいちゃんのお顔が好きなのあの彫りの深い渋めのおじいちゃんの所に返して欲しいんだもん」
『結論的には、無理、こっちの世界とあっちの世界は、夢現の状態でないと、接続できない、それにあっちの自分は、今までの出来事など、忘れているに違いない、家族すら面会に来ない、まぁ、孫のひなちゃんは、別だが、それ以外の息子や嫁と娘、娘の旦那達、他の孫達は、ぼくに会いたいとも思わない、ぼくの年金だけが、自分とのつながりだと思っている、そんなの家族じゃない、だから、ひなちゃん、ぼくといっしょに、この世界で、たのしく暮していこうよ』
裕紀が、右手をひなちゃんに差し出しながら、左手で、書物を持つようなしぐさで、言い放つ、それにつられて、周りの草原が、変化していく。
遠く街の方へあぜ道と両側に土で盛った、側溝が、出来ていった。
「お名前は、ゆうきさんで、良いの」
ひなが、右手をつかむ様に右の手のひらを相手に差しだす。
『ゆうきで良いよ、ひなちゃん』
にっこり微笑んで、ひなの手を取り、自分の傍に引き上げる。
「わたしもひなで、良いです、おじいちゃんに呼ばれているようで、楽しくなるから」
『じゃあ、【ひな】で良いか、ぼくの事も【ゆうき】で良いから、その方がこの世界では、良いみたいだ』
引き上げられたひなの身体に光のコートが、被さったように見え、光のコートが、下に素通りすると、ひなは、少し成長した様に見えた。
「おっきくなった、オッパイもある」
急激に成長した、自分の体を触って、驚いている。
『幼児連れて歩くより、少々成長した少女の方が、この世界では、怪しまれない』
ひなには、白いガウンの様なモノを着せているが、新しい服も必要だと思っていたら、左手の本が、かってに捲られて、光り輝く。
『さすがは、心の書、ぼくの欲しいものを瞬時に叶えてくれるね』
頭の上から先ほどの光のコートとは、色の違うコートが、降り注いできた、先ほどと同じようにひなの頭から素通りして下に降りていく、と、同時に服に形成されていく。
『ひな、派手すぎないか、もう一度掛けるから落ち着いた容姿を思い描いて観て』
お尻のラインがキュッと切れ上がったホットパンツ姿に胸を強調する様な、だぶだぶの白いワイシャツの前縛り、男心をくすぐるような容姿に、ゆうきは、驚いた。
「あっ、はいはい、これは、これで、動きやすいんですけどね、おじいちゃんには刺激強すぎたかしら、もう一回ね」
光のコートが、また、ひなの頭上に現れ、足元に通り過ぎていく。
『まぁ、こんどは…って、やっぱり派手じゃないか』
前、世界で流行っていた、ピンクハウスのまっ黒バージョン、俗に云う、ゴスロリ。
「動きやすさは、落ちるけど、頭脇の尖った耳は隠れるし、普通だよ、おじい…ゆうきも服装変えるんでしょ、どうせなら、合わせて頂けると良いのですけど」
『ゴスロリにどうやって、合わせるの…遣ってみるか』
裕紀の頭上にも光のコートが現れ、足元にゆっくり降りていく。
「まあ、上出来でしょ、では、ゆうき、街に参りましょう」
『しょうがないよな、あの格好に合わせるなら、執事服しかないからね、自然と言葉づかいも変わる、訳だ』
お嬢様と執事と言う感じの姿に変わった。
「強めに呼んだ方が良いかしら」
上から目線の様な感じに、ひなが、言う。
『別に普通で、良いのでは、ないでしょうか』
服に吊られて、ゆうきもおかしな言葉づかいである。
『では、ひな姫、何処に参りますかな』
「そのままより、馬車がいいな、馬車出して、ゆうき」
ひなの言葉が、終わる前に左手の心の書が、また、頁を捲りだす。
「わっ、お姫様の馬車だ、おじいちゃ・・・ゆうき、ありがとう」
小躍りしながら、わくわく感の止まらない、ひな、言い間違えるも、気を取り直して、ゆうきに礼を述べる。
『良いですよ、姫の心が、安らぐなら此の位の事は、気にもなりませぬ』
ひなは、怪訝な表情で、ゆうきの顔を見て話す。
「ゆうき、言葉遣い戻らないよ、それで良いの」
ゆうきは、ちょっと、考えるしぐさをした。
『とりあえずしばらくは、此の儘で、宜しいのでは無いでしょうか、街に入ってから、考えましょう、それと、ひな姫様、姫の言葉に注意して下さいませ、何処で、誰が、見ているやも知れませんから、田舎者であっても、無法者では無いのですから、それと、この世界では、魔法が、使える様ですよ、魔法使いに憧れていましたよね、彼方の世界では、何でしたっけ、藩冨流品冨流羽夢…』
「それ以上言っちゃだめぇ~」
ゆうきの口を両手で塞いで、それ以上呪文が言えない様にした。
「どんな作用があるのか、分らない状態で、言っちゃダメなのぉ~」
『どんな作用があると思う、ためしに、【血の流れより赤きモノ、漆黒の闇より暗きモノ、我と…】』
「それもだめぇ~、呪文、端折っても効くからぁ~」
ひなが、慌てて、青い顔して、それもそれ以上言葉に出来ないように、自分の手に在った、手袋をゆうきの口に入れた。
もがもが、と、一応唱えてみたようだ、左手と右手の間にわずかに光る、火の塊が、現れ、一瞬で、遠くの岩山に飛んでいった、、、ピカッと光って、辺りが、真っ白くなった。
《だれだ、攻撃呪文ぶっ放したのはぁ~》っと、大きな赤い肌の大男が、その岩山の陰から飛んできた。
大男は、口に手袋を入れて、もがもがとしか言わない、執事服と青ざめ腰が引けて、黒い物体と化した、何かの雛を見た。
《フム、こいつらじゃなかったのか、さては、逃げたな、我ら【レッド鉅鹿】の領地に、攻撃呪文を撃つ等と云う行為をする者等、滅多に居ないからな、逢って見たかったのだがな、わっはっはっはあ》
怒りなのか笑いなのか、すさまじい風の流れが、発生して、執事服のゆうきの口に入っていた、手袋が、外れた。
『・・・スレイブー、って、ひな様、観て頂けたでしょうか』
《お前かぁー》
ひなは、既に朽ち果てている【ただのしかばねである】
『ふうっ、これしきの事で、ゆうき様を見縊らないで欲しいな』
えっへんの態度で、胸を張る、気が付くと、頭の上から、赤い肌の大男が、ゆうきをのぞき込んでいる。
『村人一号発見』
ひなを抱き起して、形を整え、身だしなみも整え、背中から、活を入れる。
「はっ、わたくしは、何を見てしまったのでしょう、あら、こちらの方は、どちら様ですの」
呆けた様子ではあるが、何とか、赤い肌の大男を見上げて、にっこりほほ笑む。
《むっむっ、村人ぉ、だぁとぉ、何処の怒阿呆が、攻撃してきたのやらと思って、飛んできたら、すすけた娘と口に手袋つめた変人しか居なかったのだが、お前らかぁ、我ら【レッド鉅鹿】の里に攻撃呪文ブチ込んだ奴は、けが人は、出なかったが、やっと寝付いた、幼子が、目を覚まして、てんやわんやだ、如何してくれる》
『いや、それは、済まなかった、まさか人が居るとは、思わなかったのだ、あのような清みにくい所に住むとは、もう少し東の大地の方が、洞窟もあるし、山や川や湖もあって、すごし易そうで、あるのだがな、それに人も外敵に成るような獣も住んで居ないのだが、如何して、あのような場所に住んで居るのか、訳を聞かせて頂きたい、それによっては、支援させて頂きたいと思いますのでね』
「ゆうきは、何でも知っていますの、赤銅鉅鹿とやら、そちらの話も聞かせて下され」
まだ、少し寝ぼけている様だが、ちゃんと受け答えは出来る様だ。
『あそこには、滅多に出ない清水が湧くんだ、その場所を他の部族に取られない様に、守っていたんだ』
傍に座り込んで、胡坐を掻き、落ち着いて、話し始めた。
「ゆうき、汲んできて、その水飲んでみたいわ」
『ひな様、清水とは、言っておりますが、水其の物では御座いません、あれは、龍脈、ライフリバーです、飲んでしまっては、人を辞めてしまいます』
「死んじゃうの」
飲んでみたい、でも死んじゃうなら、飲まなくてもイイ、少し悲しげに思う。
『いいえ、人の形をした別の物に変わってしまうのです、たとえば、ドラゴン、龍種とか、幻獣ですかね、そういえば、ひな様の草々曾爺様は、幻獣の血を引いて居るとか、その耳もその影響ですね、わたくしの耳も同じで、ございます、そして、こちらの世界の住人が、彼方の世界の姫と子を成したのが、ひな様の初代様です』
ゆうきの発言、(ドラゴン、龍種の所)で、レッド鉅鹿が、一瞬、身震いした。
幻獣の子孫と言った、途端に、レッド鉅鹿が、青い顔に成って、平伏した。
《しっ、知らずとは、言え、幻獣様の眷属様にご無礼の件、どうかご容赦をお願いします》
がたがた、大きな赤い体だったものが、青ざめて、ドドメ色に成りながら震えながら、言った。
この世界では、幻獣の方が、龍種より頂点に近いらしい、ついでに、現状を鉅鹿におしえる。
『半径36里には、全く、敵勢力は、居ない、外的要因がないから、安心して、子を育てると良い、ついでに、騒がせた、お詫びとして、あの場所に堅牢な住居を複数用意しよう』
左手の心の書が、緑に光って球に成り、鉅鹿の里の方に飛んでいった。
『ひな、目が覚めたかい』「うっ、う~ん、覚めた様な気がするぅ~」
おっきな伸びをして、ゆっくりと首を回して、眼を開ける、と、そこにはドドメ色の鉅鹿が、居た。
「おっきいねぇ、おびえないで、ひなは、何もしないよ、約束しても良いよ」
おっきな頭をなでなでする。
《幻獣様の眷属様に撫でられた、これは、一生の宝だ、がんばって、子を育てます、誠実な子を約束します》
ゆっくり起きあがって、誉れに喜び、嬉しそうに約束する。
つたない文章で、申し訳ありません。
家族に伝えたい事、と、介護の現状の様なモノをお伝えできればと、指をキーに這わせて、打ち込み、お届けいたします。
介護士の資格は、持っておりませんが(二級ですが、有りました)、介助の仕事に付いて居ましたので、介護スタッフとして、おじいちゃん、おばあちゃんたちと日々暮しております時にふと、思いました、もしも、若い肉体を持つ事が出来たら、おじいちゃんおばあちゃんは、如何暮らしていくのだろうと、知識や経験は豊富です、それに加えて、若い肉体、やる気、精力が、豊富に成るとしたら、現状の打開に成るのではと思いました。
しかし、現状としては、老いて逝くのみ、家族の面会を待ちどうしく思っているのは、老人ばかりなのか、自分たちはだんだん老いて逝く、眼が見え辛くなり、耳も人の声が聞こえ辛くなる、行動も危ぶまれ、何時も考えなくても出来ていた行動、食事や排泄行為も介助者の助けが必要になる、腹立たしい様な、情けない様な、それで、つい介護スタッフに八つ当たりしてしまう。
しばらくして、介護スタッフからのねちっこい反撃に在ったり、有りもしない事を家族に報告されたりして、ますます家族との距離を離されたりする事が、多い。
彼らは、ギブアンドテイクの精神を忘れている、働くとは、周りの者たちの行動を楽にする、から来ている、働くによって、労働意識の向上と楽しさに芽生えなければ、働く事は、辛くなる、続かないから職を変える、孰れ(いずれ)は、介護される側に成って、自分たちの行動を別の角度から見る事に成る、自分達の仕出かした事が反映される、自分達は、楽しく仕事が、出来たのであろうかと考えさせられる。
誰にでも、老いは参るのです、病は、気から共言いますが、どうしようもなく・・・治らないモノも在るのです、自分で、行っていたはずの事が、まだ、老人と言われる年にも満たない、私が、なっていて、誰に文句も言えません、お医者様が、薬剤師さんが、悪いのでもありません。
その病気に成る、自分のセイなのでしょうね、何処まで、見えるか、聞こえるか、指の動く限り、打ちます、つじつまが、会わないのは、脳腫瘍のせいでしょうか、単なる呆け化なのでしょうか、まぁ、笑えれば、良しと云う事で、皆様元気で過ごしてくださいませ。